聖者無双~サラリーマン、異世界で生き残るために歩む道~
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スキルは『攻撃』『防御』『魔法』『補助』『生産』『生活』『研究』、『テイマー』があるのか。
目の前のステータス画面を触りながら設定の穴を探すが、検索システムはないし隠し画面もない。
地道に探すしかないらしい。
まずは運だな。これは別に博打に限ったことではない。
仕事でも担当の顧客を掴むのは相性だけでなく、運も必要になる。
そもそも運が悪ければ、俺みたいに撃たれて、人生が急に終わってしまうこともあるしな。
そう思いながら必要そうなスキルのSPを計算していく。
『補助』から『能力値』を選び、更に『運』を選択すると『幸運』『強運』『激運』『豪運』『悪運』『覇運』『天運』といった項目が出てきた。
『覇運』は習得するのに百ポイント必要で『天運』に関しては、五百ポイントと問題外だった。
ここはとりあえず『強運』十ポイントを候補に入れておく。
次に必要なのは魔法だな。
異世界に行った時に魔法が使えなければ、労働基準法もない場所で肉体労働が待っている。
そんなことをして成功出来るのは、物語の主人公や武術の天才だけだ。
『魔法』カテゴリーの『魔法属性』を選択すると、表示されたのは光、聖、火、水、風、土、雷、闇、時空間の全九属性だった。
取得に必要なSPは四属性が十ポイント、聖二十ポイント、雷三十ポイント、光と闇が五十ポイント、時空間は百ポイントだった。
更に魔法を使うのに必要そうな要素があり、『魔法』から『詠唱』を選択すると、『詠唱短縮』『詠唱破棄』『無詠唱』『魔法陣詠唱』が出てきた。
しかしSPが足りない。これは非常に不味い。
俺が取得する魔法属性は『回復魔法』と『補助魔法』が使用可能な聖属性にすることを決めた。
毎回コツコツ修錬を積んでいけば、やがて魔法能力も向上して人の役に立てるだろう。そうなれば安全な職に就くことも可能だと考えたからだ。
その為には二十ポイントが取得するのに必要となる。
そうなると『詠唱破棄』に二十ポイント、『無詠唱』に三十ポイント、『魔法陣詠唱』三十ポイントと、それぞれにSPを使うと、それだけで百ポイントになってしまう。
他のスキルはというと、『生活』を選択すると『料理』などが並んでいるし、『生産』を選択すると『鍛冶』などありふれたスキルのみだった。
攻撃スキルに関しても特別なスキルはなかった。
しかしこの選択には落とし穴がある。例えばスキルを選んでも武器がない可能性だ。
どこからスタートするかわからないが、剣を持っていなければ『剣術』スキルは意味がない。
そこまで考えてから俺は無難な『体術』スキルを五ポイントで取得することにした。
……この白い空間で、戦闘スキルだけを取って自分の能力を上げる。
そんな奴は長くは生き残れなさそうだな。
そんなことを考えながら文章を読み、抜け道や強奪系、コピー系のスキルを探したがなかったので、迷いながらも何度も脳内シミュレーションを重ねてからスキルを取得した。
取得したのは『熟練度鑑定』二十ポイント、『体術』五ポイント、『豪運』五十ポイント、『聖魔法属性』二十ポイント、『魔力制御』五ポイントだ。
『熟練度鑑定』はスキルを上げるのに効果的な方法を探る為、『体術』はどこに落とされても対処出来るように、『豪運』を選択したのは今の俺に足りていないものだと判断したから『強運』はやめてこちらにした。
『聖魔法属性』と『魔力制御』は説明書きを読んで決めた。
全て決めて残り時間はあと十八分と表示されていた。
不備がないか見返していると、ジョブの選択肢に目がいく。
触ってみるとある画面が表示された。
〔ジョブを設定してください〕
そう書かれた下に様々なジョブが載っていた。
「これって自分で設定しないといけなかったんだな。見直さないといけないとか、完全に罠じゃないか」
俺はここでまた深呼吸を行い、ジョブ一覧を見ていくことにした。
剣士、魔法使い、治癒士、盗賊、商人……色々あった中で、治癒士を選択した。
剣士や魔法使いを選んだ方が良かったかもしれない。
ただ回復魔法は魔法使いでは使えないかもしれないし、魔法そのものを習得することが出来ない可能性もあるので、念には念を入れたのだ。
残り九分四十二秒。完了ボタンを押す前に各スキルを見直し、努力で取れそうなスキルを頭に入れながら見ていく。
残り三分強で完了を選択すると、一瞬で真っ白な世界が変わる。
そしてこの世界の貨幣である銀貨を、三枚握り締めた状態で俺は草原に立っていた。
「……まさかの時は金なりですか?」
俺は空を見上げて呟いた。
見渡す限り本当にそこは何もなく、遠くまで見通すことの出来るそんな草原だった。
残り時間と手に入れたスキルの相関関係に思いを巡らせながら、辺りを眺める。
すると結構な距離はありそうだが、遠くに街の外壁のようなものが見えた。
そして昂ぶった精神を落ち着ける為、ゆっくりと深呼吸した。
この距離から見てあの大きさであれば、かなり大きな街かもしれない。
俺は街っぽいものがしっかり見えたことに安堵しつつ、周囲を警戒しながら街へ向けて進むことにした。
*
《これで十の魂を送った 約束は守ったぞ》
《確かに これで少しは世界が変われば面白いのですがねぇ》
《凡庸な魂しか送っておらん 余程適応能力が高い者でなければ 暮らすこともままならず 困難な状況に陥るだろう》
《まぁ私も貴方も干渉は出来ませんので もらった魂を眺めるだけ眺めて 彼等が死んだらまた賭けか 交換を致しましょう》
《……気が向けばな ではな》
一つの光が消えた。
《あ~今回は面白くならないかなぁ》
そう呟くともう一つの光も消えた。
運命の神が、異界の主神に、男の魂を含んだ十の魂を渡した。
運命の神は、異界の主神と賭けをして負け、凡庸で危険な思想がない十の魂を譲渡した。
最初の男の魂にのみ、運命神は加護を与えた。
ルシエルとなった男は死ぬ運命だったが、死にたくないという強固な意志の強さが、死に抵抗して現世に一分も長くしがみついた。
運がいいのか悪いのか、そのことにより十の魂に選ばれたのだ。
だから運命の神は男に加護を渡した。その行く末を見守れるようにしてから、異界の神に魂を渡したのだ。
これがどういう結果をもたらすかは、運命神も異界の神もわからない。
こうして地球からルシエルとして生まれ変わる魂を含めた十の魂が、ガルダルディアに転生するのであった。
名 前:ルシエル
ジョブ:治癒士
年 齢:15
レベル:1
H P:200 M P:50
STR:20 VIT:20 DEX:20 AGI:20
INT:20 MGI:20 RMG:20 S P:0
魔法属性:聖
【スキル】
『熟練度鑑定』Ⅰ 『豪運』Ⅰ 『体術』Ⅰ 『魔力制御』Ⅰ
【称号】
運命を変えたもの(全ステータス+10)
運命神の加護(SP取得量増加)

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