異世界チート開拓記

ファースト

3 魔力・超回復原理 (1)

3 魔力・超回復原理

 

 俺には魔法の才能があることを発見した。

 魔法を使い続けると、気絶するように眠ってしまうことも発見した。

 さらに魔法の使いすぎで気絶する瞬間は、かなり気持ちいいことにも気付いた。

 スーッと気が遠くなってきて、かなり気持ちいいのだ。(くせ)になりそうな気持ちよさだ。

 前世の記憶では、過労から気絶し、目を覚ましたら気分がかなり悪くなっていたのに、この身体ではそんなこともなかった。目覚めたときも、グッスリ眠ったあとのように気分(そう)(かい)だった。

 体質の違いだろうか?

 それとも、魔法の使いすぎ――おそらくMP的な魔力()(かつ)――による気絶と過労などの気絶は、性質が違うものなのだろうか?

 なんにせよ、気持ち良いほうがありがたい。

 赤ん坊の身では他にすることもなかったし、俺は、ぬいぐるみを使った《物質移動(ムーブ)》の練習を毎日行った。

 ただ、気絶するまで練習するのは、2、3日に1回にしておいた。

 ひょっとしたら魔法を使いすぎての気絶が、なにか身体、あるいは精神に悪影響があるかもしれないからだ。毎日は流石(さすが)にまずいかもしれない。それに気持ちいいからといって、本当に(くせ)になるのも考えモノだ。

 とはいえ、夜、両親の愛の営みが始まると、俺は《物質移動(ムーブ)》の連続使用により気絶するように眠っていた。

 母親の(あえ)ぎ声など、聞いていられないからだ。2回戦、3回戦と父親に恥ずかしいおねだりをする母親の声も聞きたくない。

 普段は(せい)()なのにベッドでは乱れまくる母親の声など、聞きたくもなければ、その姿を見たくもなかった。

 

 ◆ ◆ ◆

 

 練習したのは《物質移動(ムーブ)》だけではない。

物質転送(トランスミツト)》という魔法も練習した。実践形式で。

 ――赤子ゆえ、お()らしするのは仕方ない。

 しかし、お()らし、特に大きいほうを()らしたのに周りの人間になかなか気付いてもらえないと、これはかなりキツイ。肉体的にも精神的にも。

 お尻は気持ち悪いし、ウンコを()らしたままなのは、精神的にも…………くる。

 泣くことで、母親か()()兼用のメイドが大抵は気付いてくれるけど。

 しかし、たまに長時間、気付いてもらえないときもあるのだ。

 そこで俺は《物質転送(トランスミツト)》を実践した。

 オムツに溜まりそうになった自分の(はい)(せつ)(ぶつ)を、魔法でおまるにワープさせたのだ。

物質移動(ムーブ)》の練習を繰り返したことで、魔法自体に慣れてきていた。それに、俺は魔力的な力が多分、少しは上がっていると思う。そのおかげであろう。《物質転送(トランスミツト)》は最初っからうまくいった。

 泣いても気付いてもらえそうにないときは、《物質転送(トランスミツト)》でウンコワープである。

 限定的とはいえ魔法を使えるようになったことで、俺の赤ちゃんライフは、ずっと快適になった。

 

 ◆ ◆ ◆

 

 ――約2年後。

 数日前にオムツがとれるようになった俺の額に、母親のカーラが自分の額を当てていた。どうやら、身体に流れる魔力(マナ)の総量――総魔力(総魔力量)――を計っているらしい。

 1年ほど前にも同様のことをされた。

 そのときは、

「今の総魔力量は――15(マナ)、ね。流石(さすが)は私の子だけあって、赤子にしてはかなりの魔力(マナ)があるわ。ウフフ、これはエニードの将来が楽しみね」

 などと、カーラは微笑(ほほえ)んでいた。

 内心、俺も嬉しかった。気付かれないよう、(ひそ)かに、ちっちゃい(こぶし)をグッと握った。

 さて、2歳になった俺の総魔力はいかほどであろう?

 去年より、少しでも上がっていると嬉しいな。

「っ! し……信じられないわ……」

 ん?

 くっつけていた額を離したカーラが、口に手を当て(きよう)(がく)したように目を見開いていた。

 な、なんだ?

「総魔力32。2歳児で、これほどの総魔力量があるなんて…………数百人に一人どころか、数千人に一人じゃない」

 え?

「天才児と言えるわ」

 て、天才!? 俺が……天才……児?

「いえ、4歳以下で3050(マナ)の総魔力がある、いわゆる〝天才児〟も私の祖国ルーンレシア王国なら毎年、10人前後は生まれている。我が子が、少なくとも総魔力において魔法の〝天才児〟なのは喜ばしいわ。けれど、生まれて2~3歳で30ちょっとの総魔力を持つこと自体は、そこまで驚異的じゃない。私だって、2歳児の時点でこのぐらいの魔力(マナ)を持っていたもの」

 カーラはその美しい(あご)に指を当て、考え込むようにブツブツと(つぶや)き続ける。

「本当に驚くべきなのは、総魔力の成長率。たった1年で、2倍以上になっているなんて。まだ、魔法の訓練自体、なにも始めてないのに……そもそも、総魔力の伸びが一番よくなる5歳のときに魔法の訓練を本格的に始めても、1年で倍だなんて、そこまでの成長率はまずありえない…………」

 いや、俺は独自に魔法の訓練をしているけどね。コッソリと。

 でも、魔法の訓練を始めても総魔力が1年で2倍になることは、通常、ありえないのか。だったら俺はなぜ?

 まさか…………本当に俺は天才だった?

 それとも訓練さえできるなら〝赤子〟は、魔力量の伸びが非常に良い?

 多分、後者だろう。

 両親の会話によると、総魔力は成人したらほとんど伸びないようだ。そして10代より10歳未満の時期が、伸びは良いらしい。

 母親の祖国ルーンレシア王国では、教育熱心な魔導貴族の場合、5歳前後から本格的な魔法教育を幼児に始める、らしいのだ。

 若ければ若いほど伸びが良いなら、それこそ赤子のときは成長率抜群だろう。もっとも俺みたいな転生者((ひよう)()者)かつ偶然でも魔法の練習方法を知っていなければ、赤子のうちから魔法の訓練など、とてもできないだろうけど。

 …………いや、本当にそれだけなのだろうか?

 俺の総魔力が1年で倍になったのは、なにか他にも秘密があるのでは?

 …………。

 間違っているかもしれないが、やっぱり……アレ……かも?

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