ガチャを回して仲間を増やす 最強の美少女軍団を作り上げろ

ちんくるり

1章 異世界への招待状 (1)

1章 異世界への招待状


「はぁー、今回追加のもめっちゃ可愛いな」

 手に持つスマートフォンを眺めながらため息をつく。画面に映っているのは、今オタク界隈で話題になっている美少女育成型ソーシャルゲームアプリ『Girlsガールズ Corpsコーズ』。略してGCと呼ばれるゲームだ。

 半年前にサービスが始まり、今ではダウンロード数一千万人を超え、そこそこ人気がある。内容は美少女を集めて軍団を作ろう、というシンプルなものだ。

 作った軍団でイベントの魔物達と戦ったり、ユーザー間同士でのバトルなどができる。

 シナリオもあって、世界観は中世ヨーロッパ風。出てくるキャラは勿論ほぼ女の子。全員ただの女の子ではなく、戦士や魔導師などの戦う女の子達だ。

「でも……今月厳しいしなぁ……」

 そして今、俺は猛烈にこのゲームで悩んでいる。何に悩んでいるかというと、ガチャだ。

 このゲームではキャラを取得するのに、大きく分けて二通りの方法がある。イベントでの配布か、課金をしてガチャを回し手に入れるかだ。

 そしてガチャを回すには、魔石というアイテムを使用しなくてはならない。魔石はユニットの所持枠を増やしたり、クエストをするためのスタミナ回復に使ったり用途は様々だ。

 魔石を手に入れる方法は、運営がイベントなどで配布するか、ユーザーが課金して魔石を購入するかの二つ。

 一個百円から購入可能で、まとめ買いは五個からで五百円。十個からは千円でおまけに一個付いて十一個。一度に購入する個数が多ければおまけも増えるから、基本的にユーザーは最高金額で購入する。

 ガチャは単発一回、魔石五個。十一連で五十個必要だ。単純に考えたら一回五百円、十一連で五千円ということになる。

 正直に思う、これは馬鹿げた値段だ。しかもキャラだけではなく、武器やアイテムなども混入しているという珍しいもの。しかし、これを回してしまう人が後を絶たない。

 人気イラストレーターと人気声優のダブルコンボという、このゲームの魅力は半端ない。俺も既に三桁近いきちがガチャに飲み込まれている。

 それでだ。

 今回このガチャに追加されたキャラ、URルーナ・ヴァラドちゃん。ロングの金髪、ロリ吸血鬼。

 これを見た瞬間に、これは地獄になるなって思ったよ。実際某掲示板では、爆死者達のえんの声で満ち溢れていた。

 ある者は爆死したことを嘆き、ある者は運営の低確率ガチャに怒りの声を上げ、ある者はまさかとは思うけど、ルーナちゃん持ってない奴なんておりゅの? とあおる。

「一体何人の諭吉を使えば手に入るんだよ……」

 現在の時刻はそろそろ日付が変わる時間だ。日付が変わった直後に当たる確率が上がると信じる、〇時教の信仰者である俺はその時を待ち続けていた。俺はこの〇時教オカルト理論で、今まで十回試して一回も成功していない。まさにただのオカルト。

 だけど今月厳しい俺には、このオカルトにも頼らずにはいられない。そんなにやばいなら止めろという考えも浮かぶのだが、ガチャを回すことを止めることはできない。

 もうアプリの再起動も済ませ、PCがある机の上にスマホを置き、両手を合わせて祈祷もした。準備万全だ。

「うわぁ……それにしても確率ひっでぇな」

 待つ間もPCで某掲示板を見ながら、増え続けるレスを辿っていく。

 十万ドブった、二百二十連突破とか草生える……、などなど続々と爆死報告が増え続けている。この惨状を見てもなおガチャを回そうと思う俺は、相当毒に侵されてしまっているのだと自覚するが、回さずにはいられないな。

「おっと、危ない危ない」

 そんな怨嗟の声を見ているうちに、時刻は日付変更寸前。急いでスマホを操作して画面をガチャ画面へと切り替える。漢、おおくらへいはち、いくぜ!

「……三、二、一! いっけぇぇぇ! 僕の想い! ルーナちゃんに届けぇぇ!」

 時計は〇時の針を指した。自分でも気持ちが悪いと思いながら、声を張り上げスマホをタップする。

 画面には光り輝く宝箱が映し出された。勿論俺の選んだガチャは十一連。この一押しで五千円が吹っ飛んだのかと思うと武者震いがしてくるぜ。

 宝箱は、銀、金、白、そして虹色へと変化していく。

「おっ、おっ、ふぉおー! URきたぁぁ! これは勝ちましたわ!」

 虹色に輝く宝箱はURの証。そして俺の狙いも最上級レア、ルーナちゃんだ。

 URの確率は一パーセント程なのでこれはとても運がいい。流れがきてる。たとえルーナちゃんじゃなくても、倍プッシュせざるを得ない。

 そう期待を込めながら、宝箱の中から放出されるアイテムを確認していく。

【R鉄の剣、R鉄の短剣、R回復薬、R鉄の鎧、SRエクスカリバール、R銅の蹄、Rナックル、SR鍋の蓋、SR鋼鉄の剣、R食料、UR異世界への招待状】

 見てのとおりこのゲームのガチャは、キャラの排出率が非常に偏っている。【食料】や【回復薬】はユニットの体力や疲労度回復用のアイテムだ。

 はぁ……URは出たけど、やっぱりルーナちゃんじゃないか。

「はは、まぁガチャなんてこんなもんだよなぁ。……さて、もう一回……あ、一回分しか金入れてなかった」

 気を取り直して次の十一連を引こうとしたけど、ガチャ画面の十一連ボタンは黒くなっている。魔石が足りていないということだ。

 ルーナちゃんに気を取られて、十一連一回分しか金額を入れてなかった。俺ってばうっかりさん。

 課金するべく魔法のカードを取り出そうとしたのだが、ふと、その手を止めた。さっきのUR、全く聞いたことも見たこともないということに気が付いたからだ。

「えーと……おっ、あった」

 早くガチャを引きたいという気持ちもあるが、未知なるアイテムを確認したくもなる。

 さっそくスマートフォンを操作し、アイテム欄を開き排出されたものを選択して詳細を確認した。

【UR異世界への招待状】

 異世界へ招待された証。使用すると、異世界へと旅立つことができる。

 ……何これ? 異世界への招待? 詳細欄を見てもこれ以上のことは書いていない。PCで検索してみても、ネット上にこのアイテムに関しての情報は一切なかった。

 もしかして……世界中で俺だけがこのアイテムを当てたってことか? ぐふー、こりゃとても気分がいいぞ。

 さっそくアイテムを使うためにタップしようとしたが、踏み止まってスクリーンショットを保存しておく。後で持ってない奴おりゅするための証拠を残しておくのだ。せっかく当たったんだし、自慢したいじゃん?

 保存し終えた俺は、ガチャのことも忘れて招待状をタップした。すると、【本当に使いますか? Yes、No?】と最後の確認が表示される。

 迷わずYesを押すと、画面が白く輝き始めた。このワクワク感、久しく忘れていた子供の頃を思い出すようだ。

「おっ、何だこの演出。ずいぶんと派手……え?」

 光が凄いなーっと眺めていたが、徐々に凄いどころかスマホが震え直視できない程に輝き出す。これやばいんじゃないかとスマホを手放そうとしたけど、その前に俺の視界は全て白く染まった。



「くっそ、何なんだよ今の……」

 スマホからの閃光で目をやられ、涙が流れる。目を覆いたくなるような光を出すなんて、スマホってこんなにやばいものだったのか……。

 演出だとしてもこの光量は馬鹿なんじゃないの。勘弁してくれ。

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