異世界に来たみたいだけど如何すれば良いのだろう
一章 知らない土地で生活をしなくちゃいけないみたいだけど如何すれば良いのだろう (2)
そんな大した願いを希望したわけではなかったのに、何か大層な能力が身に付いてしまっている。
と言うか、そもそもスキルとは何なのだろうか。
「スキルとは何なのですか? また先程譲渡された『隠身』とは何なのでしょうか?」
≪解。スキルとは二種類あります。一つ目が魂に紐づいた魂のあり方としての能力です。インターフェースより付与された三つのスキルがこれに該当します。二つ目が肉体に紐づいた技術としての能力です。これは後天的に鍛える事により発現する能力です。『隠身』とは身を隠す事を鍛える事により、他者の視覚的認識を阻害するスキルとなります≫
思ったよりもかなり大仰な能力が付与されている事に、頭を抱えそうになる。
この状況をなんとかして生き残らないといけない事を考えるとありがたいのだが、日本に帰った後大変そうだなと漠然と不安になる。
というか、『隠身』とか便利そうだけど、使い方がわからないと宝の持ち腐れになるなと。
「『識者』さん、『隠身』の使い方とは如何すれば良いのでしょうか?」
≪解。一般的にスキルは1・00以上にならなければ、発露するほどの効果を発揮しません。彰浩が現在有するのは0・03のため、極僅かにしか効果は顕現しません≫
おぉぅ、先は長いな。一旦は、無視しても良いと考えておこう。確かにアオダイショウもどきも姿が見えないという感じじゃなかったし、物音で完全にばれていた。大自然初心者の私にばれるくらいなんだから、ほとんど効果が発揮される物でもないのだろう。
さてと取り急ぎの疑問は片付いたので、本題のサバイバルを頑張って行こうか……。頑張ろう……。
というか、スキルとか知らないし、ここ日本じゃないよね!? 何冊かそういう小説は読んでいたけど、これ、異世界か何かに飛ばされているよね、インターフェースさん。彼方って飛ばし過ぎ。せめて地球内にして欲しかった。
再度、土に両手と膝を付き、何となく切ない物を噛み締めながら、ちょっとだけ出そうな涙を堪える。
さて、サバイバルの時間だよ。
『識者』さんとの会話も落ち着いたので、当初の目的に向かいたい。水、食料、集落の優先順位だ。
気温的には日本に比べてかなり暖かい。まだ、秋程度の温度だろうか。んー。気温もわかるデジタル式の腕時計にしておけば良かったかな……。でもあまりデジタル式の時計は好きじゃない。まぁ、些末な事はどうでも良いとして。
食料という事で、この、アオダイショウもどき食べれないのかな。
よく見るとアオダイショウもどき、側稜も無いし、身も筋肉質ではなく軟らかめ。
アオダイショウは臭いとアクのせいで食べれないはずだけど、こいつは蛇というよりウナギっぽい。
「『識者』さん、これは食べられますか?」
異世界の生き物なので、良くわからないものは知ってそうな人に聞くのが一番だろう。
≪解。スキル『認識』をお使い下さい≫
そっけないお返事。『認識』をどう使えば良いかもわからないのに、この仕打ちとは。
「えと、『認識』を行使します」
使い方がわからないので、まずは試しとアオダイショウもどきを見ながら、呟いてみる。
すると、体内構造、各器官の意味情報、生息形態等が聞こえてくる。
ちなみに、名前はアオダイショウもどきと呼んでいたからか、アオダイショウもどきになっていた。
基本的にアオダイショウと違って木には登らず、地面で生息しているようだ。
食べ物は木の実や昆虫が主だ。
毒に関しては外敵から身を守るための弱い神経毒で、人間サイズであれば短時間の麻痺程度の効果でしかない。
何より、毒腺類の箇所が首元に集中しており、首を落とせばそのまま無害に食べられそうだ。
試しに、『認識』をアオダイショウもどきに向けて使いたいと頭の中で思うと、先程と同じ説明が流れてくる。あぁ、わざわざ口に出さなくても良かったのか。
「肉食じゃなければ臭くないのかな?」
もう昼時も回っているため、お昼ご飯として試してみる事にした。藤原秀郷も生で蛇を食べていたと聞いた事がある。千年以上前の話だけどね……。はぁぁ、蛇でも貴重なタンパク源だ。
駄目なら、カロリーを補充してくれるブロックがあるからそっちに頼る事にする。流石に朝ご飯を抜いた状態で、サバイバルは辛すぎる。
先程木登りした際に確認した、川縁辺りを臨時のキャンプ地にする事にした。
簡易のかまどを作るにせよ、川石の方が使い易い。道々で薪になりそうな小枝、枝を拾いながら川まで二十分ほど移動する。
「おぉ!? 結構水量あるな」
樹上で見る限り、水遊びが出来る程度の川かと思っていたが、水量があるのと深さのせいで雰囲気が全然違っていた。
大物がいそうだけど、木の銛程度では捕らえられそうもない。
魚は一旦諦め、川石を集め竈の準備を進める。
石を組み上げ、上部を開ける。
アオダイショウもどきは腹から捌き、鱗と皮ごと剥がす。すると思いの外真っ白な身が出てきた。
血と内臓を洗い、小骨の部分をカッターでこそぎ、ウナギの蒲焼大の大きさに切りそろえ、細い木の棒で串打ちしていく。
「取り敢えずタバコ止めても、ライター入れておいて本当に良かった」
喫煙時代からの癖であらゆる収納場所にライターを入れていたが、それが功を奏した形となる。もう拝むような思いで、竈の中の小枝に火を点す。
「火が荒い間にざっと表面を焼いて、後は均等に火を回す感じで良かったかな」
昔、爺ちゃんとウナギを取った時にそんな感じで焼いてたなとしんみりしながら、焼き進めていく。
この世界では秋口の所為なのか脂が乗っており、てとてとと火に落ちる度にじゅわっと音を上げながら香ばしい匂いを漂わせた。
「そろそろかな?」
こんがりとキツネ色に焼けた身に、一部脂の焦げた部分が堪らなく美味しそうだ。
毒性の有無の確認のために、『認識』を使ったが、毒腺類の部分が情報から欠落している。他に毒が含まれている感じの事も言わない。心置きなく食べれそうだ。
「タレも塩も無いのが残念だけど、いただきます」
噛り付いた瞬間さくっとした表面の下から、脂がじゅわっと流れ出しその下からふんわりとした白身特有の肉が口の中で踊る。
「これ、味はないけど、脂の甘さと身のほろほろしたふんわり感だけで、十分だわ」
懸念していた臭いもほぼなく、ウナギとはまた違う美味さを堪能出来た。何というか、日本のウナギと言うより、海外のウナギに近いのかもしれない。
百五十センチの蛇なので、可食部位だけでも相当になる。
「流石にお腹いっぱいです」
元々食事は、そんなに量を食べる方ではない。ある程度食べると、もう入らないのだ。半分程度は夕ご飯かおやつに残しておこう。
「という訳で、ごちそうさまでした。美味しかったです」
この世界での初めての食事が蛇というゲテモノだったが、幸せだったので良しとしよう。でも、塩味は欲しかった。切に願う。
さて、お腹もいっぱいになったところで次は水の確保をしなければならない。
そこまで暑くないため、水分の消費量は微々たるものだが、五百ミリの水筒に入った麦茶だけでは心許ない。
見渡す限りの平地だから、段丘も見当たらない。一旦川上に向かって移動して、水源に近付くしか方法がない。
湧水が無ければ最悪川の水を濾過して飲むが、濾過装置を作るにも機材が無くて難しい。
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