ホラー短編集『情報提供求ム』

空わかめ

『カズさん』

あー、バイト関係なら俺もある。
奇しくも俺も呑み屋だった。

つっても、全国チェーンじゃなくて個人経営のお店。
店長とその奥さん、あとは何人かのバイトで回してるこじんまりとした、でもアットホームなお店。
常連さんも良い人ばっかだったな。
酔っ払ってるのもあるけど、たまに小遣いとかくれたりさ。

で、だ。
大学2年の時、店長が体調崩しちゃって暫く店閉めることになったんだよね。
店長が悪い訳じゃないけど、遊びたい盛りの大学生である俺には死活問題。
ゆるい・シフト自由効く・臨時収入とまかないありで、友達と客として行くとおまけしてくれちゃったり、な良いバイト先。

で、どうしたもんかな~。
再開まで短期のバイトでも探すかな~って思ってたら、常連さんの一人が声を掛けてきた。
年の頃は40代くらい。
かっちりしたスーツにメガネ、ザ・出来るサラリーマンって感じの人。
みんなには【カズさん】って呼ばれたな。
みんなが酔っ払ってガハガハ笑ってるのを微笑んで見てる落ち着いた人。

で、その人が良ければツテでバイト紹介するよ、って言われた。
仕事の内容はお留守番。
正直なにそれって思ったね。

要は指定した家に数日居るだけ。
家にいれば何しててもいい。
寝てようが、ゲームしてようが、友達呼ぼうが何でもいい。

ただし、電気はつけっぱ、あと風呂の水道は出しっぱにしろって。
あと期間中外に出たり、人が来ても対応せず無視しろって。

期間は1週間。
で、バイト代は10万。
期間中の飯は雇い主が手配してくれるって。
破格すぎね…?

まあ、流石にクソほど怪しいんでさ。
俺も怖くなっちゃって。
単位ヤバイんで、バイト休み中は勉強頑張るなんて適当な理由つけて断った。

話は変わるけど、占有屋って知ってる?

まあいいや。
結論から言う。

カズさん、ヤクザだった。

店再開したあと店長から聞いた。
あのあとカズさん見なくなったけど、もし同意してたら俺どうなってたんだろうね。

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