殺人犯ですが助けてください、呪われたクソゲーがクリアできません!チャンネル登録お願いします
9-1.RTA
昭和84年9月3日1時49分 ――配信再開から32分経過――
「だから早く! 連絡しろって! 言ってたんですよバカァー!!」
ニラネギが甲高い声で俺を罵倒してくる。
コメント欄だともどかしいから音声ツールで繋いだのだが……。
いきなりそんなことを言われると俺もムッとしてしまって、
「仕方ないだろ!」
言い返してしまう。
「こっちは殺人事件に巻き込まれたんだぞ! 俺の身にもなってくれよ!」
「そうですよ! 若色さんは危うく殺されるところだったんですから!」
あの、古賀さん……。
味方してくれるのは嬉しいんだけど、キミがそれを言うのはどうかと思うぞ。
そんな古賀さんは俺の拘束をようやく解いてくれていた。
事態が緊迫していることは誰の目にも明らかだったからだ。
ニラネギは苛立ちを必死に抑え込んで話を進めた。
「とにかく……手短に伝えますね。結論から言うと、『配信すると死ぬゲーム』の認識が間違っていたんです。呪いのトリガーは配信などではなく……」
「……写真?」
「それです!」
ニラネギが意外そうな声を出したが、これは俺も薄々勘付いていたところだ。
古賀さんの姉――、古賀瑛子さんが何に恨みを抱くかと言えば、それはゲーム中に隠されていたあの『写真』しかないだろう。
ニラネギは続けた。
「私がそれに気付いたのは、SNSを検索して、あの『写真』の言及を見つけた時でした」
数時間前の配信から今に至るまでの調査結果をニラネギは語り始める。
「私は『写真』に言及したアカウントを複数見つけて、その後の各アカウントの投稿を追ったんです。その結果……」
――全てのアカウントの更新が止まっていた。
と、彼は言うのだ。
「サンプル数は19件。全て3ヶ月以内に更新が止まっていました。単にSNSをやめただけの可能性もありますが、内12件のアカウントでは遺族による死亡報告がなされており、死亡が確認されました」
簡易的ではあるが、ニラネギはプレイヤーの追跡調査を行っていたのだ。
と、そこまで聞いて、俺の中にふと思い浮かんだことがあった。
確か、庵藤の書き込みに、こんな内容があったはずだ。
「文句を言ったが、なぜか逆上されて「これもやっとけ!」と予約者リストを押し付けられた」
ひょっとすると、庵藤が探偵社に調査依頼していたのは、『S/Witch』予約者全員の追跡調査なのではないか?
庵藤の手元にはまだその予約者リストのデータがあったのだ。
そして、庵藤は『S/Witch』の実況配信が決まった後、この作品が「配信すると死ぬゲーム」と噂されていることを知った。
そうだ、庵藤はこうも書き込んでいた。
「予約した友達が複数人、立て続けに不幸に遭った」
それを思い出した庵藤は、「もしや」と思い、探偵社に予約者の安否確認を依頼したのではないか。
結果、庵藤の不安は的中した……。
調査結果によると、あのリストのおよそ二割が同年中に死亡していた。
「これはただの都市伝説ではない」。庵藤はそう結論付けた……。
そんな俺の思考をよそにニラネギが話を続ける。
「全てのアカウントの停止前の投稿を確認したところ、ある共通した傾向が確認できました。
『女からの電話』『部屋を女の霊が横切る』『首吊りした女の霊を目撃』『血まみれの手形』そういった現象の発生です。
これに焦燥感、衝動的行動、視野狭窄、希死念慮などが伴います。
その結果、衝動的な自殺や殺人未遂、暴行事件なども発生しています。
これが呪いの影響なのか、怪奇現象に悩まされ精神が不安定になったためかは分かりませんが……」
確か、あのリストによれば二割の死亡者の他に、入院や服役なども一割強いたはずだ。
それらも呪いの影響なのか?
予約購入者はゲームへのモチベーションも高かったはずだ。
あの劣悪な操作性を押してでもプレイヤーの三割が写真に辿り着いたというのは……十分に考えられる。
俺はふと古賀さんを見た。
……ひょっとして、古賀さんもそうなのか?
今回の急拵えの殺人計画も、俺の部屋の扉をドンドン叩いた件も。
普通ではありえない。
まさか、彼女にも呪いの影響が……。
古賀さん自身にも何か思うところがあったのだろうか。
彼女は顔を青くして押し黙っている。
そして、ここからニラネギは意外な方向へと舵を切った。
「電話、部屋での女の目撃、首吊り自殺の霊、手形…………それらから私はあるエピソードを思い出しました」
「エピソード?」
「はい、匿名の実話怪談です。修学旅行中の男子がお手製のエロ本を回し読みした結果、自殺や失踪が相次いだという話なのですが……」
エロ本……回し読み……?
待て、確かそれ、庵藤の閲覧履歴にあったぞ。
「その怪談でも全く同じ怪異が発生していたんです。……そして、そのエロ本に収められた写真の一枚は『隣町の廃墟で見つけた』ものなのですが、調べたところ、どうもその『隣町の廃墟』というのが……」
そうだ……三階の毒島の部屋は……。
誰かに荒らされた形跡があった……。
アルバムから写真が一枚、不自然に抜き取られていた……。
「SNSと実話怪談――、以下は、その二つの情報からの私の推測となります。まず一つ。呪いの強さは暴露量に比例します」
すなわち「写真にどれだけ触れたか」。
部分的な写真よりも完全に近い写真を見た方が強く、一瞬見るよりもまじまじと見つめたり何度も見た方が呪いが強くなる。
各アカウントが報告していた写真への言及の度合いと、その後の更新停止に至るまでの期間からニラネギはそれを推測したという。
……てことは、おっと、ヤバくないか、俺?
だいぶ見ちゃったぞ。
ゲーム中に隠されていた写真は全部見たんじゃないか……?
バッチリ暴露してないか??
「そして、二つ目、こちらがより重要な推測なのですが……」
ニラネギの次の言葉には俺も天を仰ぐことになった。
ニラネギは言ったのだ。
この呪いにまつわる様々な怪奇現象、その中でも、目からの出血は――、
「だから早く! 連絡しろって! 言ってたんですよバカァー!!」
ニラネギが甲高い声で俺を罵倒してくる。
コメント欄だともどかしいから音声ツールで繋いだのだが……。
いきなりそんなことを言われると俺もムッとしてしまって、
「仕方ないだろ!」
言い返してしまう。
「こっちは殺人事件に巻き込まれたんだぞ! 俺の身にもなってくれよ!」
「そうですよ! 若色さんは危うく殺されるところだったんですから!」
あの、古賀さん……。
味方してくれるのは嬉しいんだけど、キミがそれを言うのはどうかと思うぞ。
そんな古賀さんは俺の拘束をようやく解いてくれていた。
事態が緊迫していることは誰の目にも明らかだったからだ。
ニラネギは苛立ちを必死に抑え込んで話を進めた。
「とにかく……手短に伝えますね。結論から言うと、『配信すると死ぬゲーム』の認識が間違っていたんです。呪いのトリガーは配信などではなく……」
「……写真?」
「それです!」
ニラネギが意外そうな声を出したが、これは俺も薄々勘付いていたところだ。
古賀さんの姉――、古賀瑛子さんが何に恨みを抱くかと言えば、それはゲーム中に隠されていたあの『写真』しかないだろう。
ニラネギは続けた。
「私がそれに気付いたのは、SNSを検索して、あの『写真』の言及を見つけた時でした」
数時間前の配信から今に至るまでの調査結果をニラネギは語り始める。
「私は『写真』に言及したアカウントを複数見つけて、その後の各アカウントの投稿を追ったんです。その結果……」
――全てのアカウントの更新が止まっていた。
と、彼は言うのだ。
「サンプル数は19件。全て3ヶ月以内に更新が止まっていました。単にSNSをやめただけの可能性もありますが、内12件のアカウントでは遺族による死亡報告がなされており、死亡が確認されました」
簡易的ではあるが、ニラネギはプレイヤーの追跡調査を行っていたのだ。
と、そこまで聞いて、俺の中にふと思い浮かんだことがあった。
確か、庵藤の書き込みに、こんな内容があったはずだ。
「文句を言ったが、なぜか逆上されて「これもやっとけ!」と予約者リストを押し付けられた」
ひょっとすると、庵藤が探偵社に調査依頼していたのは、『S/Witch』予約者全員の追跡調査なのではないか?
庵藤の手元にはまだその予約者リストのデータがあったのだ。
そして、庵藤は『S/Witch』の実況配信が決まった後、この作品が「配信すると死ぬゲーム」と噂されていることを知った。
そうだ、庵藤はこうも書き込んでいた。
「予約した友達が複数人、立て続けに不幸に遭った」
それを思い出した庵藤は、「もしや」と思い、探偵社に予約者の安否確認を依頼したのではないか。
結果、庵藤の不安は的中した……。
調査結果によると、あのリストのおよそ二割が同年中に死亡していた。
「これはただの都市伝説ではない」。庵藤はそう結論付けた……。
そんな俺の思考をよそにニラネギが話を続ける。
「全てのアカウントの停止前の投稿を確認したところ、ある共通した傾向が確認できました。
『女からの電話』『部屋を女の霊が横切る』『首吊りした女の霊を目撃』『血まみれの手形』そういった現象の発生です。
これに焦燥感、衝動的行動、視野狭窄、希死念慮などが伴います。
その結果、衝動的な自殺や殺人未遂、暴行事件なども発生しています。
これが呪いの影響なのか、怪奇現象に悩まされ精神が不安定になったためかは分かりませんが……」
確か、あのリストによれば二割の死亡者の他に、入院や服役なども一割強いたはずだ。
それらも呪いの影響なのか?
予約購入者はゲームへのモチベーションも高かったはずだ。
あの劣悪な操作性を押してでもプレイヤーの三割が写真に辿り着いたというのは……十分に考えられる。
俺はふと古賀さんを見た。
……ひょっとして、古賀さんもそうなのか?
今回の急拵えの殺人計画も、俺の部屋の扉をドンドン叩いた件も。
普通ではありえない。
まさか、彼女にも呪いの影響が……。
古賀さん自身にも何か思うところがあったのだろうか。
彼女は顔を青くして押し黙っている。
そして、ここからニラネギは意外な方向へと舵を切った。
「電話、部屋での女の目撃、首吊り自殺の霊、手形…………それらから私はあるエピソードを思い出しました」
「エピソード?」
「はい、匿名の実話怪談です。修学旅行中の男子がお手製のエロ本を回し読みした結果、自殺や失踪が相次いだという話なのですが……」
エロ本……回し読み……?
待て、確かそれ、庵藤の閲覧履歴にあったぞ。
「その怪談でも全く同じ怪異が発生していたんです。……そして、そのエロ本に収められた写真の一枚は『隣町の廃墟で見つけた』ものなのですが、調べたところ、どうもその『隣町の廃墟』というのが……」
そうだ……三階の毒島の部屋は……。
誰かに荒らされた形跡があった……。
アルバムから写真が一枚、不自然に抜き取られていた……。
「SNSと実話怪談――、以下は、その二つの情報からの私の推測となります。まず一つ。呪いの強さは暴露量に比例します」
すなわち「写真にどれだけ触れたか」。
部分的な写真よりも完全に近い写真を見た方が強く、一瞬見るよりもまじまじと見つめたり何度も見た方が呪いが強くなる。
各アカウントが報告していた写真への言及の度合いと、その後の更新停止に至るまでの期間からニラネギはそれを推測したという。
……てことは、おっと、ヤバくないか、俺?
だいぶ見ちゃったぞ。
ゲーム中に隠されていた写真は全部見たんじゃないか……?
バッチリ暴露してないか??
「そして、二つ目、こちらがより重要な推測なのですが……」
ニラネギの次の言葉には俺も天を仰ぐことになった。
ニラネギは言ったのだ。
この呪いにまつわる様々な怪奇現象、その中でも、目からの出血は――、

コメント
コメントを書く