ビルドエラーの盾僧侶

有馬五十鈴

プロローグ1 盾を持った少年 (3)

 それは異世界の住民になった年月としても、年齢的にも、そうであるのだろう。

 少年は童顔だが、背格好から(すい)(さつ)するに、おそらく15歳くらいだとアクアは思った。

 また、それならば学校でも先輩後輩の立場にあるはずだ。

「えっと……それじゃあ、せめてお名前だけでもお聞かせ願えませんでしょうか。あ、わ、私の名前はアクアって言いますっ」

 彼女は、少年にアースでの名を(たず)ねた。

 本来なら、プレイヤーのキャラネームとジョブは顔を見るだけで(もう)(まく)に映し出される。

 少女がキャラネームを(たず)ねたのは、少年が意図的にその情報を伏せているからだった。

「……シン」

「シン……さんですか?」

「そうだ」

 アクアは、更に質問を重ねる。

「シンさんはどこのギルドに所属しているんですか? やっぱり【(こく)(りゆう)(だん)】か【(りゆう)(せい)(かい)】あたりでしょうか?」

「いや……俺はどこのギルドにも所属していない」

「あれ、そ、そうなんですか」

 少年の答えを聞き、少女は(わず)かに首を傾げる。

 通常、腕のいいプレイヤーならまず間違いなくどこかのギルドに所属している。

 ギルドに所属していたほうが効率的な狩りができ、仲間同士で装備品やアイテムの(ゆう)(づう)なども行える。また、ギルドメンバー同士で(せつ)()(たく)()しやすいことから、技術向上に(つな)がるなどのメリットがある。

 それに対して、ソロ、あるいは少数で活動するプレイヤーは、装備品の更新も効率的なレべリングも、ギルド加入者より(おと)ってしまう。

「でもシンさんってお強いですね……私もソロで頑張ってるんですけど……」

「特に理由がなければ、ギルドには入っていたほうがいい。ソロの生存率なんてたかが知れてるんだから」

「そう……ですか……わかりました」

 アースでソロを(つらぬ)くことはほぼ不可能。それは、学校の先生にも口をすっぱくして言われていることだった。

 アクアはその先生があまり好きではなかったが、自分を助けてくれた少年もそう言うのであれば、それは正しいことなのだろうと納得した。

「それじゃあ今度からは気をつけなよ」

 少年はそう言うと、少女に背を向けて歩き始める。

「あ……」

 これで少年とお別れするのは寂しかった少女は、つい彼を引き止めた。

「あ、あの! やっぱりお礼はさせていただけませんでしょうかっ!」

 アクアの声に反応して、シンが振り向いた。

 少年は困ったような表情で、ポリポリと頭を()いている。

「とはいってもな……」

「…………」

 アクアには、シンが何を言いたいのかがわかった。

 お礼などと言っても、それほど高価なアイテムでないのなら貰うだけ()()

 ヘルハウンドに苦戦する程度のレベル帯にいるアクアから物を貰っても、意味はない。

「お礼は、この先にある『テキサス』でのお食事です! 私、()()しいハンバーガーを売っているお店知ってるんですよ!」

 しかしそれならば、とアクアは考えた。

 ()()しい食べ物をごちそうする。これならば高価なお返しではなくとも、それなりのお礼にはなるはずだ。

 時刻はちょうど昼時。

 お腹も空いている頃だろうと思い、少女は少年を食事に誘ったのだ。

()()しいハンバーガーか……そういえば最近食べてなかったな……」

「そ、それならご一緒にどうでしょうかっ!」

「……ああ、そういうことならいいよ」

「! ありがとうございます!」

 少女は満面の笑みを顔に浮かべた。

「こんなことでありがとうって言われてもな……とりあえず村のほうに行こう。ここで立ち話をしていてもアレだし」

「は、はい!」

 こうして、アクアは(なぞ)の少年シンと一緒に村へと戻ることにした。

 

 このとき、少年が《ビルドエラー》と呼ばれ、地球人(プレイヤー)とアース人の両方から()()されている(さい)(きよう)のプレイヤーであったということを、少女はまだ知らなかった。

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