ためしに怪談きいたら、やっぱり幽霊いるし怖すぎた。

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両手がおぼえている  松本エムザ / お遍路さん  清水誉 (1)

カラオケ  モチツキステンレス


 高校生の頃の話です。

 僕の地元は、東北の中でも娯楽の少ない田舎町です。友人達も家が遠く、部活はやってましたが幽霊部員、両親は共働きと、休日は一人の時間が多かったのです。

 そんな時は、バスや電車を駆使して長い距離を進み、街に繰り出していつも一人カラオケ、いわゆる〈ヒトカラ〉ばかりしていました。


 ある日、駅前のテナント募集になっていた建物が、なんとカラオケ店になっていました。

 そこは常に『テナント募集』の看板を掲げていて、今まで薬局や牛丼屋、コンビニなんかが入りましたが、どれも数ヶ月で閉店していました。

 僕は心から感激しました。まさか地元にカラオケができるとは!

 有頂天状態の僕は、次の日は学校を休んで朝からカラオケに赴くことにしました。


 翌日、開店と同時に入店。

 平日の朝ということもあり、僕以外は誰もいませんでした。

 お店は綺麗だし、ドリンクバーも充実してるし、最新機種まで揃っていて、そんな場所へ自転車で行けてしまう幸せを噛み締めていました。

 休憩がてらトイレに行き、戻り際に受付の前を通りかかった時でした。

 受付にいた店員さんに呼び止められました。

 店員さんは、申し訳なさそうに

『お客様のお部屋に女性の方が入っていきました。お連れ様がいらっしゃった時は、受付してください」

 とのことでした。

 えっ? と思い「連れはいないです。今日は一人です」と答えました。

 すると店員さんが、

『部屋に子供を抱いた女性が入っていかれましたよ!』と言ってきました。

 客は僕の他に誰もいないと言うし、もしかして泥棒かもしれないと思い、店員さんと一緒に部屋へ戻りました。

 部屋の中には誰もおらず、荒らされた様子もありませんでした。ちなみに貴重品は常に持ち歩いていました。

 盗られたものもないことが分かり、結局店員さんの見間違いだったのだろうということで終わり、僕はカラオケを再開しました。


 その後は楽しく歌い続け時間も経ち、部屋についている電話から退室十分前のお知らせがきました。

 延長されますか? の問いに、どうしようか迷っていたら、

『お客様? 失礼ですが、今もお一人ですか?』

 と、聞かれました。

「はい。そうですよ」

 ぶっちゃけ、またかよ。と思いました。

 すると、店員さんが電話の向こうで、小声で、あれー、おかしいなーと言っているのが聞こえてきました。

 すると、また店員さんが訊いてきました。

『今、お一人なんですよね?』

 いいかげんイライラして、

「そうですよ。さっきから何なんですか?」

 と強めに言い返すと──。


『いや、実は先ほどから電話越しに、赤ちゃんの泣き声が聞こえるんですよ」


 サーっと背中が寒くなりその場で固まりました。

 部屋の電話が鳴った時は、カラオケの画面の音を消しているので、会話の音声しか届くわけがないのです。

 すぐに店員さんに部屋を確認しにきてもらいました。

 部屋に来た店員さんは、やはり不思議な顔をしていましたが、青ざめていたであろう僕の顔を見ると、何かを察したように「退店で宜しいですね?」と聞いてきました。

 そのまま支払いを済ませて退出し、振り向くことなく家へ帰りました。


 そのカラオケ店には、それから行くことはありませんでした。

 そして、やはり間もなくその場所は、いつもの空き店舗になってました。

 もし、よく建物の変わる場所があったら、それは立地の悪さなど説明できる理由があるとは限りません。

両手がおぼえている  松本エムザ


 M君に起きた本当の話。

 小学生の頃のM君は、学校が終わると自転車であちこちに出かけ、友だちと遊ぶ毎日を送っていた。

 その日、自転車を走らせていたM君は、交差点の歩道の隅にサッカーボールがひとつ、転がっているのを見つけた。


 赤と銀のデザインの、古びたボール。


 道路向こうの公園から、転がってきたのだろうか?

 車の往来も多い場所だからこのままにしておいても危ないと思い、M君はボールを拾って自転車のカゴに入れると、友だちが待っている公園を目指した。


 公園には既に、何人かの友だちがベンチの周りに集まっておしゃべりをしていた。

「おおーい」

 M君は彼らから少し離れた場所に自転車を止め、カゴから先ほど拾ったボールを取り出した。

 傷んだボールだから水でも含んでいるのだろうか。学校のサッカーボールより若干重く感じたが、気にせずM君は友だちのいるベンチに向かってボールを思いきりキックした。

 放物線を描いてベンチを目がけ飛んでいくボールを、当然誰かが受け止めてくれるだろうと思っていたら

「うわぁぁぁぁぁーっ!!

 みな一斉に血相を変えて、ボールから逃げ出していくではないか。

 無人になったベンチのそばに落ちたボールは、そのまま植込みの奥に転がっていってしまった。


「なんだよ。ノリ悪いな。サッカーでもしようぜ」

 M君の言葉に、友人達は青ざめた顔で訴えた。

「何言ってんだよM! なんだよアレ!」

「はぁ?」

「はぁ? じゃねぇよ! ち、血だらけの生首だったろ! お前が蹴ってきたの!!


 生首?

 そんなワケがない。

 あれはサッカーボールだった。


 M君がそう抗議しても、みんなは半泣きになって「人の首だった」「血だらけでこっちを睨んでいた」と喚き叫ぶ。


 それなら確かめてみようと度胸のある数人を従え、ボールが転がっていった植込みの中を探索したが、いくら探してもボールは見つからなかった。


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