勇者パーティーにかわいい子がいたので、告白してみた。

水星

第1話 告白してみた (1)

第1話 告白してみた

 

「倒しちゃったなー」

 薄暗く、調度品など何もないだだっ広い部屋の中央で、俺は(つぶや)いた。

 俺は魔族の姿をしているが転生者である。

 元は()(がわ)(よう)()という人間だった。

 転生して、チートを持っていたことまでは良かった。

 だが、俺は人ではなく魔族に転生してしまった。

 (ひたい)にある立派な角と背中に生えた黒い翼が、俺が人でないことを物語っている。

 今、俺の目の前には、倒れた勇者パーティーがいる。

 (ちゆう)()な魔法で倒したイケメン勇者、(よう)(しや)なくぶん殴った魔法使い、のびた剣士、気を失わせた(そう)(りよ)

「ここまだ、魔王城の(ちゆう)(ばん)くらいなんだけどなー」

 ここは魔王城の(ちゆう)(ばん)に位置する部屋であり、まだまだこの先に幹部たちや魔王様がいる部屋がある。つまり、俺は中ボス的な立ち位置なのだ。

 どうするかなあ、と頭をボリボリかいて考える。

 勇者が魔王を倒さないと世界は平和にならない。

 まさか、魔王城の(ちゆう)(ばん)にいる魔族によって勇者が全滅したとなれば、世界は大混乱に(おちい)るだろう。

「とりあえず、回復させて近くの村にでも捨ててこよう」

 世界が平和にならないのは良くない。別に魔王様や幹部たちには逃げましたとか適当な理由をつければいい。善は急げと勇者パーティーの()(りよう)にかかる。

 まずは勇者だ。「くらえ、聖剣エクセカリバー」とか(ちゆう)()なこと叫んで光る剣を振ってきたので、同じく(ちゆう)()な魔法を使ってのしてやった。それはもうノリノリで。

 勇者の()(りよう)を終え、次は魔法使いの少女の番だ。戦う前から勇者に色目を使っていて、なんとなくビッチな気がしたので、(よう)(しや)なくボコボコにした。俺は男女平等派である。

 三番目は剣士だ。クールで()(もく)、かっこよさが勇者並に出ていた。なんかむしゃくしゃしたので、バトル開始早々、闇の上級魔法《バニッシュウェイブ》で消滅してもらった。

 ちなみに消滅といっても、周りから見えなくなるだけだ。

 勇者と魔法使いが混乱しているのを見て(こん)(わく)した隙に、魔法でぶちのめした。

「さて、最後は……っと」

 (そう)(りよ)の少女だ。

 剣士が消えても混乱せずに俺のことを遠めで見ていた。

 これは油断ならないと判断し、剣士を倒した後、背後に回りチョークスリーパーで気絶させた。

「傷がないなら、回復魔法はいらないかな……ん?」

 外傷がないか確認するため、(うつぶ)せの彼女を起こしたのだが、

「……やべえ、ストライクだわ」

 そこには、俺のストライクゾーンど真ん中の美少女がいた。

「あー、()(りよ)とかにしちゃおうかな? ……でも勝手にそんなことしたら怒られるかもしれんしなあ。それに前世のことを考えると、()(りよ)とか()(れい)はちょっとなぁ」

 俺の地位は中ボス程度なので、魔王様や幹部の方々に何か言われたら逆らえない。

 まあ、戦ったら俺が勝つだろうけどね。

「うう……さよならマイエンジェル」

 部下に命じ、勇者パーティーを近くの村に運ばせることにした。俺は部下に運ばれる彼女を名残(なごり)()しむように見ていた。

 

 三日後。

「勝負だ! えっと……」

 中ボスなんかの名前は覚えていないらしい。再戦に来るのなら敵の情報ぐらい集めとけよ。

「フハハハハ! (しよう)()りもなくまた来たな、勇者よ。魔王様の幹部の一人、ザエキル様率いる(あん)(こく)()()部隊五番隊隊長であるこのヨウキが、また貴様らを()(ごく)に送ってやろう」

 俺は(ちゆう)()全開で、自分の低い身分を紹介してやった。

「あっ、ああ……そんな名前だったっけ。覚悟しろ、ヨウキ!」

 勇者パーティーが勝負を挑んできた。

 俺は戦いの最中、(そう)(りよ)の彼女を何度もチラ見した。というか、最終的にはガン見して戦っていた。

「真面目に勝負しろ、ヨウキ!」

 勇者は俺がよそ見して適当に戦っていると思ったようだ。

「あー、ごめんごめん。本気だすわ」

 流石(さすが)に真剣に戦いを挑んで来る相手に失礼か。

 俺はよそ見をしていた(しや)(ざい)の意味も込め、闇の最上級魔法《エンドレスダーク》を放つ。

 闇の波動が、部屋いっぱいに広がっていく。

「……って、しまった」

 慌てて(そう)(りよ)の彼女の下に向かう。とっさに魔法で(しよう)(へき)のようなものを張ったのだろうか。外傷は少なく、気を失っているだけだった。

「よかった」

 安心した俺はすぐに回復魔法をかける。

 勇者パーティーにも回復魔法を(ほどこ)し、部下にまた近くの村に捨てて来るよう命じた。

 

 それから一ヶ月は、勇者パーティーが来ては俺が撃退するの繰り返しだった。

 挙げ句のはてには魔王様や幹部たちが勇者パーティーは弱いだの何だのと言い出す始末。

 勇者パーティーが弱いのではない。自分で言うのもあれだが、俺が()(かく)(がい)すぎるのだ。

 俺がいなくなれば、勇者パーティーは魔王様や幹部たちを倒せるだろう。それだけの実力をあのパーティーは持っている。俺のせいで世界は平和にならないんだなーと思う今日この頃。

 俺は自分の部屋で寝そべって考えた。そろそろ勇者パーティーが来たら、ここを通してあげようかなと。それは元人間としての考えと、この世界のことを考えての決断だった。

「しっかし彼女かわいいんだよなあ。仲間に(けつ)(こう)気配りもしているみたいだし。性格もよさ気だなあ。……次で勝負してみるか」

 俺はある決意をした。

 

「ユウガ、今日こそこんな()えない魔族を倒して、先に進みましょう」

 ユウガとは勇者くんの名前か。

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