エルフ転生からのチート建国記

月夜涙

プロローグ 輪廻の魔術師 (2)

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 結果から言うと、(りん)()(てん)(せい)は成功した。

 1度目の転生は、西暦1972年のアメリカ。中流家庭の次男として生まれた。

 俺が前世のことを思い出したのは13歳の誕生日。どうやら、体が十分に育つまでは脳が魂の情報を受け入れないようだった。

 1度目の転生は、元の人生をなぞるようにして研究に打ち込んだ。

 だが、その人生でどうしようもない(さび)しさを覚えた。世界が魔術を捨てている。

 科学によって世界の(やみ)が照らされ、神秘の潜む場所がなくなった。魔術にできて科学でできないことが消えていった。

 たとえば、燃やすことに(しよう)(がい)(ささ)げて(たん)(れん)し、様々な魔術道具を使っても、魔術師はせいぜい半径50メートルを燃やすのが精いっぱいだ。だが、科学はその100倍も1000倍ものことを、誰でも使える道具で実現してしまう。

 俺はこの時点で物理現象における魔術の可能性を捨て、ただ精神と魂に注力するようになった。そこだけが魔術の聖域だと信じて。

 そして50年生き、新たに得たものを魂に刻んで自ら命を絶った。

 

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 2度目は冗談のような世界だった。文明は中世から近代に差しかかったぐらいだ。

 ゴブリンやオークといったモンスターが(かつ)()し、(よろい)を着た騎士が街を練り歩き、魔術が一般市民にすら使えて当たり前の世界だった。

 そう、時間ではなく世界そのものが違った。

 俺は王家に仕える騎士の四男として生まれ、それなりに自由で裕福な暮らしができた。

 ここでは14歳のときに、前世の記憶が戻った。そこで気が付いたことがある。

 地球では、何かしらの影響で魔術に制限がかけられている。

 地球では体の外に出た瞬間、()(さん)するはずの魔術が、ここではいくら経っても形を保つ。魔術式を頭に浮かべたときに生じるノイズがない。

 この世界は楽しかった。魔術が発展していて知らない情報がいくらでもあった。何よりも実戦の場で魔術を使用できた。

 この世界での俺は輝いていた。魔術は魂に宿る。(れつ)(あく)な地球の環境で(きた)え続けた俺の実力は高く、地位を高め、城に取り上げられ、宮廷魔術師の筆頭になった。

 ここの世界では個人に依存した固有魔術と、誰でも使える(はん)(よう)魔術があることを知ることができた。

 固有魔術は女神によって与えられる。ファンタジー世界だけあって、なんでもありだ。

 (はん)(よう)魔術には理屈があるが、固有魔術にはそれがない。俺自身、固有魔術は使うことができても理解はできなかった。

 女神によれば人はそれぞれ、固有魔術に特化した魔術回路を持って生まれてくるらしい。(はん)(よう)魔術は、その空き容量を利用した真似事にすぎないと。

 そして俺の固有魔術の正体は、自分が望む過去の自分を再現すること。これを使えば、たとえ年老いても全盛期の肉体で戦えたし、前世の俺すら呼び出すことができた。

 この世界の最期は、戦場での討ち死にだった。

 最後の気力で、ここでも魂に記憶を刻んだ。

 

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 それからも何度も転生した。平成になった日本、ファンタジーな世界、スチームパンクな世界、西暦2210年のフランス。魔術が自分のうちにしか働かない世界、どう考えてもゲームの中としか思えない世界など、合計15回。

 毎回、記憶を取り戻すのは1314歳。

 魔術は極まりつつあり、独学の限界を迎え、生まれ変わった世界で初めて触れるものに頼らざるを得なくなった俺は、魔術以外の娯楽を求めるようになっていた。

 特に面白かったのは西暦2210年のフランスだ。VRMMOというものが流行っていたのだ。

 他にもこの世界には、VR技術を使って体感時間を引き延ばす、という技術が存在した。

 VRの世界にダイブしている間は、1秒が1000秒になる。

 俺はその世界で、ひたすらレトロな日本産のアニメやゲームを楽しんだ。もともとの俺は日本生まれだし、一度は平成の日本に生まれてゲームも多少は触っていたので、懐かしさがあった。それを無限に近い時間で、好きなだけ楽しめた。

 その世界では魔術に関して得るものはないと、ひたすら娯楽を(むさぼ)り、(ろう)(すい)で死んだ。

 

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 転生回数が20回を超えた頃、急にすべてが色あせて見えた。感動や熱意が消えていく。

 そろそろ終わってもいいと思った。もう、研究は行き詰まり、時間さえかければいいというものではなくなっていたのだ。

 これで最後にしようと決めた21回目、俺は1人の少女に出会った。

 その少女と出会ったのは、魔王によって支配され文明が(こう)(はい)した世界だ。

 少女は美しいハイ・エルフだった。美しい金髪と黒いローブをはためかせ、世界樹でできた弓を片手に、世界を滅ぼす存在に立ち向かっていた。

 どれだけ傷ついても、倒れても、何度も立ち上がり戦い続けた。

 そして、最終決戦。人間が生きていける最後の街が魔王に襲われた。

 少女は生き残った仲間たちとともに、絶望的な戦いに挑んだ。やけくそではなく、針の先ほどの勝利を信じて最善を尽くし、()()き抜く。

 1人、2人と、仲間が倒れていき、最後の1人になっても戦い続け、最後は()(めい)(しよう)に近い傷を負いながらも魔王を打倒した。

 戦いが終わったあと、彼女は自分の戦いを見守る民衆を振り返り、笑みを浮かべて「もう大丈夫」と言って笑った。

 死んでもおかしくない傷を負って血を流し、仲間を失った悲しみに耐えながら。

 その少女を見て、胸の()(どう)が久しぶりに高鳴った。

 そう、俺は知ったんだ。(ゆう)(きゆう)の時で俺の魂は()(もう)し、もう輝くことはない。だが、輝きを放つ人間を見ることで、俺自身が照らされる。

 その後、ハイ・エルフの少女は二度と魔王が復活しないように旅に出た。俺は、その少女とともに旅をして、やがて寿命で死んだ。

 この転生から俺は変わった。ただ娯楽を(むさぼ)りながら魔術を極めるのではなく、輝きを放つ人間を探し、そして(かたわ)らでその物語を見守るようになった。

 そして、俺は必要以上にその時代に(かん)(しよう)することをやめた。

 魂は(めぐ)り、31回目。運命の転生が始まる。

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