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8-2.真相
「キミは驚いたはずだ。殺すつもりだった俺が、なぜか逆に『人を殺した』と言い始めたのだから……」
俺の「自供」のせいで配信のコメント欄はさらに混迷を深めていく。
だが、仕方ない。
事実として俺は「人を殺した」と思ったし、「それを隠蔽しようともした」。
ハッキリ言って芸能人としてはもう終わりだ。
仕方ない。
ここに至れば俺のキャリアうんぬんなんて言ってられない。
でも流石に辛いから、コメント欄からはしばらく目を逸らしておこう……。
困惑し、震える古賀さんへと俺は向き直った。
「俺は警察への自首を口にした……。キミは思ったはずだ。『もう手段を選んでいられない』『自分の手で殺すしかない』と。俺が過失致死罪で刑務所に入れば手出しできなくなる。キミはプログラマーであるあんでぃろを恨んでいた。だが、姉の件と何の関係もないトラブルで俺が刑務所に入って、それで復讐が済んだとはキミには思えなかった。ならば、警察が来る前に自分の手で片を付けるしかない」
だから、古賀さんは隠蔽の話を持ち出したのだ。
配信を続行しろと言い続けていたのも時間稼ぎだ。
古賀さんが配信スタジオに到着するまでの時間稼ぎ……。
当日は雨で交通網がマヒしていた。
俺も大慌てだったが、古賀さんにとっても歯がゆい時間だっただろう。
俺は古賀さんに命を狙われてることなど露知らず、「古賀さん早く来てくれ~!」と祈りながら、必死に庵藤のフリを続けていたんだ。
「だが、キミは焦りすぎていた。あんなに扉をドンドン叩いて。怖くなった俺は逃げ出した」
「自首を……また言い出した時は、本当に困ったわ……」
「そうだろうね。だからキミは庵藤を生き返らせるしかなかった」
これはもちろん比喩だ。
実際の庵藤はあの部屋で死んだままだ。
庵藤が生きていることにすれば俺の自首を食い止められる。
古賀さんから部屋の写真を送られたが、あんなもの、死体の位置を少しズラすだけで簡単に偽装できた。
トリックですらない。
でも、「死体が動くわけがない」という先入観のせいですっかり騙されてしまった。
「もちろん、キミが病院に確認に行ったというのもウソだ。実際はすぐにここに向かったんだろう」
移動中も尾行されていたのかもしれない。
何者かの視線を俺はずっと感じていたのだ。
ここに一向にスタッフが来ないのも当然で、事務所に連絡をしたというのもウソだ。
「部屋に死体は存在しない――、そんなキミのウソに気付いたのはついさっきのことだ。キミは僅かなミスを犯していた。古賀さん、キミは言ったね。『顔は見逃しても、あの変なシャツは見逃さない』と――」
「言った……かしら……」
「ああ。覚えてないだろう。キミにとっては、それくらい小さなミスだったんだよ」
俺が「庵藤の顔を見逃した可能性は?」と聞いた時の彼女の返答だ。
確かに庵藤の異様なセンスのシャツはよく目立つ。
だが、よく考えると、おかしいのだ。
俺が彼女に送った庵藤の写真は温泉旅行の――、俺と庵藤が浴衣姿で部屋で酒を飲んでいた時のモノだ。
だから、彼女が庵藤のシャツのセンスなんて知るはずがない。
それを知っているのは、彼女が庵藤の死体を直で見たからに他ならない。
「キミは俺をあんでぃろだと思っていた。姉を侮辱し、死に追いやったプログラマーだと思っていた。だから、キミは腹を立てていた。キミは何度も俺に尋ねてたね。『心当たりがないか』『思い当たることがないか』と――」
「思い当たることなんて……あるわけなかったのね……」
「そう。俺は『S/Witch』と何の関係もない。何度聞かれても本当に何も知らないんだ。けど、キミからすれば、罪を犯しながらも無関係を装う俺のことが許せなかったんだろう。だから俺をここへと誘導した……」
「お姉ちゃんが自殺した……この現場に来れば……いくらなんでも、思い出してくれるんじゃないか、って………それで、もし、反省の言葉でも聞ければ」
もしかすると、古賀さんは俺の殺害を思い留まったのかもしれない。
けれど、俺からは毛ほども反省の様子が見られなかった。
当然だ。
何もしてないし、何も知らないのだから。
そして、今の古賀さんには当然、俺を殺す理由がない。
「俺を殺せない……って。そうか、そういうことなんですね……」
「ああ」
もし、配信をしていなければ……。
古賀さんには俺を殺して口封じを図るという選択肢があった。
けれど今は配信中で、この状況は皆に知られており、口封じの意味すらない。
もっとも、古賀さんが自分の保身のためだけに俺を殺すような人だとは俺は今でも思っていないのだけど。
「一向に罪悪感を覚えない俺に業を煮やして……キミは俺に契約書を確認するよう促した」
「け、契約書……?」
「そうだ。キミが電話で言ってただろう。古賀瑛子の名前を思い出させるために……。俺はキミに誘導され契約書と履歴書を見つけた。もっとも履歴書の顔も名前も塗り潰されていたが」
「え、待って? このビルに社員の契約書があるの?」
ん……?
ちょっと待て、古賀さん。急に何を言い出した?
しらばっくれてる?
いや、それにしても、このタイミングはおかしいだろ?
少し不思議な感じがしたが、俺は続けた。
古賀さんに伝えなければならない、最も重要な事実がこの後に控えていたからだ。
「キミが本当に狙っていたのは庵藤圭司だ。だが、キミは間違って俺を殺そうとした。その結果として、キミは間違って庵藤圭司を殺した。けれど、そもそも庵藤を殺そうとしたことが間違いだったんだ。なぜなら……」
この一言は、彼女にとってもっとも衝撃的なものとなるだろう。
「庵藤は社長を止めようとしていたのだから」
古賀さんの顔が真っ青に変わった。
そう、この事実こそが今回の悲劇の核心なのだ。
「社長は自殺の直前に、自暴自棄になってキミのお姉さんの……その」
「写真……」
「……うん。写真を、公開しようとした。配信で」
自殺直前の精神状態とは言え、社長がクズ過ぎることには間違いない。
「けれど、それを止めるために駆けつけて、社長を説得したのが」
「ま、待って……。まさか、そんな……ウソよ……」
「その時のやり取りが……このパソコンにメールで残されている。……確認するか?」
古賀さんは返事もせず、沈黙したままその場で泣き崩れた。
古賀さんが姉の仇だと思い込んでいた庵藤だが、実際は瑛子さんの数少ない味方だったのだ。
けど、よりにもよって、その庵藤を、古賀さんは……。 
「古賀さん、キミは、"庵藤圭司"に殺害予告を送ったね?」
「えっ……」
俺の「自供」のせいで配信のコメント欄はさらに混迷を深めていく。
だが、仕方ない。
事実として俺は「人を殺した」と思ったし、「それを隠蔽しようともした」。
ハッキリ言って芸能人としてはもう終わりだ。
仕方ない。
ここに至れば俺のキャリアうんぬんなんて言ってられない。
でも流石に辛いから、コメント欄からはしばらく目を逸らしておこう……。
困惑し、震える古賀さんへと俺は向き直った。
「俺は警察への自首を口にした……。キミは思ったはずだ。『もう手段を選んでいられない』『自分の手で殺すしかない』と。俺が過失致死罪で刑務所に入れば手出しできなくなる。キミはプログラマーであるあんでぃろを恨んでいた。だが、姉の件と何の関係もないトラブルで俺が刑務所に入って、それで復讐が済んだとはキミには思えなかった。ならば、警察が来る前に自分の手で片を付けるしかない」
だから、古賀さんは隠蔽の話を持ち出したのだ。
配信を続行しろと言い続けていたのも時間稼ぎだ。
古賀さんが配信スタジオに到着するまでの時間稼ぎ……。
当日は雨で交通網がマヒしていた。
俺も大慌てだったが、古賀さんにとっても歯がゆい時間だっただろう。
俺は古賀さんに命を狙われてることなど露知らず、「古賀さん早く来てくれ~!」と祈りながら、必死に庵藤のフリを続けていたんだ。
「だが、キミは焦りすぎていた。あんなに扉をドンドン叩いて。怖くなった俺は逃げ出した」
「自首を……また言い出した時は、本当に困ったわ……」
「そうだろうね。だからキミは庵藤を生き返らせるしかなかった」
これはもちろん比喩だ。
実際の庵藤はあの部屋で死んだままだ。
庵藤が生きていることにすれば俺の自首を食い止められる。
古賀さんから部屋の写真を送られたが、あんなもの、死体の位置を少しズラすだけで簡単に偽装できた。
トリックですらない。
でも、「死体が動くわけがない」という先入観のせいですっかり騙されてしまった。
「もちろん、キミが病院に確認に行ったというのもウソだ。実際はすぐにここに向かったんだろう」
移動中も尾行されていたのかもしれない。
何者かの視線を俺はずっと感じていたのだ。
ここに一向にスタッフが来ないのも当然で、事務所に連絡をしたというのもウソだ。
「部屋に死体は存在しない――、そんなキミのウソに気付いたのはついさっきのことだ。キミは僅かなミスを犯していた。古賀さん、キミは言ったね。『顔は見逃しても、あの変なシャツは見逃さない』と――」
「言った……かしら……」
「ああ。覚えてないだろう。キミにとっては、それくらい小さなミスだったんだよ」
俺が「庵藤の顔を見逃した可能性は?」と聞いた時の彼女の返答だ。
確かに庵藤の異様なセンスのシャツはよく目立つ。
だが、よく考えると、おかしいのだ。
俺が彼女に送った庵藤の写真は温泉旅行の――、俺と庵藤が浴衣姿で部屋で酒を飲んでいた時のモノだ。
だから、彼女が庵藤のシャツのセンスなんて知るはずがない。
それを知っているのは、彼女が庵藤の死体を直で見たからに他ならない。
「キミは俺をあんでぃろだと思っていた。姉を侮辱し、死に追いやったプログラマーだと思っていた。だから、キミは腹を立てていた。キミは何度も俺に尋ねてたね。『心当たりがないか』『思い当たることがないか』と――」
「思い当たることなんて……あるわけなかったのね……」
「そう。俺は『S/Witch』と何の関係もない。何度聞かれても本当に何も知らないんだ。けど、キミからすれば、罪を犯しながらも無関係を装う俺のことが許せなかったんだろう。だから俺をここへと誘導した……」
「お姉ちゃんが自殺した……この現場に来れば……いくらなんでも、思い出してくれるんじゃないか、って………それで、もし、反省の言葉でも聞ければ」
もしかすると、古賀さんは俺の殺害を思い留まったのかもしれない。
けれど、俺からは毛ほども反省の様子が見られなかった。
当然だ。
何もしてないし、何も知らないのだから。
そして、今の古賀さんには当然、俺を殺す理由がない。
「俺を殺せない……って。そうか、そういうことなんですね……」
「ああ」
もし、配信をしていなければ……。
古賀さんには俺を殺して口封じを図るという選択肢があった。
けれど今は配信中で、この状況は皆に知られており、口封じの意味すらない。
もっとも、古賀さんが自分の保身のためだけに俺を殺すような人だとは俺は今でも思っていないのだけど。
「一向に罪悪感を覚えない俺に業を煮やして……キミは俺に契約書を確認するよう促した」
「け、契約書……?」
「そうだ。キミが電話で言ってただろう。古賀瑛子の名前を思い出させるために……。俺はキミに誘導され契約書と履歴書を見つけた。もっとも履歴書の顔も名前も塗り潰されていたが」
「え、待って? このビルに社員の契約書があるの?」
ん……?
ちょっと待て、古賀さん。急に何を言い出した?
しらばっくれてる?
いや、それにしても、このタイミングはおかしいだろ?
少し不思議な感じがしたが、俺は続けた。
古賀さんに伝えなければならない、最も重要な事実がこの後に控えていたからだ。
「キミが本当に狙っていたのは庵藤圭司だ。だが、キミは間違って俺を殺そうとした。その結果として、キミは間違って庵藤圭司を殺した。けれど、そもそも庵藤を殺そうとしたことが間違いだったんだ。なぜなら……」
この一言は、彼女にとってもっとも衝撃的なものとなるだろう。
「庵藤は社長を止めようとしていたのだから」
古賀さんの顔が真っ青に変わった。
そう、この事実こそが今回の悲劇の核心なのだ。
「社長は自殺の直前に、自暴自棄になってキミのお姉さんの……その」
「写真……」
「……うん。写真を、公開しようとした。配信で」
自殺直前の精神状態とは言え、社長がクズ過ぎることには間違いない。
「けれど、それを止めるために駆けつけて、社長を説得したのが」
「ま、待って……。まさか、そんな……ウソよ……」
「その時のやり取りが……このパソコンにメールで残されている。……確認するか?」
古賀さんは返事もせず、沈黙したままその場で泣き崩れた。
古賀さんが姉の仇だと思い込んでいた庵藤だが、実際は瑛子さんの数少ない味方だったのだ。
けど、よりにもよって、その庵藤を、古賀さんは……。 
「古賀さん、キミは、"庵藤圭司"に殺害予告を送ったね?」
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