殺人犯ですが助けてください、呪われたクソゲーがクリアできません!チャンネル登録お願いします

原案:狩野英孝 著者:架神恭介 キャラクター原案:倉持由香 プロデュース:株式会社ビーグリー

エピローグ:『スタッフロール』②

 そう、科学コックリさんだ。

 急速に解明されつつある霊科学の最新知見を元に作られたデジタルデバイスで、霊界との交信成功率は実に95.6%。
俺が持つ最新モデルのKoK-09はフル充電で連続稼働8時間、防水・防霊、さらにラップ音ノイズキャンセリングとマルチチャネリング機能が付いた圧倒的スペックで、もちろんクソ高いが、ドクターキリコがポケットマネーで買ってくれた。

「顧問の庵藤さん、庵藤さん、どうぞおいでください」

 俺が適切な手順を踏むと、外部顧問の庵藤圭司が召喚される。
ドクターキリコがテクニカルアドバイスを求めると、庵藤はデバイス上のデジタル10円玉を動かして、プラグラムに関する意見を示していく。
そして、それを俺がいつものモノマネで音声再現するのである。

 俺のモノマネと、真剣にメモを取るドクターキリコ。
そんな様子を見てヘルアネゴはいつもニコニコしている。
彼女から提示された条件がまさにこれだったのだ。

「庵藤顧問どうもありがとう。さて、今回のフィードバックはチームに伝えるとして……。医者として断言するが、ここから先はプロットが固まらなければ作業を進められない」

 ドクターキリコが目で俺に訴えてくる。
それは背景やモデリング作業も同じであろう。
総合プロデューサーである古賀さんも同意するように頷いて、

「若色さん、進捗はいかがですか? 前回のプロットが全ボツになってから、だいぶ考える時間はあったと思いますけど」

 非難がましい目でシナリオ担当の俺を見てくる……。

「いや、やってるから! 大丈夫だって、ちゃんと第二案を考えてきたからさ!」

 そう言って、俺は書き溜めていた自信作を発表するべく、手元のノートブックを広げた。
そして、その瞬間、俺は激しい怒りに駆られて絶叫した!

「ぎゃああああぁァッ! あのクソ! また、やりやがったぁ――ッッ!!!!」

 ファック! 
ノートに溢れ返る血のような赤い文字!! 
ノートの1ページ目がびっしりと埋め尽くされている!

「お前が作れお前が作れお前が作れお前が作れお前が作れお前が作れ文句があるならお前が作れお前が作れお前が作れお前が作れお前が作れ文句があるならお前が作れお前が作れお前が作れお前が作れ文句があるならお前が作れお前が作れお前が作れお前が作れお前が作れ文句があるならお前が作れ」

 俺の悲鳴混じりの絶叫を聞いて、オンライン会議の出席者たちが一斉に顔をしかめた。

「うわぁ……またですか」
「医者として断言するが、迷惑この上ない」
「本当に勘弁して欲しいですね……」
「お姉ちゃんがいつもごめんなさい……」

 ノートの1ページ目には俺が苦労して作り上げた全体プロットが書かれていたはずなのに、何も見えない! 
読めない! 

そして、具体的なシーンを脚本化していた2ページ目以降を開くと……ここもだ! 
血のような赤文字で念入りに悪霊からのダメ出しが刻み込まれている!

「設定が有名病院ホラーのパクリ、新奇性がない、やり直し」
「キャラの行動に違和感。この反応はありえない」
「怪異の悲しい真実がありきたり」
「このキャラいる? 消したら?」
「ジャンプスケアはやめろつってんだろうが、呪い殺すぞ」

 俺のシナリオの一行ごとにネチネチした文句が書き込まれている……。
そう、俺達は実はあの時から今まで、ずっと古賀瑛子の霊に呪われ続けているのだ……。

 俺たちによる怒涛の『S/Witch』レビューの後、俺たちは全員、病院送りとなった。
だが、奇跡的に一命は取り留めた。
他に呪われた人たちも助かったらしい。
俺はホッと胸を撫で下ろした。

「そうか……。なんだかんだで古賀瑛子は今度こそ成仏したんだな。たとえ酷評であっても、自分の作品がプレイされ、感想がもらえたことで心残りがなくなったんだな」

 そう思って納得していた俺たちだったが、しかし、問題はその後だ。

 退院して家や拘置所に帰ると、部屋中に赤い手形と大量の文字が溢れかえっていたのだ。 

「お前が作れ」
「文句があるならお前が作れ」
「お前がやってみろや」
「マジでやれや、呪い殺すぞ」

 字形から溢れ出す程の激しい憎悪と呪い! 
古賀瑛子は成仏したわけでも何でもなかった。
単に憎悪の対象が俺達に絞られただけだったのだ! 
コイツ、クソすぎる!!

 それでも俺たちはしばらく無視していた。
付き合ってられるか! 

すると、日常的に頭痛、肩こり、吐き気、腹痛、手足のしびれ、動悸などの地味な霊現象が続発した。
ポルターガイスト現象で皿を割られたり、テレビを見てる時に消されるのもイラッと来る。

真夏に窓が勝手に開くのも蚊が入ってきてうぜえ! 
俺達のQOLはダダ下がりだ! 
あの時にレビューした俺たち全員にこの嫌がらせめいた霊現象が現れていた。

 俺たちは話し合った。
結果、古賀瑛子の執拗な嫌がらせに屈して、渋々ながらホラーゲームを作り始めたのだ。
その月例オンライン会議が今日だった。
拘置所にいる古賀さんは、本来、ノートパソコンなど持ち込めないが、状況が状況なので特別に許可されていた。

 俺は真っ赤に染まったノートブックを手にワナワナと震えた。

「オラァ! クソ瑛子! 文句があるなら完成品をプレイしてから言え! これは俺達の作品であってテメーのゲームじゃねーんだよ!」

 俺はブチギレてマウスを叩きつけて叫んだが、途端に俺の両の鼻穴から凄まじい勢いで鼻血が噴き出した。

「ウオォォ、失血でクラクラする!」

 クソが! 
コイツ、最近はカジュアルに呪いやがる! 

「ど、どうします、若色さん? 今回のシナリオもお姉ちゃん、気に入らないみたいですけど……」
「はああァ!? 霊のダメ出しなんぞ知ったことか! このまま続けるぞ!」

 そう叫んだ俺の目の前で、ノートブックにさらに血のような赤文字で何かが書き込まれていく。

「アホ」
「バカ」
「クソ」

 俺のこめかみがピクピクと震えた。
ク、クソはどっちだ……。
俺の怒りはもはや頂点に達していた。
拳を握り固めて、俺は叫んだ。

「続行! 断固続行だ! 俺達のホラーで瑛子をギャフンと言わせてアイツを天国に叩き込むぞ!」

                                       完

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