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原案:狩野英孝 著者:架神恭介 キャラクター原案:倉持由香 プロデュース:株式会社ビーグリー

10-4.Review

「もしかして……アレを使うんじゃないか? 指輪を……」

 そう、警備員室で入手した結婚指輪だ。
12階に落ちていたものを警備員が拾っていたのだ。

「古賀さん、俺、見えてきた……怪異の背景が……悲しい真実が……」

 俺は自分の推測を語った。

 母親が赤ちゃんを捨てたということは、それが望まれない妊娠・出産だったことを示している。
ということは、母親は相手の男性と破局していたのではないか? 
二対の結婚指輪が捨てられていたのも、それを示唆している。
ならば、だ……。

「指輪を返すんだ。母親の霊に。幸せだった結婚時代、あり得たはずの幸福な家族……それを思い起こさせれば……きっと成仏する」

 今、手に入れているアイテムを見返しても、その可能性が一番高い。
少なくとも手斧で霊とバトルするのは絶対に違うだろう。

 だが、そうだとすると、結局、ヒロインの存在は何なんだ? 
まだ何かが欠けている気がする。
俺はまだ何かのピースに辿り着けていない……。

「ニラネギ、お前の力を貸してくれ。こういう場合、ヒロインはどういう関係性が考えられるんだ?」
「…………」
「ニラネギ?」
「………………」

 どうした?

 ニラネギから返答がない。
おい……?

「ひッ……ひぃいいぃぃッッ!!!」

 その瞬間、絹を引き裂くような悲鳴が轟いた。
ニラネギの声だ。
それから苦しげな悲鳴や喘ぐような声が途切れなく聞こえ続ける。

「お、おい、どうした!? ニラネギ! おい、ニラネギ!」
「わ、若色さん、これ見て!!」

 古賀さんが慌ててコメント欄を指し示し、その書き込みを見た俺はギョッとして目を見開いた。

「ぐりばーチャンネルの配信者が! さっき、倒れました!」

 ぐりばー……日報の確認に協力してくれた配信者か!

 彼は顔出しで『S/Witch』をプレイしていたが、ニラネギと同じように悲鳴を上げた後、目から大量出血して倒れたのだという。
まさか……

 まさか、もうタイムリミットなのか!?

「おい、ニラネギ、生きてるか! ニラネギ!」
「だ、ダメかも……です……」
「ニラネギ!」

 息も絶え絶えの声が微かに聞こえてきた。
まだ生きている! 
だが、ニラネギは検証の過程で、俺たちよりも写真を詳細に観察していたのだろう。
だから、俺たちよりも早くその時が来てしまったのか……!

 それからもコメント欄には配信者が倒れたという報告が相次いだ。
というか、書き込み自体、めちゃくちゃ減ってきてないか? 
え、まさか、みんな、もう……。

「わ、若色、さん……!」

 古賀さんが震える指で俺の顔を指し示した。

ポタッ……。

キーボードの上に何かが落ちた。
血だ。

反射的に目の下を拳で拭うと、俺の腕が真っ赤に染まった。
古賀さんを見ると、彼女の両目からもすごい量の血がドクドクと流れ出ている。
やばい。

 やばい、やばい、やばい急がなければ……!

 もう悠長に考えてる時間はない。
"開かずのテナント"へと俺は踏み込んだ。
すると、天井点検口がパカッと開いて、うごめく黒いビニール袋がいくつもボトボトと落ちてくる。

なんでだよ! 
赤ちゃんは一人じゃなかったのかよ! 
六つ子かよ!

「ドーン――ッッッ!!」

 すると、次の瞬間に、なぜかテナント内に存在する井戸の封印が吹き飛んだ。
中から白いワンピース姿で長髪の女の幽霊が這い出てくる。
クソッ……なんだその安易なオマージュ、ムカつくぜ!

 その女の五体に黒いビニール袋が纏わりついていき、それを取り込むように女の姿が変貌していく。
オギャア、オギャアと泣く赤子の顔が頭や胸、腹や膝などに寄生する。
同時に女の全身は醜く爛れ、ブクブクと肥大化したモンスターと化した。
そして女は長く伸びた両腕を振り回しながら、

「キシャーッ!!!」

 と叫んで襲いかかってきた。
おい、今までのJホラーな雰囲気はどこいった! 
突然モンスターパニック展開するんじゃねえ!

「ゴボーォッ!!!」

 同時に俺の口から大量吐血。
噴水のように口から血が勢いよく溢れ出した。

 ウワーッ、死ぬ、死んでしまう! 
もうツッコミ入れてる場合じゃない!

 俺は女の前に進み出ると、急いでアイテム欄を開き、結婚指輪を選んで「使う」を押した。
幸せな結婚生活を思い出してくれーッ!

 すると、見よ! 
ビンゴだ! 
女の前に主人公がうやうやしく指輪を差し出したぞ! 
きっとこれで……!

「キシャーッ!!!」

 女が指輪を弾き飛ばした。
返す刀で主人公の頭を一刀両断! 
ゲームオーバー!

 ゲ、ゲェーッ、話が違うじゃねえか! 
俺は慌ててオープニングムービをスキップし、ロード! 
再び入室すると、また女の変身ムービーが始まる。
おい、庵藤! 
これもスキップ可能にしとけよ!

 指輪はダメだった。
俺の推理が間違っていた。
まさか、手斧で戦えってことなのか!? 
手斧を選んで「使う」を押すと、手斧を装備できたが……

「キシャーッ!!!」

 ダメだ、歯が立たない! 
死んだ!! 
ゲ―ムオーバー!

「ど、ど、ど、どうすればいいんだ! え、これはアクションの問題なのか!? 手斧で頑張って倒すしかないのか!?」

 俺の混乱は頂点に達していた。
目と口からは血がダラダラ溢れ出ているし、出血のせいか視界も霞み始めている。
コメント欄になにかヒントがないかと見てみるも、ほとんど書き込みがない。

みんな……既にタイムリミットなのか??

「み、み、見て……見て……」

 俺の隣で倒れていた古賀さんが、震える手で前方の闇を指差す。
それに気付いて俺もギョッとした。

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