一過星(キセキのホシ)
裏無死
地球が誕生してから、どれだけの月日が流れたのだろうか?――
研究する者達は様々な要素からそれらを推測し、ある程度の信憑性を持ってそれを定義した。
広大な宇宙の中で、地球や人類が誕生する確率はどれぐらいのモノだろうか?――
人類は考えもつかない着眼点を持って、それらの確率を算出する事も出来るのだろう、定義される事によってのみ存在は証明される。
逆に言えば、存在していようと、定義されるまではオカルトや妄想のような扱いを受けてしまうと言う事だ。
現代でオカルト認定をされていたとしても、科学が発展していった先でそれが証明される可能性はある。
霊や神や悪魔、死後の世界についても、人間はいずれ解き明かしてしまうのかもしれない。
私は特殊能力を持って、この世に生まれた。
何故そんなモノを持って生まれてきたのか、その理由は全く分かっていない。
特殊能力を持った人間が生まれる確率はどれぐらいのモノだろうか?…私の頭では算出する事も出来ない。
ただ一つ言える事は、私の持っている能力は貴重なモノで普通の人間には備わっていないと言う事実だけだ。
私と同じような能力を持ってる人が居ないか、探し回った事もある。
占い師をやっているような人間には、私と同じ能力を持っていると自称する者達が少なからず存在している。
ただ、ほとんどの奴が偽物だ。
占いに関する知識は豊富なのだろうし、それこそ再現性の高いオカルトを持っていて、人の人生を言い当てられる凄腕の占い師も存在はしているが、特殊能力を持っている占い師を私は私しか知らない。
私は名前を認識した人間の目を見る事で、その人の過ごしてきた過去や、現在の運気状態をある程度把握する事ができる。
写真からは読み取れない、鏡でも同様だ。
実物の人間の目を直接覗く事でしか、私の能力は発現されない。
つまり私は、私自身の運気や過去を見る事はできないし、名前を偽っている人間の事を知る事はできない。
占い師をしているような人間は、自身の本名を伏せてる場合も多く、故に本物か偽物かの判断に困る事も多い。
私にしても本名の美樹曇を使わず、死んだ父の名前を使っているのだから、他人の偽名にとやかく言う事はできない。
父は私の能力を一番最初に信じてくれた人でもあり、一番最初に利用した人でもある。
こんな能力を持って生まれたのだから、普通の人生と言う川を流れて行く事は出来なかった。
それでも、この能力はとても便利だ、過去を見る事が出来ると言う事は、その人物が信用できるかどうかが一発で分かると言う事だ。
私は自身の才能をフルに活用しながら、生計を立てている。
こんな仕事をしていると、言いがかりを付けられる事も多い。
先程私に怒声を浴びせてきた男…啓太郎にしたってそうだ。
ああ言う輩は信じたいモノしか信じないだけに留まらず、人に対しても同じモノの見方を強要してくるふしがある。
あいつは『小さい時に手術を受けたなんて誰にでも当てはまる』みたいな事を抜かしていたが、それはやつの人生がありふれたモノでしかないからだ。
ありきたりな人生故にピックアップ出来る部分も少なく、他者と被るイベントも多い。
そのような人生を送ってきた人物には、なるべく具体的に直近の出来事を知ってると伝えるのが有効的だ。
もちろん私にだって見えないものはある――
それは未来の事だ、未来は確定していない。
大まかな流れは決まっているが、その中でどう感じ取り、どう動くかは当人だけに選ぶ権利がある。
だから私は、占いで死相が出た場合、墓参りを勧める事にしている。
不思議な事だが、墓参りに行った事で死相が消えた人物を何人か見た事がある。
私に霊感などは全くないが、悪魔の証明は出来ない。
この世の全ての事を分かっていると言い張るのは傲慢と言うものだろう。
だからこそ、私は霊的な存在を否定しない、見た事が無かったとしても。
「今日はもう客は来ないかな」
見えない何かに言い訳するように呟きながら、私が商店街を後にしようとすると、背後から声をかけられた。
「あの~すみません~」
振り返るとそこには短パンを履いた、明るい雰囲気の女性が立っていた。
「どうかしました?」
私の問いかけに女性は、目をキラキラとさせながら言った。
「占いをやってる人ですよね!?」
どうやらお客さんのようだ、私は女性の台詞に頷きながら答える。
「そうです、占いますか?」
「はい!お願いします!」
元気の良いお客さんに紙とペンを渡す。
「これに名前を書いて」
「分かりました~!」
”九十三鏡花”
変わった名前に首を傾げながら呟く。
「きゅうじゅうさん?…」
「つくみって読みます!つくみきょうか!」
「珍しい名前だな」
「よく言われます!」
元気に答える彼女の目を私は覗き込んだ。
私の占いに苗字はあまり関係がない。
苗字とはそれこそ先祖の運気のようなモノで、その運気の方向性は日頃の行いで変わりやすいと言うのが私の持論だ。
目を見つめてから数秒後――お客さんの目から黒いモノが溢れ出す。
運気が悪いとかそんなレベルではない、彼女の目から出てるモノは真っ黒で、すぐに対策しないと危ないと言う類のものだ。
彼女はおそらく呪われてる。
「どうですか?私の運勢は!」
無邪気に聞いてくる彼女に私は言った。
「最悪の運気だ…お墓参りとか行ってる?」
「うーん行ってないですね、と言うかお墓があるのかも分からないです」
「分からない?」
「はい、うちは両親が共働きでほとんど家に居ないんですよ!だから皆が普通にやってるお墓参りとかも行く余裕がないと言うか、お墓があるのかも分からないと言うか」
「なるほどね…それなら――」
トルルルゥゥゥ!
「あ、すみません電話取りますね…はい!つくみです!…はい…はい…えー!へび!大丈夫なんですか!?…はい…はい…分かりました!…私が代わりに出ますね!…はい!…了解でーす!…」
お客さんは電話を切るとすぐに財布を取り出す。
「あの~お会計お願いしても良いですか?」
「あ、ああ…500円だがもう良いのか?…」
「はい、ちょっと急用が出来ちゃって」
そう言うとお客さんは500円を私の手に置き、お礼を言った。
「ありがとうございました!また今度詳しく聞かせてくださいね!」
そう言い去っていく彼女の身体から光るモノが落ちた――
「5円玉か…」
私は彼女の運の悪さに苦笑しつつ、五円玉をポケットの中に仕舞う。
今度会う機会があればアドバイスと共にこの5円を返そう…そんな事を考えつつ商店街を後にした。
向かった先は商店街の近くにある古びた神社、昭光神社である。
正月などは人で溢れかえるこの場所も、シーズンを過ぎれば閑古鳥状態だ。
私はポケットから5円玉を取り出し賽銭箱に入れると、手を合わせながら目を閉じた。
「今日も1日ありがとうございました、私と私に関わる者達に幸在らんことを」
ルーティーンで言ってる台詞を声に出し、目を開く。
私は毎日の日課として神社かお寺には必ず行く事に決めている。
私には霊感がないし、神社や寺や墓の前になにかが居ると言う事を断言は出来ない。
しかし、一つだけ言える事がある――それは、参拝者のほとんどが好運気を持っていると言う事だ。
参拝をした事で運気が好転したのか、好転してるから参拝をするのか。
相関関係は分からないが、運気を上げられるのであれば行かないと言う選択肢はない。
たまに『参拝には意味がない、気持ちの問題だから神社には向かわず家で祈るだけで良い、お墓と言う形あるものを作らずとも気持ちが通じていれば先祖は分かってくれる』と言うような精神論を耳にするが、それは少しだけ解釈が違っているように感じる。
もし死後の世界があるとして、霊達が現実世界を透明人間のような形で覗き見れたり、天国か地獄のモニターで人間の世界を見る事が出来たとしても、人間の心までは見通す事が出来ないのではないか?。
生きてる間に獲得出来なかった能力を、死んだ後にだけ都合よく獲得できると言うのも変な話だ。
だとするなら、墓の前で手を合わせて祈ってる人と、手を合わせてるだけの人が、霊の目には同様に映るはず。
神や悪魔の類なら人間の精神を読み解く事も可能かもしれないが――しかし、人間は表に出したモノだけしか認識できないのだ。
だからこそ墓の前に姿を現し、祈りを声に出す事には意味がある。
『先祖なら祈らずとも助けてくれるだろう』と言う考え方もあるが、それも甘ちゃんの考えそうな事だ。
先祖達にどれだけの子孫が居るのか、考えてみれば分かる話だ。
先祖達だって全ての子孫を見守るキャパなど、無いのではないか?。
それこそ、定期的に時間を割いて会いに来てくれなければ、存在を認識すらしていないかもしれない。
それに神や先祖が必ずしも、善良な存在とは限らないのだ、それなりの建前やスジを通さないといけない事もあるだろう。
だからこそ私は、毎日参拝に行く事を決めている。
めんどくさいから行かないと言う選択肢はない。
確固たる意志を持って、行く事を決めているのだ。
だから今日神社に来たのは、さっきの生意気な男の為…などでは断じてない。
「また来ます」と居るかも分からない誰かに伝え、神社を去る私の目の前で流れ星がまたたいた。
研究する者達は様々な要素からそれらを推測し、ある程度の信憑性を持ってそれを定義した。
広大な宇宙の中で、地球や人類が誕生する確率はどれぐらいのモノだろうか?――
人類は考えもつかない着眼点を持って、それらの確率を算出する事も出来るのだろう、定義される事によってのみ存在は証明される。
逆に言えば、存在していようと、定義されるまではオカルトや妄想のような扱いを受けてしまうと言う事だ。
現代でオカルト認定をされていたとしても、科学が発展していった先でそれが証明される可能性はある。
霊や神や悪魔、死後の世界についても、人間はいずれ解き明かしてしまうのかもしれない。
私は特殊能力を持って、この世に生まれた。
何故そんなモノを持って生まれてきたのか、その理由は全く分かっていない。
特殊能力を持った人間が生まれる確率はどれぐらいのモノだろうか?…私の頭では算出する事も出来ない。
ただ一つ言える事は、私の持っている能力は貴重なモノで普通の人間には備わっていないと言う事実だけだ。
私と同じような能力を持ってる人が居ないか、探し回った事もある。
占い師をやっているような人間には、私と同じ能力を持っていると自称する者達が少なからず存在している。
ただ、ほとんどの奴が偽物だ。
占いに関する知識は豊富なのだろうし、それこそ再現性の高いオカルトを持っていて、人の人生を言い当てられる凄腕の占い師も存在はしているが、特殊能力を持っている占い師を私は私しか知らない。
私は名前を認識した人間の目を見る事で、その人の過ごしてきた過去や、現在の運気状態をある程度把握する事ができる。
写真からは読み取れない、鏡でも同様だ。
実物の人間の目を直接覗く事でしか、私の能力は発現されない。
つまり私は、私自身の運気や過去を見る事はできないし、名前を偽っている人間の事を知る事はできない。
占い師をしているような人間は、自身の本名を伏せてる場合も多く、故に本物か偽物かの判断に困る事も多い。
私にしても本名の美樹曇を使わず、死んだ父の名前を使っているのだから、他人の偽名にとやかく言う事はできない。
父は私の能力を一番最初に信じてくれた人でもあり、一番最初に利用した人でもある。
こんな能力を持って生まれたのだから、普通の人生と言う川を流れて行く事は出来なかった。
それでも、この能力はとても便利だ、過去を見る事が出来ると言う事は、その人物が信用できるかどうかが一発で分かると言う事だ。
私は自身の才能をフルに活用しながら、生計を立てている。
こんな仕事をしていると、言いがかりを付けられる事も多い。
先程私に怒声を浴びせてきた男…啓太郎にしたってそうだ。
ああ言う輩は信じたいモノしか信じないだけに留まらず、人に対しても同じモノの見方を強要してくるふしがある。
あいつは『小さい時に手術を受けたなんて誰にでも当てはまる』みたいな事を抜かしていたが、それはやつの人生がありふれたモノでしかないからだ。
ありきたりな人生故にピックアップ出来る部分も少なく、他者と被るイベントも多い。
そのような人生を送ってきた人物には、なるべく具体的に直近の出来事を知ってると伝えるのが有効的だ。
もちろん私にだって見えないものはある――
それは未来の事だ、未来は確定していない。
大まかな流れは決まっているが、その中でどう感じ取り、どう動くかは当人だけに選ぶ権利がある。
だから私は、占いで死相が出た場合、墓参りを勧める事にしている。
不思議な事だが、墓参りに行った事で死相が消えた人物を何人か見た事がある。
私に霊感などは全くないが、悪魔の証明は出来ない。
この世の全ての事を分かっていると言い張るのは傲慢と言うものだろう。
だからこそ、私は霊的な存在を否定しない、見た事が無かったとしても。
「今日はもう客は来ないかな」
見えない何かに言い訳するように呟きながら、私が商店街を後にしようとすると、背後から声をかけられた。
「あの~すみません~」
振り返るとそこには短パンを履いた、明るい雰囲気の女性が立っていた。
「どうかしました?」
私の問いかけに女性は、目をキラキラとさせながら言った。
「占いをやってる人ですよね!?」
どうやらお客さんのようだ、私は女性の台詞に頷きながら答える。
「そうです、占いますか?」
「はい!お願いします!」
元気の良いお客さんに紙とペンを渡す。
「これに名前を書いて」
「分かりました~!」
”九十三鏡花”
変わった名前に首を傾げながら呟く。
「きゅうじゅうさん?…」
「つくみって読みます!つくみきょうか!」
「珍しい名前だな」
「よく言われます!」
元気に答える彼女の目を私は覗き込んだ。
私の占いに苗字はあまり関係がない。
苗字とはそれこそ先祖の運気のようなモノで、その運気の方向性は日頃の行いで変わりやすいと言うのが私の持論だ。
目を見つめてから数秒後――お客さんの目から黒いモノが溢れ出す。
運気が悪いとかそんなレベルではない、彼女の目から出てるモノは真っ黒で、すぐに対策しないと危ないと言う類のものだ。
彼女はおそらく呪われてる。
「どうですか?私の運勢は!」
無邪気に聞いてくる彼女に私は言った。
「最悪の運気だ…お墓参りとか行ってる?」
「うーん行ってないですね、と言うかお墓があるのかも分からないです」
「分からない?」
「はい、うちは両親が共働きでほとんど家に居ないんですよ!だから皆が普通にやってるお墓参りとかも行く余裕がないと言うか、お墓があるのかも分からないと言うか」
「なるほどね…それなら――」
トルルルゥゥゥ!
「あ、すみません電話取りますね…はい!つくみです!…はい…はい…えー!へび!大丈夫なんですか!?…はい…はい…分かりました!…私が代わりに出ますね!…はい!…了解でーす!…」
お客さんは電話を切るとすぐに財布を取り出す。
「あの~お会計お願いしても良いですか?」
「あ、ああ…500円だがもう良いのか?…」
「はい、ちょっと急用が出来ちゃって」
そう言うとお客さんは500円を私の手に置き、お礼を言った。
「ありがとうございました!また今度詳しく聞かせてくださいね!」
そう言い去っていく彼女の身体から光るモノが落ちた――
「5円玉か…」
私は彼女の運の悪さに苦笑しつつ、五円玉をポケットの中に仕舞う。
今度会う機会があればアドバイスと共にこの5円を返そう…そんな事を考えつつ商店街を後にした。
向かった先は商店街の近くにある古びた神社、昭光神社である。
正月などは人で溢れかえるこの場所も、シーズンを過ぎれば閑古鳥状態だ。
私はポケットから5円玉を取り出し賽銭箱に入れると、手を合わせながら目を閉じた。
「今日も1日ありがとうございました、私と私に関わる者達に幸在らんことを」
ルーティーンで言ってる台詞を声に出し、目を開く。
私は毎日の日課として神社かお寺には必ず行く事に決めている。
私には霊感がないし、神社や寺や墓の前になにかが居ると言う事を断言は出来ない。
しかし、一つだけ言える事がある――それは、参拝者のほとんどが好運気を持っていると言う事だ。
参拝をした事で運気が好転したのか、好転してるから参拝をするのか。
相関関係は分からないが、運気を上げられるのであれば行かないと言う選択肢はない。
たまに『参拝には意味がない、気持ちの問題だから神社には向かわず家で祈るだけで良い、お墓と言う形あるものを作らずとも気持ちが通じていれば先祖は分かってくれる』と言うような精神論を耳にするが、それは少しだけ解釈が違っているように感じる。
もし死後の世界があるとして、霊達が現実世界を透明人間のような形で覗き見れたり、天国か地獄のモニターで人間の世界を見る事が出来たとしても、人間の心までは見通す事が出来ないのではないか?。
生きてる間に獲得出来なかった能力を、死んだ後にだけ都合よく獲得できると言うのも変な話だ。
だとするなら、墓の前で手を合わせて祈ってる人と、手を合わせてるだけの人が、霊の目には同様に映るはず。
神や悪魔の類なら人間の精神を読み解く事も可能かもしれないが――しかし、人間は表に出したモノだけしか認識できないのだ。
だからこそ墓の前に姿を現し、祈りを声に出す事には意味がある。
『先祖なら祈らずとも助けてくれるだろう』と言う考え方もあるが、それも甘ちゃんの考えそうな事だ。
先祖達にどれだけの子孫が居るのか、考えてみれば分かる話だ。
先祖達だって全ての子孫を見守るキャパなど、無いのではないか?。
それこそ、定期的に時間を割いて会いに来てくれなければ、存在を認識すらしていないかもしれない。
それに神や先祖が必ずしも、善良な存在とは限らないのだ、それなりの建前やスジを通さないといけない事もあるだろう。
だからこそ私は、毎日参拝に行く事を決めている。
めんどくさいから行かないと言う選択肢はない。
確固たる意志を持って、行く事を決めているのだ。
だから今日神社に来たのは、さっきの生意気な男の為…などでは断じてない。
「また来ます」と居るかも分からない誰かに伝え、神社を去る私の目の前で流れ星がまたたいた。
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