聖者無双~サラリーマン、異世界で生き残るために歩む道~

ブロッコリーライオン

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 自分に言い聞かせる度に心が重くなっていく。

 しかし、いつまでも落ち込んでいられないと、状況の確認を始める。

 真っ先に気がついたことは、スーツを着ていたはずなのに、見慣れない服を着ていたことだ。

 いつの時代? そう首を傾げたくなるような、ごわっとしたそんな造りの服を着ている。

 それと撃たれた傷は完全に消えていた。様々なことが頭に浮かんでは、必死にそれを打ち消し他の可能性を探る。

 俺は混乱しながらも思考を止めずに考え続ける。

 ここは一体どこなのか? どんな場所なのか? そしてこの服は一体誰が着せたのか? その答えは脳に直接語り掛けてくる声が直ぐに教えてくれた。


《不運な魂よ 転生させてやろう》


「元の世界に戻してくれませんか?」

 俺は頭に響いた声に反応して、ノータイムで返答した。


《既に死んだ肉体がある世界には戻せない》


「……それでは、どんな世界に転生するのでしょうか?」

 願わくは、安全な世界でありますよう。

 俺は祈りを捧げる。


《ガルダルディアという名の惑星 地球と同じ水と大地の惑星だ》


「それでは今の世界と一緒ですか?」

 俺は恐る恐る尋ねた。

 もし地球と同じ文明なら、日本並みの安全な場所……日本より安全であることを更に祈る。

 しかし、現実は無常だ。

 頭に響く声は、定番の世界を選択していた。


《魔法があり 魔物がいる そんな世界だ》


 魔法があって魔物がいるということは、完全にファンタジーの世界ということだろう。

 そこまで考えて、俺の思いを伝えることにした。

「確かに日本では馴染みのある世界でしょう。小説やアニメ、ゲームがあるので、昔からそういう世界は知っていました。若い頃は多少なりとも、行ってみたいと思ったこともあります。しかしの私はいい歳をした大人です。そんな私は冒険を楽しめないと思うのです」


《不運な魂よ お前の話はどうでも良い 同じ境遇の魂があと九つあるのだ 駄々を捏ねるならこのまま転生させるぞ それが嫌なら説明を聞け》


 その脅しの言葉は抑揚がなく、とても無機質な声だった。

 それが頭に響いた時点で、俺は頭を下げていた。

「すみませんでした。お願いします」

 神様? が脅してくるなんて想定外の事態に、俺はどうしたら異世界で生き延びれるか、それだけを考えることにシフトチェンジした。


《不運な魂よ 転生するのは 汝が思い描いている世界だ そこへ転生させる こちらで何も干渉はしない 生きたければ ステータス オープンと念じ ステータスを開け》


 俺は謎の声に従い迷わずに念じる。

 『ステータス オープン』


 名 前:設定されていません。

 ジョブ:設定されていません。

 年 齢:15

 レベル:1

 HP(生命値):200 MP(魔力値):50

 STR(筋力):20 VIT(耐久力):20 DEX(器用さ):20 AGI(素早さ):20

 INT(知力、理解力):20 MGI(魔力):20 RMG(耐魔):20

 SP(スキル、ステータスポイント):100

 【スキル】

 なし

 【称号】

 なし


「まるでゲームじゃないか。ははっ」

 俺は力なく笑うしかなかった。

 何もなかった俺の目の前に、突如ホログラムウインドウが出現したのだ。

 そこにはまるでゲームやアニメの世界に飛び込んだみたいな感覚で、自分のステータスらしきものが表示されているのだ。

 俺は嬉しくなるよりも怖くて、震えてくる。

 リスポーンのないファンタジー世界で、生きる残るのは相当難しいだろう。

「完全なファンタジーだ……あれ? 年齢が若返っている? これはサービスなのか?」

 とにかく、今は情報を得ることが最優先だ。

「この気持ちの切り替えだけは、営業していて身に付いたものだな」

 俺はそう呟いてから、この状況から前に進む為に腹を括った。


《設定のリミットは一時間だ 種族 年齢は決めさせてもらった 残りは自分で決めるがいい 名前のみで家名はない ガルダルディアの基礎知識を頭に送ろう これから一時間後 お前はガルダルディアに自動転送させる 不運な魂よ 次の人生が幸福であるように願っている》


 ピロン。そんな音が頭の中で鳴った気がした後に、先程とは違う機械的なアナウンスが頭に響く。


 【運命神の加護(SP取得量増加)を獲得しました】


「あ、ありがとう御座いぅぅうぎゃあああああ」

 機械音が頭に響き、俺がお礼を言おうとした瞬間、脳の許容範囲を超える様々な知識が一気に頭へと植えつけられる感覚がし、激痛に襲われた。

 その痛みは尋常ではなく、鈍器で頭を殴られたような鈍い痛みだった。

 それはおよそ一分弱続いた。体感的にはもっと長い時間を転げ回った気がしたが、ステータス内にあるタイムリミットを示した時計には、残り時間が五十九分七秒と提示されていた。

「はぁ、はぁ、はぁ。今の痛みは尋常じゃなかったぞ」

 鈍い痛みの後は、無理矢理尖った何かで脳を穿り返されるような苦痛を味わった。

「……今の痛みで得たのがこの基礎知識か。頭はまだ痛むけど、時間がないからどんどん進めるか」

 俺が得た知識はガルダルディアの現存する国、種族、大陸共通の言語と識字能力、貨幣価値だった。

 俺は一度深呼吸をして精神を落ち着かせてからウインドウを見ると、ゲームのようにキャラクタークリエイトが出来るようになっていた。

「絶対にゲームやアニメからインスパイアされてるだろ」

 俺はそう呟きながらも、キャラクタークリエイトを続行する。

 どうやらゲームのように姿かたちを変えられるようだ。

 初期アバターは、俺の顔が欧州人になったように、彫りが深く茶色の髪に緑の目をしていた。

「さてと、まず名前は……あれ名前が思い出せない? 何故だ?」

 疑問を抱いたところで答えが返ってくるハズもなく、仕方がないので昔ゲームで使用していたルシエルというキャラ名を使うことにした。異世界でも違和感がなさそうだからだ。

 身長は十センチ伸ばして百八十センチにして、髪の色は茶から銀にして、瞳は……緑から薄い紫にする。

 もらった知識では銀髪も紫の瞳も珍しくないようなので、一番に似合う色を選択した。

 少しだけ厨二臭いが、これでいいだろう。

 残り時間は五十三分か。

 知識として物価や名産などがわかれば良かったが、話すことや読み書きも出来ることだけでも感謝しておこう。

 成人が十五歳なら直ぐに仕事を見つけられる。

 最初は苦労するだろうが、いずれ安全な暮らしを手に入れるぞ。

 それよりもこれが本当は全部夢ならいいのに……。

「いかん。俺が転送される場所は……ランダムか。平原、森、迷宮で比較的町に近い場所。但し運に左右されるんだな。スキルにはレベルがあるものとないものがあって、あるものは最高がⅩか。スキル取得はSPスキルポイントを使っての取得か努力で取得可能……か」

 俺は座って、生き残る為に最善のスキルを思考し始める。

 スキルと一言でいってもその数は膨大で、予測がつかないものは運の要素が強い。

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