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ネクストライフ

相野仁

序章 (2)

 俊はあいづちを打つ。聞いた限りでは割とオーソドックスなタイプのRPGゲームのようだと思った。

 隆司は言葉を続ける。

「上位職業なら専用の必殺技とかも作れたりするし」

「マジかよ」

 必殺技大好き人間でもある俊は、今までの中で一番の食いつきを見せた。そして浮かんだ疑問を口にする。

「戦士とか騎士はともかく、魔法使いとか僧侶にも必殺技なんてあるのか?」

「あるよ」

「マジかよっ!」

 俊は時と場所を忘れて目を輝かせる。

「近距離用? 遠距離用?」

「強いて言うなら、自分用かな。魔法使いって魔法が必殺技みたいなもんだし」

「そっか、それもそうか」

 俊は合点のいった顔でうなずく。

「気になったんだけど、どういうところで戦うんだ? ダンジョン?」

「クエスト次第だよ。遺跡とか洞窟とか、塔とか古城とか、ダンジョンみたいな場所もあるし。湖の上とか山の頂上とか、砂漠とか森の中とか自然のエリアみたいなところもあるし。クエストも魔王を撃破せよとか、モンスターの大軍勢を撃退せよとか。こういうアイテムを持ってこいみたいな、ただのおつかいクエストもあるし、いろいろとしか言えないよ」

「へええ」

 隆司は混濁し始めた頭で、友人が食いつきそうなことを言った。

「一説によると、最終決戦の場所は月の予定だとか」

「はあ? ファンタジーでどうやって月に行くんだよ? そんな魔法あるのか?」

「さあ? これからバージョンアップされる予定の分だし」

「ふーん」

 俊は少しの間考え込む。知りたい部分はある程度分かった気がするが、まだ聞きたいことはあった。時間をかせぐ意味でも、質問を続ける。

「ギルドとか聞いたことあるんだけど、そのへんについて詳しく頼む」

「うーん、簡単に言えば仲間で構成された団体、かな?」

 隆司は鈍くなり始めている頭を必死に働かせ、分かりやすい説明を試みていた。

 ファンタジー・アドベンチャー・オンラインというゲームではレベル五十以上のプレイヤーならば、「ギルドホーム」を購入し、仲間を募集することができる。

「よく分からんな。パーティーとかとどう違うんだ? ホームって、ギルド作らないと持てないものなのか?」

「そこからか。ホームは別にギルドを作らなくても買えるけど、まず個人の負担額が変わってくる」

「あ、それは分かった」

 ギルドに入れば専用の掲示板やチャットも使えるようになり、非常に連絡をとりやすくなる。

「プライベートアドレスを知らない限り、ログインしている相手にしか連絡を取れないからな」

 専用掲示板ならば、お互いメッセージを残しておくことができるのだ。

「パーティーもかなり組みやすくなる。ギルドメンバーで組めない時だけ、探せばいいわけだからな。入ってないと必要になるたび、いちいち探さないといけないだろう」

 そして他にもギルド特典というものは存在する。ギルドランクが高くなったり、ギルド同士の戦いで勝てば、街、牧場、田畑、山といった施設の運営権がもらえるのだ。街ならば発展に応じて税収が入ってきたり、職人から特殊な装備やアイテムが献上されたりする。牧場、田畑、山だと希少価値の高い素材を採取できるようになる。

「城と街をもらって、城下町を作っていたギルドもいるなあ」

「マジで? 聞いてた限りだと、わりと何でもありじゃないか?」

 確かにわりと何でもありだった、と隆司は苦笑混じりにうなずく。

 ギルドに入る利点は、メンバーから不要な装備やアイテムをもらえたり、いろいろな助言をもらえたりするし、素材集めなどに付き合ってもらえることだろうか。

「少なくとも一人でやるより、圧倒的に効率はいいな」

「そうだな」

 確かに効率のいい攻略方法を知っている人間の助力を得られるならば、圧倒的なアドバンテージになりそうだ。

 俊としては知りたいことを大体聞けたので満足したが、まだ救助が来る気配はなかった。隆司は刻一刻と現世から遠のきかけているとしか思えない。だから、俊は必死に知恵を絞って質問をする。

「ところで肝心な点だけど、金ってどれくらいかかる?」

「月額九百円かな」

 それならば俊の小遣いでもプレイはできそうだ。何ならアルバイトするという手もある。

「じゃあ俺でもできるかな。ところでセーブとかどうするんだ? 拠点とか街の入り口とか、特定の場所じゃなきゃセーブできないなんてことはないのか?」

「それだとプレイヤー減るんじゃないかなぁ。セーブはリアルタイムでされているよ。だから好きな時にログアウトできる。代わりにリセットしてやり直し、なんてできないけどな」

「そっか。……おい、隆司?」

 友達の異変に気づいた俊が、懸命に呼びかけるも反応はない。

「おい! しっかりしろ!」

 体を揺さぶり、りょうほおを何度も叩いたが効果はなかった。

 数日後、山岳部の合宿で冬山に来ていた高校生一行のうち二人が遭難し、一人が死亡したとニュースで伝えられた。

「亡くなったのは○○県の高校生、山田隆司さん十七歳。一緒にいた同級生の話によりますと……」

 高校生に無謀な登山をさせたと学校側に非難の電話や手紙が殺到し、高校は対応に追われることになる。平凡な高校生、山田隆司は十七歳でその生涯を終えた。

 ─────はずだった。

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