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ネクストライフ

相野仁

序章 (1)


序章



 見渡す限り白しかない。

 やまりゅうとその友人・さわしゅんは、高校の山岳部の合宿に参加した際、遭難してしまったのだ。冬山は恐ろしいと大人や先輩たちにさんざん脅かされ、分かったつもりでいたのだが、まさに分かったつもりでしかなかった。

 吹雪が無情に吹きつけ、二人から体力と体温、そして希望を奪おうとしていた。そんな状況にあらがうように二人は大声で、『ゲーム』の話をしていた。


「まず、VR MMORPGってどんなのかを教えてくれよ」

 楽しげに『ゲーム』について語る隆司に、俊は説明を求める。隆司はここぞとばかりに意気込んだ。

「VRについての説明は今さらいらないよな?」

「ああ、そこはいい」

 その手の話にいくらうといからと言っても、VIRTUALヴァーチャル REALITYリアリティ──日本語で言う「仮想現実」あるいは「人工現実」は知らないはずもない。その昔は夢の技術、実現不可能と言われていたしろものも、技術が進歩した今では「一家に一台」とうたい文句があるまでに普及していた。俊もVR機自体は幾度も利用したことがある。

「じゃあMMOがどんなものかって言うとだな」

 MMO──MASSIVELYマッシブリー MULTIPLAYERマルチプレイヤー ONLINEオンラインは「大規模多人数参加型」と訳されるように、数十人から数百人、場合によっては千人以上が同時にログインして遊べるオンラインゲームのことだ。

「だから友達同士で一緒にプレイしたり、逆に一緒にプレイしているうちに仲良くなって現実でも友達になったり。もちろん、人間関係の面倒な部分は同じだけどさ」

「それだけ聞くと、現実でやれって思うな」

 予想通りと言えば予想通りの反応に、隆司は苦笑する。

「人間関係だけ見たらそうかもしれないけどさ、だいはVRでのRPGってところにあるんだよ。武器や魔法がリアルだし、エルフとかドワーフとか獣人もいるし。職業もいろいろあって、全部コンプリートしようと思ったら十人や二十人じゃ足りないって言われるくらいなんだぜ」

「へえ」

 元来「やりこみゲー」と言われるゲーム、そして獣耳が好きな俊はぜん興味を持った。

「敵はどんな奴がいるんだ? モンスター?」

「おう、魔王とか魔人とかドラゴンとかグリフォン、ヴァンパイアとかわんさかいるぞ」

 隆司の狙いが的中したのか、俊はとうとう次の一言を言った。

「タイトルは?」

「ファンタジー・アドベンチャー・オンラインだよ」

「それはまたストレートと言うか、安直と言うか……」

 俊の苦笑につられて隆司も笑う。時と場所を一時的に忘れて。

「覚えやすくていいだろ?」

「それは否定しない」

 確かに一度で覚えられそうなタイトルであった。

「タイトル名で検索すれば、すぐにホームページが出るはずだから、そこで申し込めばいいよ」

「そうだな─────生きて帰れたらな」

 声のトーンがここで落ちる。彼らはまさに今、冬山で遭難中なのだ。救助が来ない限り、生存は絶望的であろう。ゲームの話をしていたのは、不安をまぎらわせるためなのである。

 救難信号自体は出したものの、救助が来る気配はない。

「何か、眠くないか?」

 隆司は急にそう言うとその場にしゃがみこみ、俊があわてる。

「おい、しっかりしろ! 寝たら死ぬって言うぞ」

 これは受け売りにすぎなかったが、吹雪の中、寝てしまったら危険だということくらい想像がつく。俊は隆司のりょうほおを何度も叩くが、効果はない。俊は必死に知恵を絞り、隆司が反応しそうな話題をひねり出す。

「そうだ、その、ファンタジー・アドベンチャー・オンラインがどんなゲームか、まだ全部聞いてないぞ」

 その言葉に隆司は反応する。

「仲間と一緒に効率プレイすれば金も経験値もかせぎやすいよ……」

 大好きなゲームの話だったからか、それとも神の気まぐれか、目を開けて語りだした。

 敵を倒して経験値を稼いでプレイヤーレベルをアップさせる。多種の敵がドロップするアイテム、多様なフィールドから採集できる素材をもとに、より様々な装備や道具を作り出す。そしてレベルとは別に職業というものが存在する。

 職業は大きく分けて戦士、騎士、僧侶、魔法使い、薬師、鍛冶師、採掘者の七つ。それに剣士、格闘家、盗賊、斥候、魔術師、屍術士、神官、錬金術師、召喚士などといった派生職業があり、条件を満たすことでより上位の職業につける。

 複数の職業を経験することでつける職業もあり、複数の上位職業を経験することで初めてなれる職業もあるのだ。

「例えば今の俺は賢者なんだけど、魔導師、神官、錬金術師の三つの職業を経験してなれたんだ」

 僧侶と騎士を経験してなれる聖騎士、戦士、斥候、盗賊から派生する暗殺者など、数多くのパターンが確認されていて、極めるのは難しいと多くのゲーマーたちに嬉しい悲鳴を上げさせたくらいだ。

 そして彼らが悲鳴を上げたもう一つの要因は、職業それぞれで習得できる魔法やスキル、技などに違いがあったことである。

 さすがに全ての魔法、スキル、技が一つの職業でしか会得できない、ということはなかったのだが、職業専用のものはいくつも存在した。

「僧侶が死体を操る魔法とか使えたらおかしいもんな」

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