ガチャを回して仲間を増やす 最強の美少女軍団を作り上げろ

ちんくるり

1章 異世界への招待状 (2)

「前が見えんぞ……あれ、何か風が」

 部屋の中のはずなのになぜか風を感じる。窓開けてたっけ? 視界が回復したら閉めるか……あれ? 何か足元の感触が変だぞ……。

 俺の部屋は床がフローリングのはず。しかし、今の足元の感触はとてもざらざらしている。まるで裸足で外を歩いているかのようだ。

 さっきまでこんなにざらざらしてなかったはずなのだが……食べ物を食った時に食べカスこぼしてたかな?

「寝る前だっていうのに……片付けないとな。あー、やっと視界が……ん?」

 溢れ出ていた涙も止まり、閉じていたまぶたを開いた。

 すると視界に入ったのは、まぶしい日の光に照らされた草原が広がる大地。

 もう一度目をこすり周囲を確認してみても、やはり自分の部屋じゃなくて草原だ。

 あれ……俺、部屋の中にいたはずだよな? なのに……何でサバンナみたいな場所が目の前に広がっているんだ?

 辺りをグルっと見回すと、どの方向にも草原が地平線まで続いている。何なんだよここ……。

 俺はさっきまで部屋にいてGCをやっていたはずだ。それなのに今は、広大な草原のど真ん中で立ち尽くしている。

 まるで意味がわからんぞ。まさかあの後ルーナちゃん引けなかったショックで気絶して、今は夢の中なのか?

 ……そうだ、そうに違いない。ここまでリアルな夢は初めてだ。そもそもガチャる時午前〇時を過ぎてたのに、今はお日様が輝く朝になっている。これは夢に違いない。

 夢では痛みを感じないとよく聞くし、ここはありきたりだが試してみよう。

 そういう訳で、さっそく頬をつねってみたのだが……。

「……痛い。つまりこれって……いや、まだだ、まだ決まった訳じゃ……」

 痛みだけで夢かどうか判断するのは駄目だな。正直今にも走り出して叫びたい気分だけど、落ち着くんだ。

 知らない場所にいるせいか、妙に心臓がドクンドクンと鼓動して落ち着かない。もしこれが現実だったら非常にまずい事態だ。

 まず今の俺の格好はパジャマに裸足。この見渡せる程広い大地を歩くのは無謀過ぎる。素足で外を歩くなんて数年振りな気がするぞ。

 それに、もし野生動物がいた場合、この場所で襲われたら完全に詰む。野生の獣に追いかけられて逃げ切れるほど、自分の体力に自信がない。

 まずは避難できる場所を探すべきか。広がる草原を確認すると、少し離れたところに木が生えているのが見えた。とりあえずはそこを目指し、木の上に登って安全が確保できるかだけ確かめよう。高所からなら、人がいそうな場所もわかるかもしれない。

 ……蛇やヒョウがいませんように!



 しばらく歩いてだいぶ木のそばまで近づいてきた。裸足なので足元を確認しながらだったから、結構遅くなってしまったな。

 移動を開始したのが日が昇って間もなかったのか、まだ日が沈むまでは時間がありそうだ。この草原で夜を明かそうとしたら、間違いなくあの世行き確定だろうな。木の上でやり過ごせば何とかなるか?

 向かっている木の高さは五メートルより高い程度だ。うーむ、裸足でも頑張れば登れそうだな。

「グキャァ? ──! ──!」

「ん?」

 思考に没頭しながら歩いていたら、突然後ろから何かの声が聞こえる。振り返ると、そこには人間の子供ぐらいの大きさをした、二足歩行をする紫色の生物がいた。

 片手には木製らしき棍棒を持ち、興奮したかのようにこちらを指差している。

「おっ、おっ……うおおぉぉ!?

「──!? ──!」

 こいつが何なのか考える前に、俺は何かヤバイ雰囲気を感じ取り、叫びながら全力で木に向かって走り出した。

「ハァ……ハァ……、くっそ、何だあれ……」

 駆け出してすぐに木の根元へと辿り着いた俺は、急いで木の上へとよじ登った。これでも一応肉体労働の仕事をやり、まだ二十代前半だ。これぐらいなら登れるさ……結構ギリギリだったけど。

 四メートル程登った後、太い枝に乗り、幹に身を寄せて下を見てみる。登ってきてたら蹴り落とさなきゃ……。

「──! ──!」

 紫色の生物は俺を見上げながら叫んでいる。間違いなく、あいつは俺を狙っていたようだ。すぐに勘付いた自分を褒めてやりたい。

 一応安全を確保できたみたいだし、落ち着いてあの生物を観察してみようか。

 長い耳にデカイ鼻。背丈は俺の股下ぐらい。顔は醜いというか……化け物って感じで怖い。

 あれって……ゲームとかによく出てくるゴブリンって奴か? 木登りをするタイプじゃなくて助かった……叫ぶだけで登る素振りを見せないから、たぶん平気だ。というか登ってこないでください、お願いします!

「──! ──!」

 しばらくゴブリンが登ってこないか見張っていると、突然大声を上げ、棍棒で木を殴りどこかへ走り去っていった。

 何とか危機は乗り切ったってことか?

「はぁ……助かった。何なんだよここ……あんな生物がいるなんて、まるで別世界……あれ?」

 助かったことに安堵し、漏れた一言で気が付いた。

 別世界……つまり異世界。

 ここに来る前にGCで使ったアイテムは、異世界への招待状。

 ということは……俺がこんなになっているのはあのアイテムが原因?

 ……はは、そんな馬鹿な。ゲームでアイテム使ったら異世界でした、なんてことあってたまるか。

 思わずスマホはどこだと体中を手で探ると、パジャマのポケットにスマホが入っていた。電源は最初から入っていたから、ホームボタンを押してみる。

 表示されたのは、いつものホーム画面じゃなくて、なぜかGCのトップ画面。そうか、ここに来る前やってたからだよな? とホームボタンを二度押してみたが画面は変わらない。

「あれ、おかしいな。壊れたか?」

 カチカチカチカチと何度も押すが、スマホがGC以外を表示することはなかった。くっそ、と思いながらも、今度はGC内部を見ようとタップをしてみたのだが……。

「はぁ!? 1……レベル1だと!」

 さっきまで200レベルは超えていたGCのプレイヤーレベルが1と表示されていた。名前も漆黒のシュヴァインから、大倉平八に変わっている。まさか……とユニットとアイテム欄を確認すると、大倉平八という名前で俺の顔がアイコンとなっているユニット以外全て消えていた。

 俺の名前のユニットだけ残っていることに、何だか背筋がゾッとする。しかしデータが消えていることを認識した俺は、そんな不気味な思いも消え失せ頭に血が上ってきた。

「ふっざっけんな! おい、俺のデータほぼ全ロストしてんじゃねーかよ! ああぁぁァァ!」

 怒りのボルテージが上がり、スマホをぶん投げそうになったが踏み止まる。

 Be cool、Be coolだ俺。

 あまりの怒りに手が震えてくるが駄目だ。恐らく唯一残された手がかり。失う訳にはいかない。

 それから結構な時間いじくっていたが、大した手がかりは見つからなかった。わかったことは、GCの画面が大幅に変わっていることぐらいだ。

 ユニット、アイテム、ステータス欄、ガチャ、それ以外の全てが消えていた。

 そしてもう一つ。ガチャを引くために必要な魔石が五十個補充されていたのもわかった。

 ガチャから出た招待状でこの世界へと引き込まれた……つまりこのガチャに何かあるのか? ガチャの欄には【初回十一連URユニット確定】とバナーまである。

 まさかなーと内心思いながら、この状況でガチャを引くためにタップした。

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