アルシャーン戦記~英雄を約束されし少年は異世界で何を見る?~
第十三話「エルフ・8」
村から出たことがなかったし、荒野のあるこの地域にまで来たことも話に聞いたこともなかったせいかもしれないけどエルフ族がかなり存在する事に改めて驚きを隠せない。
部族連合の発足から約半年。漸くエルフ語での会話が可能になってきたころ、部族連合は5000人を超える大集団にまで成長していた。部族の数は50を超えており、あまりにも数が増えすぎたことで連合の動きを決定する族長会議に出席できる族長は100人以上の部族を束ねる者に限定されてしまったほどだ。それでも30人以上が該当してとても大所帯になっている。
「アルシャーン殿の噂はこの荒野中に広がっております。今の所動きはありませんが1000人以上の部族を束ねる部族もそのうち合流してくるはずですよ」
とはベルゴさんが言っていたけど本当に実現されそうな勢いだ。そうなった部族連合は本当の意味で国家を名乗れる規模になれるかもしれない。
それと、アギト国の襲撃がこれまでに2度行われた。どれも2千程度の兵であったために難なく撃退できているけどそのうち万を超える兵を出してきそうだ。そうなったらこちらも本格的な対処を考えないといけないのかもしれない。
「食料の問題もある」
5000人にまで拡大したという事はこれまでのような狩りでは食料の確保が難しくなる事を意味している。僕が提案した骨粉は成果を発揮して大豊作とまではいかないまでも収穫量が増えたとベルゴさんは言っていたけどそれでも足りない。今は麦畑を何倍にも拡大して食料生産をしているけど確実に足りなくなるだろう。そうなる前にどこかからか確保しないといけない。
「端的に言おう。このままでは食料が尽きる」
そして、定期的に行われている部族会議の場でベルゴさんは食糧問題について話を振った。30人もの人数を収容することは倉庫では難しくなっているのでそれ用の建物が新たに作られていて広々とした空間で行えているけどいずれそれも難しくなりそうだね。
「食料か……。狩りでの確保も安定しているとは言えないからな」
「これまではそれでも問題は無かった。しかし最近は魔獣さえ狩りつくしてしまったかもしれないからな」
「狩人衆から聞いたが荒野の魔獣はほぼ狩りつくしてしまったという。狩りをするなら遠出も視野に入れるべきだろう」
「アギト国への備えはどうする? 遠出をしている時に攻められればひとたまりもないぞ」
人数が増えたことでがやがやと話が方々で起こっている。みんな真剣に考えてくれているけど中々良い案は出ないみたいだ。
現状としては安定した食料確保が難しいという事に尽きる。狩りは既に言われている通り魔獣すら狩りつくしてしまう勢いでいなくなっていて狩りをするなら遠出をして行う必要がある。だけどそれだとアギト国というか国防が疎かになる。狩りをする人たちは兵士も兼ねているから遠出をする事は避けたい。現在の狩人衆は1000人程だから半数は残って半数だけで出るという方法もあるけど遠出したからと言って必ずしも狩りが成功するわけではないからね。
「……僕はこの辺の地理には疎いけどアギト国以外で国と呼べる勢力は存在しないのですか?」
僕がそう声をかければ喧騒は一瞬で静かになる。ケルヴァディオンに乗る僕を尊重してくれているのは凄く分かるけどこういう時はとても恥ずかしい。皆僕に集中するから緊張もするしね。
「アギト国以外、となると私は知りませんね」
「へピロス三国以外か……。知っているか?」
「遥か西にでっかい海みたいな湖があってそこで湖を渡ったやつと話した事がある。アギト国並にでかい国があるけど何年もかかる距離だそうだ」
「それでは意味がないだろう。遠すぎる」
「近い所はやはりないか」
やっぱり国となるとへピロス三国以外には近くに存在しないのか。いや、もしかしたら存在するけど認知していないだけかもしれないけど誰も知らないのなら意味はないだろう。
「アルシャーン殿? いきなりどうしたのですか?」
「いえ、アギト国は論外ですが国ほどの規模があれば交易をしてみるのもいいかと思いまして。でも近くに国がないのなら意味はないですね」
そう、ないのであれば外から手に入れる方法もある。僕が住んでいた村のような規模では交易なんてままならないけど国であれば別だ。交易都市のような場所があれば様々なものを購入する事も出来るだろう。食料を買い込む事も種を購入して育てていく事だってできる。
だけどそれも国があればの話。国がないのならそれも出来ないだろう。オアシスの都市のようにどこの国にも属さない都市もあるかもしれないけどそれだって誰も知らないのなら探さないといけないだろう。
「交易ですか……。確かにそれも一つの手ではありますな」
「だがアルシャーン殿の言う通りアギト国とは敵対している。交易をしに行こうものなら殺されるのではないか?」
「まて、へピロス三国と言う通りアギト国以外にも国は存在する。そちらに行けばいいのではないか?」
あ、確かに。それが一番無難か。
「だがアギト国以外は国名を知っている程度だ。情報がない以上むやみに行くのは危険ではないか?」
「人を送り情報を集めよう。どうせこのままじゃ餓死するだけなら出来る事は何でもするべき」
「賛成だ」
「俺も同意する。直ぐにでも送るべきだ」
「ついでに交易出来そうならしてしまってもいいだろう。貨幣と、現金に出来そうな物を持たせよう」
僕の発言をきっかけに会議は急速に進んでいく。まるでせき止められていた川が解放されたかのようだ。まぁ、100人以上を束ねる族長が集まった会議だし決断力がある人達が集まっているせいでもあるんだろうけどね。
「話は見えたな。ではアギト国を除くへピロス三国、この場合はエルナ王国に誰かを派遣し、情報を獲得する。出来るのであれば食料などを買ってくる。元手が足りないなら何か売れそうな物を持たせる、でよろしいかな?」
「異議なし」
「異論はないぞ」
「賛成だ」
「ではこれは案の一つとして考え、別の解決策を……」
今回の会議では劇的な食糧問題の解決策は出なかったけど解決に向かいそうな具体的な方針が打ち出される事となった。これらが成功すれば部族連合の食糧事情は大きく改善されて更なる勢力拡大を行う事が出来るだろう。そうなればベルゴさん達が望んでいるエルフが虐げられる事のない世界を実現する第一歩を本当の意味で歩めるかもしれないな。
部族連合の発足から約半年。漸くエルフ語での会話が可能になってきたころ、部族連合は5000人を超える大集団にまで成長していた。部族の数は50を超えており、あまりにも数が増えすぎたことで連合の動きを決定する族長会議に出席できる族長は100人以上の部族を束ねる者に限定されてしまったほどだ。それでも30人以上が該当してとても大所帯になっている。
「アルシャーン殿の噂はこの荒野中に広がっております。今の所動きはありませんが1000人以上の部族を束ねる部族もそのうち合流してくるはずですよ」
とはベルゴさんが言っていたけど本当に実現されそうな勢いだ。そうなった部族連合は本当の意味で国家を名乗れる規模になれるかもしれない。
それと、アギト国の襲撃がこれまでに2度行われた。どれも2千程度の兵であったために難なく撃退できているけどそのうち万を超える兵を出してきそうだ。そうなったらこちらも本格的な対処を考えないといけないのかもしれない。
「食料の問題もある」
5000人にまで拡大したという事はこれまでのような狩りでは食料の確保が難しくなる事を意味している。僕が提案した骨粉は成果を発揮して大豊作とまではいかないまでも収穫量が増えたとベルゴさんは言っていたけどそれでも足りない。今は麦畑を何倍にも拡大して食料生産をしているけど確実に足りなくなるだろう。そうなる前にどこかからか確保しないといけない。
「端的に言おう。このままでは食料が尽きる」
そして、定期的に行われている部族会議の場でベルゴさんは食糧問題について話を振った。30人もの人数を収容することは倉庫では難しくなっているのでそれ用の建物が新たに作られていて広々とした空間で行えているけどいずれそれも難しくなりそうだね。
「食料か……。狩りでの確保も安定しているとは言えないからな」
「これまではそれでも問題は無かった。しかし最近は魔獣さえ狩りつくしてしまったかもしれないからな」
「狩人衆から聞いたが荒野の魔獣はほぼ狩りつくしてしまったという。狩りをするなら遠出も視野に入れるべきだろう」
「アギト国への備えはどうする? 遠出をしている時に攻められればひとたまりもないぞ」
人数が増えたことでがやがやと話が方々で起こっている。みんな真剣に考えてくれているけど中々良い案は出ないみたいだ。
現状としては安定した食料確保が難しいという事に尽きる。狩りは既に言われている通り魔獣すら狩りつくしてしまう勢いでいなくなっていて狩りをするなら遠出をして行う必要がある。だけどそれだとアギト国というか国防が疎かになる。狩りをする人たちは兵士も兼ねているから遠出をする事は避けたい。現在の狩人衆は1000人程だから半数は残って半数だけで出るという方法もあるけど遠出したからと言って必ずしも狩りが成功するわけではないからね。
「……僕はこの辺の地理には疎いけどアギト国以外で国と呼べる勢力は存在しないのですか?」
僕がそう声をかければ喧騒は一瞬で静かになる。ケルヴァディオンに乗る僕を尊重してくれているのは凄く分かるけどこういう時はとても恥ずかしい。皆僕に集中するから緊張もするしね。
「アギト国以外、となると私は知りませんね」
「へピロス三国以外か……。知っているか?」
「遥か西にでっかい海みたいな湖があってそこで湖を渡ったやつと話した事がある。アギト国並にでかい国があるけど何年もかかる距離だそうだ」
「それでは意味がないだろう。遠すぎる」
「近い所はやはりないか」
やっぱり国となるとへピロス三国以外には近くに存在しないのか。いや、もしかしたら存在するけど認知していないだけかもしれないけど誰も知らないのなら意味はないだろう。
「アルシャーン殿? いきなりどうしたのですか?」
「いえ、アギト国は論外ですが国ほどの規模があれば交易をしてみるのもいいかと思いまして。でも近くに国がないのなら意味はないですね」
そう、ないのであれば外から手に入れる方法もある。僕が住んでいた村のような規模では交易なんてままならないけど国であれば別だ。交易都市のような場所があれば様々なものを購入する事も出来るだろう。食料を買い込む事も種を購入して育てていく事だってできる。
だけどそれも国があればの話。国がないのならそれも出来ないだろう。オアシスの都市のようにどこの国にも属さない都市もあるかもしれないけどそれだって誰も知らないのなら探さないといけないだろう。
「交易ですか……。確かにそれも一つの手ではありますな」
「だがアルシャーン殿の言う通りアギト国とは敵対している。交易をしに行こうものなら殺されるのではないか?」
「まて、へピロス三国と言う通りアギト国以外にも国は存在する。そちらに行けばいいのではないか?」
あ、確かに。それが一番無難か。
「だがアギト国以外は国名を知っている程度だ。情報がない以上むやみに行くのは危険ではないか?」
「人を送り情報を集めよう。どうせこのままじゃ餓死するだけなら出来る事は何でもするべき」
「賛成だ」
「俺も同意する。直ぐにでも送るべきだ」
「ついでに交易出来そうならしてしまってもいいだろう。貨幣と、現金に出来そうな物を持たせよう」
僕の発言をきっかけに会議は急速に進んでいく。まるでせき止められていた川が解放されたかのようだ。まぁ、100人以上を束ねる族長が集まった会議だし決断力がある人達が集まっているせいでもあるんだろうけどね。
「話は見えたな。ではアギト国を除くへピロス三国、この場合はエルナ王国に誰かを派遣し、情報を獲得する。出来るのであれば食料などを買ってくる。元手が足りないなら何か売れそうな物を持たせる、でよろしいかな?」
「異議なし」
「異論はないぞ」
「賛成だ」
「ではこれは案の一つとして考え、別の解決策を……」
今回の会議では劇的な食糧問題の解決策は出なかったけど解決に向かいそうな具体的な方針が打ち出される事となった。これらが成功すれば部族連合の食糧事情は大きく改善されて更なる勢力拡大を行う事が出来るだろう。そうなればベルゴさん達が望んでいるエルフが虐げられる事のない世界を実現する第一歩を本当の意味で歩めるかもしれないな。
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