魔葬少女
魔葬少女
僕、秋口風香には悩みがある。それは
「んふふ、ふふふふふ……見てよ風香ちゃん、よそ見しないで、ほらほら見て」
隣の席の利根島朱莉(とねじまあかり)さんが毎日のように僕にだけノートを見せてくることだ。
しかも……呪術に関する物だ。
自作と呪術本と聞いた時は、開いた口が塞がらなかった。
ことの発端は三ヶ月前学校の図書館で調べ物をするために借りていた
『ビジュアルでわかる図解陰陽師入門』をちょうど返していた時に利根島さんに話しかけられたのだ。
『ねえ君、陰陽師といえば呪術だよね? 私ね今呪術の本持ってるよ、そう持ってるよ!? 見てみる?!』ととんでもない勢いで見せてきたので当然断ろうと思ったが……返事をしようとした時には見せられていた。
その日から僕は毎日のように利根島さんにノートを見せられている。
そういう光景を毎日見られているわけだからクラスでは僕と利根島さんが付き合っているなどありもしない噂が流れている。
利根島さんの趣味を両親にだけは、絶対にバレるわけにはいかない。
なぜなら、両親も呪術に限らないが、オカルトマニアだからだ。
両親の毎日毎日聞かされるオカルト話は、右から左へ流している。
だが利根島さんの話を流して聴くことが出来ない。
なぜなら利根島さんには行動がついてくるうえに、毎回僕を巻き込むからだ。
今日も迷惑より心配が勝ってしまった結果、
「風香ちゃ~ん、助けて~!!」
利根島さんは、縄で縛られて吊るされている。
なんだったっけ、亀甲縛りだっけ?
ブラーンブラーン。
「暴れないで、今助けるから」
デデーン『ナイスキャッチ』。
ゲームだと、こういう効果音が流れそうだな。
「風香ちゃん、流石の私でもお姫様抱っこは……恥ずかしいんだけど」
「落下中の少女を助けるなら、これがカッコいいでしょ?」
「そうだけど……? 何か声が聞こえない?」
「森なんだし、他に人でもいるんじゃないの?」
僕が耳を澄まして聞こえてきたのは物語上でしか聞いたことのない声だった。
『やめて、やめてください!! 殺さないで!!』
叫び声を聞いた直後
落ちている菓子パンを踏んでしまった時のような勢いの良い破裂音が聞こえた。
「風香ちゃん、これって撮影なのかな?」
「絶対違う、見つかる前に逃げるよ朱莉!!」
僕たちが見たのは、四メートルはあるであろう木より巨大な化け物だった。
僕は利根島さんを担いだまま走った。
どれぐらい走ったのか、分からないが分かることがある。
それは背後から聞こえ続ける断末魔と行き止まりに追い詰められたことが、僕たちの精神をおかしくさせたことだ。
なぜなら
「君たちも、あんな風になりたくなかったら僕と契約して魔法少女になって」
こんな意味の分からないことを言っている小さい生物が見えているからだ。
小さい生物が言っているあんな風とは
『化け物がまるで初めてチーズを裂く子供のような無邪気な顔で人間を裂いている』ことだ。
「朱莉だけでも逃げて」
「逃げ道には化け物がいるのに……どうやって逃げろっていうのよ。風香ちゃん、いつもいつも付き合わせてごめん。誘わなかったら巻き込まなくて済んだのに」
「……今だから言うけど、私も好きで朱莉に付き合ってたから」
「あのさ、そういうのは後でいいからとっとと決めてくんない? 死にたいなら死なせてあげるけど……三秒以内に決めて、三……二……」
「「契約します!!」」
僕たちがそう叫ぶと小さい生物は『それでいいんだ雛(ひな)たち』と囁きながらニヤリと笑った。
次の瞬間、僕と利根島さんの身体は光を放った。
僕と利根島さんの服はゴスロリ風に変化していた。
小さな生物は僕たちに向けて叫んだ。
「この力ならアイツを葬れる。四肢をもいだ後、目玉を潰せ!! 君たちなら出来る!!」
「そういう残酷なのは嫌だ」
利根島さんが、何度言っても結局は契約の時と同様に脅された。
僕は化け物を一撃で葬るために首を捻じ切ったが、再生した。
その光景を見ていた小さな生物は僕たちを再び脅した。
僕たちが怯えていると、満面の笑みで葬り方を教えてくれた。
その方法は、残酷そのものだった。
『化け物が苦痛に耐えきれず再生しなくなるまで攻撃を続ける』
聞いた瞬間僕は今まで感じたことのない吐き気を催した。
どうやら"魔法"とやらを使えば苦痛を増やし葬りやすくなるらしい。
その言葉を聞いた利根島さんは、いつも僕に見せていた本を取り出し読み上げた。
すると化け物が悶え始めた。
畳み掛けるように僕は小さい生き物に教えてもらった魔法を使った。
藁人形が化け物を覆い隠した後、無数の巨大な五寸釘が突き刺さった。
これを"心霊魔法"と呼ばそうだ。
中から大量の血液が流れてきたのを見た小さな生物は『成仏完了』とそう呟いた。
「これから君たちには、成仏出来なかった魔の生き物略して"魔物"を葬って霊にしてもらう、言っておくけど拒否権はないよ。僕は契約霊のナルミ……元魔物だよ、よろしくね」
「私は利根島朱莉、十六歳で高校二年生です」
冷静を装ってるけど利根島さんの声震えてる
「大丈夫だよ朱莉、僕も一緒だから」
「そういうのいいからさ、とっとと自己紹介しろよカスが」
我慢、我慢
「分かった。僕は秋口風香、十七歳。朱莉と学年は同じです、よろしく」
この物語は僕と利根島さんが、魔物に堕ちるまでの物語だ。
おしまい
「んふふ、ふふふふふ……見てよ風香ちゃん、よそ見しないで、ほらほら見て」
隣の席の利根島朱莉(とねじまあかり)さんが毎日のように僕にだけノートを見せてくることだ。
しかも……呪術に関する物だ。
自作と呪術本と聞いた時は、開いた口が塞がらなかった。
ことの発端は三ヶ月前学校の図書館で調べ物をするために借りていた
『ビジュアルでわかる図解陰陽師入門』をちょうど返していた時に利根島さんに話しかけられたのだ。
『ねえ君、陰陽師といえば呪術だよね? 私ね今呪術の本持ってるよ、そう持ってるよ!? 見てみる?!』ととんでもない勢いで見せてきたので当然断ろうと思ったが……返事をしようとした時には見せられていた。
その日から僕は毎日のように利根島さんにノートを見せられている。
そういう光景を毎日見られているわけだからクラスでは僕と利根島さんが付き合っているなどありもしない噂が流れている。
利根島さんの趣味を両親にだけは、絶対にバレるわけにはいかない。
なぜなら、両親も呪術に限らないが、オカルトマニアだからだ。
両親の毎日毎日聞かされるオカルト話は、右から左へ流している。
だが利根島さんの話を流して聴くことが出来ない。
なぜなら利根島さんには行動がついてくるうえに、毎回僕を巻き込むからだ。
今日も迷惑より心配が勝ってしまった結果、
「風香ちゃ~ん、助けて~!!」
利根島さんは、縄で縛られて吊るされている。
なんだったっけ、亀甲縛りだっけ?
ブラーンブラーン。
「暴れないで、今助けるから」
デデーン『ナイスキャッチ』。
ゲームだと、こういう効果音が流れそうだな。
「風香ちゃん、流石の私でもお姫様抱っこは……恥ずかしいんだけど」
「落下中の少女を助けるなら、これがカッコいいでしょ?」
「そうだけど……? 何か声が聞こえない?」
「森なんだし、他に人でもいるんじゃないの?」
僕が耳を澄まして聞こえてきたのは物語上でしか聞いたことのない声だった。
『やめて、やめてください!! 殺さないで!!』
叫び声を聞いた直後
落ちている菓子パンを踏んでしまった時のような勢いの良い破裂音が聞こえた。
「風香ちゃん、これって撮影なのかな?」
「絶対違う、見つかる前に逃げるよ朱莉!!」
僕たちが見たのは、四メートルはあるであろう木より巨大な化け物だった。
僕は利根島さんを担いだまま走った。
どれぐらい走ったのか、分からないが分かることがある。
それは背後から聞こえ続ける断末魔と行き止まりに追い詰められたことが、僕たちの精神をおかしくさせたことだ。
なぜなら
「君たちも、あんな風になりたくなかったら僕と契約して魔法少女になって」
こんな意味の分からないことを言っている小さい生物が見えているからだ。
小さい生物が言っているあんな風とは
『化け物がまるで初めてチーズを裂く子供のような無邪気な顔で人間を裂いている』ことだ。
「朱莉だけでも逃げて」
「逃げ道には化け物がいるのに……どうやって逃げろっていうのよ。風香ちゃん、いつもいつも付き合わせてごめん。誘わなかったら巻き込まなくて済んだのに」
「……今だから言うけど、私も好きで朱莉に付き合ってたから」
「あのさ、そういうのは後でいいからとっとと決めてくんない? 死にたいなら死なせてあげるけど……三秒以内に決めて、三……二……」
「「契約します!!」」
僕たちがそう叫ぶと小さい生物は『それでいいんだ雛(ひな)たち』と囁きながらニヤリと笑った。
次の瞬間、僕と利根島さんの身体は光を放った。
僕と利根島さんの服はゴスロリ風に変化していた。
小さな生物は僕たちに向けて叫んだ。
「この力ならアイツを葬れる。四肢をもいだ後、目玉を潰せ!! 君たちなら出来る!!」
「そういう残酷なのは嫌だ」
利根島さんが、何度言っても結局は契約の時と同様に脅された。
僕は化け物を一撃で葬るために首を捻じ切ったが、再生した。
その光景を見ていた小さな生物は僕たちを再び脅した。
僕たちが怯えていると、満面の笑みで葬り方を教えてくれた。
その方法は、残酷そのものだった。
『化け物が苦痛に耐えきれず再生しなくなるまで攻撃を続ける』
聞いた瞬間僕は今まで感じたことのない吐き気を催した。
どうやら"魔法"とやらを使えば苦痛を増やし葬りやすくなるらしい。
その言葉を聞いた利根島さんは、いつも僕に見せていた本を取り出し読み上げた。
すると化け物が悶え始めた。
畳み掛けるように僕は小さい生き物に教えてもらった魔法を使った。
藁人形が化け物を覆い隠した後、無数の巨大な五寸釘が突き刺さった。
これを"心霊魔法"と呼ばそうだ。
中から大量の血液が流れてきたのを見た小さな生物は『成仏完了』とそう呟いた。
「これから君たちには、成仏出来なかった魔の生き物略して"魔物"を葬って霊にしてもらう、言っておくけど拒否権はないよ。僕は契約霊のナルミ……元魔物だよ、よろしくね」
「私は利根島朱莉、十六歳で高校二年生です」
冷静を装ってるけど利根島さんの声震えてる
「大丈夫だよ朱莉、僕も一緒だから」
「そういうのいいからさ、とっとと自己紹介しろよカスが」
我慢、我慢
「分かった。僕は秋口風香、十七歳。朱莉と学年は同じです、よろしく」
この物語は僕と利根島さんが、魔物に堕ちるまでの物語だ。
おしまい
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