転生したので次こそは幸せな人生を掴んでみせましょう

佐伯さん

0歳 / 四歳 (1)

0歳


「だぁ」

 此処ここまで理解出来ない事は初めてです。

 現状把握の為に放った第一声が、言葉に芯の通らないなん。思うように声が出ない。

 更には明らかに小さな手に、動かしにくいったらありゃしない体。というかほとんど動かないのですが。自発的には上手く動かせません。

 こうなると、誰だっておかしい事に気付きます。

 だってそうでしょう。今まで大人として人生を歩んで来た自分が、気付いたら赤ん坊に逆行していたら、自分の頭を疑います。言葉が自由に発せられたならばOh,Jeジーsus!って嘆きたいくらいですよ。

 それにしても、おかしい。

 赤ん坊になったのもおかしいのですけれど、そもそもの話、私は死んだはずなんですよね。

 何てことのない、車にかれて事故死。信号無視した車に激突されて、あっという間に黄泉よみの世界に旅立った訳です。突然すぎて死ぬ程痛かった事くらいしか覚えてませんが。つまりあれですね、私は生まれ変わりというものを果たした、みたいです。

「あなた! リズが笑ったわ!」

「本当か!」

 自由に体が動くのならば、私の頬は盛大に引きっていた事でしょう。

 私を抱き上げたのが、どうやら私の両親らしいのですが……二人が、どう考えても日本人ではなかったから。

 一般的な美醜の観念から言えば美しい部類のカップルなのですが、その髪色や瞳の色からして色々突っ込みたいです。自分の父親が、大阪のおばちゃんもびっくりな赤色の髪をしているのですから。但し人工的なそれではなく、自然で綺麗とすら思える程の深みのある色合い。顔立ちとぴったり合っていて違和感はないです。

 母親はと言いますと、色素の薄いアイボリーカラー。これはこれで似合っています。こちらもまず日本では見られないですが。

「リズ、父さんだぞ~」

 父親らしき人が、くれないの瞳を近付けて、これまたでれでれとした表情で頬りします。取りえず私はこの人の娘……娘ですよね? 息子じゃないですよね? 子供だという事は確定しました。

 そしてどうやら私の名前はリズというそうです。日本人ではない事もほぼ確定しましたね。激しく嫌な予感はするものの、まだそれが現実に証拠となって現れていないから何とも言えませんが。

 第二の父親は爛々と輝く眼差しで私を見詰めて来ます。恐らく、望まれて生まれたのでしょうね、私は。愛されるべく生まれてきたのが、私。

 こんな中身が大人の子供を持って少し両親が可哀想な気もしますけどね。勿論もちろん内密にはしておきますけども。

「おっ、俺の事分かったのか?」

「だぁう」

「セレン、リズは俺の事父さんだって分かってくれたぞ!」

「うちの子は賢い子ね!」

 親バカになるんでしょうね、この人達。現段階で親バカなのもわかりますし、溺愛されそうです。子供らしくしていれば。

 その子供らしくを実行しようと表情を緩めてきゃっきゃと笑うと、これまた両親は幸せそうに笑うのです。

 本当に、愛されて生まれてきた子供なのでしょう。

 なら、私はその愛情に応えなければと思います。たとえ私という自我の精神年齢が高くっても、この人達が私を生んだという事実は変わりません。

 彼等が私の事を大切にしてくれる分、私も彼等を慕う事でしょう。

「それにこの潜在魔力量……この子なら私達の後を継いで宮廷魔導師になるのも夢じゃないわ」

 ……うん、何か明らかに異常な単語が飛び出たような気もしますけど、知りません。私は可愛らしい赤ん坊なのです、そんなファンタジーチックな事なんか分かりません。知ーらない。

四歳

 まず現状を説明しますと、 私ことリズベット=アデルシャンは四歳になりました。

 両親の愛情をたっぷりと受けた私は、少なくとも両親の前ではひねくれる事なく素直な子に育ちました。中身が可愛げないのは勘弁して下さい、いい大人が幼児返りするのは無理ですから。

 親からはリズという愛称で呼ばれます。今や慣れてしまったものですが日本人名に慣れていた私には違和感バリバリでした。

 幼児な分、色々体験したくない事まで体験しましたが、そこは長くなるので割愛します。一つだけ例を挙げるなら、恒例の父親とのお風呂イベントです。何があったのかは言わなくても察して下さい。


「リズ、こっちにおいで。一緒に本を読みましょう?」

「はい、母様」

 私を産んだ母様……名前はセレンというそうです。

 母様は柔らかな微笑みをたたえて私を手招きします。それにぐに反応して笑みを浮かべて駆け寄るのが日課になっていました。

 私の母様は、身内贔屓びいきになるかもしれませんがとてもうるわしいです。私が男だったら是非嫁にとアプローチかけるくらいには。

 そんな母様が美しい笑みでおいでと言うのです。行かない訳にはいかないでしょう。

 転ばないように気を付けながら母様の下に駆けていくと、近付いた私を慈愛の笑みで抱き締めてくれます。

 ……前世の私からすればとてもうらやましい柔らかさが、胸部装甲として母親には備わっているのですよね。私も母様の血を引いているので胸部装甲が追加される事を祈ってます。

 両親の血を良いように引けば、結構な外見に成長すると思うのですよ。今現在で割と片鱗は見えています、自分で言うのも複雑ですが。

 絶世の美女にはり得ませんが、それなりな可愛さを持った女には成長しそうで助かっています。あくまで親の遺伝子のお陰なので自慢しようとは思いませんけど。

「今日は何の本を読むのですか?」

 ふくよかな膨らみに顔を埋めて極上の感覚に目を細めつつ、他者からすればあどけない笑顔で首を傾げてみせます。

 ちなみに……というか当たり前なのですが、四歳児では有り得ない程私は賢い子だともてはやされています。手のかからない子でありたいとは思ってはいます。でも構っては欲しいんですよ、それなりに。

「リズは何を読みたいかしら」

「父様の書斎にある本を読みたいです」

 ……こんな四歳児可愛げないですね、でも許して下さい。こんな明確な意思と明瞭な受け答えをする子供など世界にほとんど存在しないでしょう。幸いな事に両親は「うちの子賢い!」で済んでますが。

「書斎のは駄目よ、あれは難しいし……魔術に関してのだから」

 ああそうだ、私が最初にねんしていた事は当たっていました。

 やはり私が生まれ変わった先は、地球ではなかったみたいです。何かファンタジーな世界に生まれ落ちてしまったようで。

 おまけに自分は貴族に生まれたようです。両親は城に仕える魔導師……あ、魔導師というのは魔術を極めた人の称号らしいです。つまりはエリート。

 魔術の事については後々説明したいと思いますが、取りえず私は幸運の女神に微笑まれたらしく、非常に恵まれた環境に生まれたみたいですね。地球の神様が便べんを図ってくれたのでしょうか。

「私も魔術の事を勉強したいです」

 両親いわく、「才能はある。潜在魔力量も並外れている」だそうな。これチートスペックじゃないんですかね……いやあったら助かりますけど。

 そんな評価な私ですが、才能があっても使わなければ宝の持ち腐れになってしまいます。そして、才能は磨くものですし、才能という言葉には胡座あぐらをかきたくない。

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