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原案:狩野英孝 著者:架神恭介 キャラクター原案:倉持由香 プロデュース:株式会社ビーグリー

エピローグ:『スタッフロール』①

昭和85年9月7日20時00分  ――事件から一年後――

「はい、では皆さん、揃ったようですので、定例会議を始めたいと思います」

 パソコンの画面の中で、古賀あすなさんがオンライ会議の司会を務めている。
俺はボロボロのアパートの一室でパソコンに向かい、今月の進捗を報告するべく手元にノートを用意した。

 古賀さんは上下共に地味なジャージ姿だ。
彼女は今、拘置所にいる。
庵藤圭司殺人容疑で拘禁中である。

 かくいう俺も、有罪判決を受けて一時は拘留されていた。
罪状は「要扶助者・死体等不申告の罪」。
俺の思い込みとはいえ、一時は庵藤を殺したと思い、死体を隠蔽しようとしていたのだから仕方がない。
もし仮に実行していたら「死体遺棄罪」となっていたところだった。

 検察は俺のこともなんとか立件しようとして、色々と揉めたが、最終的には「すぐに死体を通報しなかった」という点のみで立件されて、軽犯罪ではあるものの有罪判決が出ることになった。

判決は拘留20日。
前科が付いてしまったが、これはもうしょうがない。 

 俺の拘留自体はすぐに終わったが、庵藤の一件は広く知れ渡ってしまったので、結局、俺は事務所から契約を打ち切られ、出演予定も全て真っ白になってしまった。

見事、無職になってしまったわけだが、しかし、今の状況を考えれば、俺がキャリアを失ったことなんて、本当にどうでも良い小さなことだと思えてくる。

「いやぁ~。大変な世の中になっちゃいましたね」

 アロハシャツに身を包み、デッキチェアに寝そべりながら呑気にそんなことを言ってるのは、ニラネギことオカルト評論家の葱沢藤一郎だ。
トロピカルジュースをすするニラネギの後ろには水着姿で戯れる子供たちの姿が垣間見えた。
コイツ……また豪華客船に乗ってやがるな……。

「医者として断言するが、フーッ、骨休みもせんと体に毒だ」

 浴衣姿で座椅子にもたれ掛かり、優雅に葉巻の煙を吐き出したのは、ドクターキリコこと精神科医の桐谷公典だ。
コイツの背景は瀟洒な和室だ。
コイツはコイツでまた超高級温泉宿に連泊してやがる。

 ニラネギもドクターキリコも時の人となっていた。
一時期は連日のように各種取材が訪れ、テレビや雑誌でも引っ張りだこ。
緊急出版した二人の共著書籍は1000万部を超える大ベストセラーとなり、今では左団扇の毎日を送っている。
俺や古賀さんの現状とは大違いだ。

 まあ、それも当然だろう。
なにせ「古賀瑛子事件」は人類史上初めて、霊の存在が大規模かつ客観的に確認された大事件だったのだ。

あの時、古賀瑛子に呪われた人は実に1000万人を超えていた。
1000万人が同時に心霊体験をしたのだから、これはもう誰もが認めざるを得なかった。
霊と呪いの実在は、世界がひっくり返るくらいの驚天動地の出来事だったのだ。

 人々の死生観や世界観が突き崩され、伝統宗教も教義の修正を余儀なくされた。
そういった精神面での混乱は大いにあったが、しかし、人間の強欲さも底知れなかった。

「人体に干渉できるということは呪いは一種のエネルギーでは?」という視点から、心霊現象は即座に科学的観察対象となり、全世界の心霊スポットに大規模調査が入ったのだ。

 結果、霊エネルギーの解明は急速に進み、今も毎日のように歴史的大発見が報じられ続けている。
新エネルギーの発見により、エネルギー問題、食糧問題、地球温暖化問題などが一挙に解決の方向に向かった。

一時期の精神的混乱は、科学的大発見による楽観論に完全に塗りつぶされた。
要するにみんな完全に浮かれまくっていた。
未曾有の好景気に世界中が湧き続けていた。

 世の中はそんな状況である。
元々、オカルト評論家であったニラネギと医者のドクターキリコ。

特殊な立場から「古賀瑛子事件」に深く関わった二人は、霊と呪いの世界を知るための最重要ソースと見なされて、あれから半年間、寝る暇もない程に各種メディアに引っ張り出されたのだ。

二人は抜け目なかった。
チャンスを活かして見事に立ち回り、ブームに乗じて一財産作った。
そして、ひとしきり熱も覚めて来た今になって、二人とも悠々自適な生活を謳歌し始めたのだ。

 俺の方にももちろん取材はあったのだが、当時は裁判を控えて勾留されていたし、あいつらのように上手く立ち回れなかった。
それが俺とあいつらの今の差だ。

だがまあ、しょうがない。
それにあの二人だって良いことばかりってワケじゃない。
その証拠にあいつらは今、このオンライン会議に出席を余儀なくされているのだから。

「えーっと……。まず、私の方の進捗から。舞台となる廃病院のラフスケッチができました」

 いくつかのスケッチ画像が画面共有されて、皆が「おおっ」と湧き上がった。
このスケッチを提出したのはヘルアネゴこと庵藤えるだ。
庵藤圭司の実姉で本業はイラストレーターらしい。
本職だけあって流石の出来栄えだ。

 彼女は、事件直後は古賀あすなのことが許せなかったようだが、俺がある条件を飲むことで、この共同作業への参加を決意してくれた。
今ではなし崩し的に古賀あすなのことも許し始めているようだ。

 ニラネギが拍手しながらヘルアネゴの力作をねぎらった。

「いやあ、イイですねぇ。とても雰囲気が出てます。……で、私の方ですが、今は主人公の3Dモデルを制作中です」

 続いてニラネギがモデリングの進捗を発表する。
ニラネギはどうも以前より趣味で3Dモデリングを嗜んでいたようで、いまは手ずからキャラモデルを制作中だ。
素人とは思えない凝った造形で、正直、『S/Witch』のモデリングなんかより遥かに良くできている。

「フヒヒ! ボロ稼ぎしたお金でマシンも最高レベルのものを揃えましたからねえ!」

 ニラネギ、楽しそうだな、コイツ……。

「では、次だ。我が班のプログラム作業も順調に進んでいる」

 次はプログラム担当のドクターキリコだ。
彼は莫大な資力を使って優秀な人材をかき集め、プログラムチームのディレクションを行っている。

 作業スピードで言えば彼のセクションが圧倒的で、ブレストでゲームシステムのアイデアが出たら、翌週には即プロトタイプ版が示される程だ。
当時から薄々思っていたが、コイツ、めちゃくちゃ有能だよな。

「医者として断言するが、ここで外部顧問の意見を伺いたい」

 ドクターキリコがそう言って俺に目配せをする。
俺は頷いて、机の下からあるものを取り出した。

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