魔法の国の魔弾

狩真健

0 Briefing (2)

 リアルじゃいじめにプッツンして、主犯連中を病院送りにしたせいで高校中退。

 その直前に両親が事故で他界。

 そのままダラダラと1人引きこもって、親の保険金を食い潰しながらゲーム(ざん)(まい)。ネットワーク上以外の人間関係なんて、ないも同然。孤独な毎日――。

 俺は、それで十分だと思っていた。

 本当の孤独なんて、これっぽっちも知らなかった。

 自分が甘ちゃんであったことを、小屋で過ごしている間に嫌というほど思い知った。

 

 もう耐えられない。

 誰とも顔を合わさず、(しやべ)れず、触れ合えない日々。

 それがどれだけ辛いのかを、この世界に来てから思い知らされた。

 これ以上ここに閉じこもっていたら、気が狂いそうだった。

 だから、俺はここから出ていくことにした。

 誰でもいいから、人の顔が見たい。

 人の声が聞きたい。

 この世界が本当にファンタジーなんだったら、エルフだって猫耳だって犬耳だって構わない。

 なんだったら人の言葉を(しやべ)るドラゴンでも。

 とにかくなんだっていい。()()()(つう)ができるのなら、幽霊だって大歓迎だ。

 もう、一人ぼっちには耐えられない。

 今の今まで、自分の頭をふっ飛ばさなかったのが不思議なぐらいだ。無人島に流された漂流者も、きっとこんな気分なんだろう。

 

 この世界にやって来た(どう)(ほう)へ。

 俺は北に向かう。小道に沿って坂を下れば開けた道に出るはずだから、そこから左が北に向かう道だ。

 願わくば、この文を読める(どう)(ほう)が現れることを俺は望む。

 そして実際にそうなったら、ソイツは忘れないでいて欲しい。

 

 ―――自分は1人じゃないんだと。

 俺という同類がこの世界にもいるということを。

 幸運を祈る』

 

◆ ◆ ◆

 

 もうどれだけ歩いたのだろう?

 3日3晩歩き続けた。食事をする時と睡眠を取る時以外は、日が暮れても歩いた。

 いったいどれだけの距離を歩いたのか。

 肉体的な疲れはほとんど感じていない。

 限界まで極めたステータスと装備の恩恵により、(かり)()の歩行速度は3日3晩歩き通した今でも、()(じん)も落ちていない。

 だが、別の理由で限界を迎えつつあった。

 延々と続く、終わりの見えない道。

 ここまでの道のりで出会えた者は、皆無。

 エルフとも猫耳とも犬耳とも、上半身人間で下半身動物な(はん)(じゆう)(じん)とすらも、(そう)(ぐう)できていない。

 彼――――渡会(わたらい)(かり)()は、いまだ孤独から脱していなかった。

 

〈WBGO〉のマーセナリー・モードのシステムは、基本的にMMORPGに近い。

 ゲーム内で与えられた任務やトレーニングをクリアすることによって、プレイヤーのランクが上がっていくと同時に、経験値を獲得。それを割り振ることで、パラメータが強化していく仕様となっている。

 (かり)()LP(ライフポイント)・筋力・スタミナ・俊敏性といった身体能力は、カンストクラスまで強化済み。体力は、ほぼ()(じん)(ぞう)といっても過言ではない。

 が、それはあくまでマーセナリー・モード限定の話。

〈WBGO〉の特徴の1つとして、現実的な設定下でプレイヤー同士の戦闘のみを純粋に行える、タクティカル・コンバット・モードが実装されている。

 それは、演出が派手気味で実際に人が死なないという点を除けば、本物の戦場に可能な限り近づけたゲームモードだ。

 タクティカル・コンバット・モードにおける(かり)()のランクは、中の上程度。

 現役の軍人も多数参加している中では、かなり上等な部類といえるだろう。