殺人犯ですが助けてください、呪われたクソゲーがクリアできません!チャンネル登録お願いします
8-1.真相
昭和84年9月3日1時38分 ――配信再開から21分経過――
「俺にはもう全てが分かっています。だから。もうやめましょう。古賀さん――……」
目の前の人物は瞬時固まった後、諦めたように覆面を取った。
その下から現れたのは、俺が予想していた通りのモノ――、
古賀あすなの顔だった。
俺の目を見ながら、震える声で彼女は呟いた。湧き上がる憎悪を堪えながら……。
「ずいぶん……冷静なんですね」
そして、彼女は手の中のバールを強く握りしめる。
「あなたは縛られている。そして、私は顔を出して認めた。これがどういう意味か分かってます? 私は逮捕なんて恐れていない。どうあっても、あなたを殺す。私だと分かったって何の意味もないんですよ」
俺は返答した。もちろん、至って冷静に。
「キミには俺は殺せない」
「どうして? あなたを殺すか殺さないか、私が決めるんですよ?」
古賀さんが小馬鹿にしたようにクスッと笑った。
挑発と取ったのだろうか。
だが、俺の言葉は断じて挑発などではない。
単なる事実だ。
古賀あすなには俺を殺す理由がない。
そして、今行われている、この配信こそが俺の身の安全を保証する。
ノートパソコンをちらりと見るとコメント欄は当然困惑に包まれていた。
「なんだこれ?」
「演劇?」
「演出凝りすぎ」
「いや、でもガチっぽくないか」
「医者として断言するが、これは事件性がある」
事件性を見抜いている視聴者は一定数いる。
おそらく既に警察に通報されているはずだ。
とはいえ、この場所を特定できるかは別の話だ。
古賀さんがくすっと小さく笑った。
「でも、不思議ね。どうして……私だって分かったの?」
「キミは大きなミスを犯した」
「ミス?」
「ああ……だが、そんなことより、先に言うべきことがある」
俺は真っ直ぐに彼女の目を見つめて言った。
「庵藤圭司を殺したのはキミだ」
えっ?
と震えて、古賀さんがギョッとしたような表情を見せた。
それはそうだろう。
彼女に「殺害した自覚」などなかったはずだから。
「古賀さん、キミが本当に殺そうとしたのは俺だ。だが、キミは誤って……」
困惑している。
古賀さんが目を見開いて、困惑の眼差しで俺を見ている。
「キミは誤って、正しく庵藤を……あんでぃろを殺したんだ」
これを伝えた時の彼女の反応は極めて複雑なものだった。
彼女はキョトンとした。
そして、その直後に、きっと何かを悟ったのだろう。
だからこそ、複雑な反応をした。
古賀さんはある意味、正しく成し遂げていたのだ。
しかし、それは彼女の間違いだったし、今も間違っていた。
「庵藤圭司はずっと俺の代わりに配信をしていた。だから、キミは庵藤を俺と誤認した」
「ま、待って……。でも庵藤は、若色さんが、殴って殺したと……」
「最初は俺もそう思っていた」
目をつむる。
まぶたの裏に庵藤の死に顔が蘇る。
真っ赤な顔でタラコ唇で死んでいた。
人間って変な顔で死ぬもんだな、と思ったものだ。
だが、違う。
庵藤の本当の死因は……
「アナフィラキシーショックだ」
皮膚の発赤、唇の腫れ……いずれもその典型症状だ。
「つまりは、毒殺。古賀さん、キミが差し入れてくれたお茶に毒が仕込まれていた」
「…………」
「だが、あのお茶は俺も飲んでいた。妙にうまかったのを覚えている。それに毒なんて素人が気軽に手に入れられるものでもない。ただ、アイツを……庵藤を殺す分には簡単だった。そう」
――蕎麦湯だ。
古賀さんはいつもの差し入れの麦茶に蕎麦湯を混ぜていたのだ。
妙に味わい深くてうまいと思ったが、蕎麦湯と麦茶って合うもんなんだな……。
庵藤は重度の蕎麦アレルギーだった。
俺も子供の頃は卵アレルギーだったし、一度あんな顔になったことがある。
俺はそれを思い出したのだ。
庵藤は俺のフリをして配信していた。
蕎麦アレルギーの件も俺の体質かのように話していた。
古賀さんも配信でそれを知ったはずだ。
実際、古賀さんは俺の下に来た蕎麦の仕事を一件断っている。
だから、古賀さんは蕎麦湯を混ぜた……。
俺があれを配信中に飲めばアナフィラキシーショックが発生し、少なくとも配信は中断する。
理想的な展開は配信中に死亡することだっただろう。
そうすれば……
『S/Witch』は"配信すると死ぬゲーム"として確固たる地位を築くことになる。
「キミは俺を呪いに見せかけて殺そうとした。その目的は……アレの拡大を防ぐため。そうだね?」
今も配信中なので故人の名誉のために詳細は伏せた。
だが、本人には十分に伝わっているはずだ。
古賀さんは伏し目がちで震えている。
「お姉ちゃんの――……」
そう、写真だ。
彼女の姉の淫らな光景が切り抜かれた写真……。
社長が無理矢理に入れたという静止画……おそらくはリベンジポルノの一環だ。
社長は彼女に本気で入れ込んで、関係の継続を望んだが、古賀さんの姉――、古賀瑛子さんはそれを拒否したのだろう。
彼女の名前は説明書から、顔は社長のアルバムから確認した。
そっくりだった。
たぶん双子だ。
古賀さんは肉親の名誉のために、その写真を人目から隠したかった。
「UMBRELLA」の配信も止めたいし、できることなら後続のプレイヤーが生まれないようにしたかった。
『S/Witch』を呪いのゲームに仕立て上げれば、みんなプレイを忌避するのではないか……彼女はそう考えたのだ。
もっとも、そんないわくつきのゲーム、逆にみんな触りたくなりそうなものだから、彼女の目論見通りになるかは俺には疑問だ。
だが、彼女には大きな誤算があった。
「俺にはもう全てが分かっています。だから。もうやめましょう。古賀さん――……」
目の前の人物は瞬時固まった後、諦めたように覆面を取った。
その下から現れたのは、俺が予想していた通りのモノ――、
古賀あすなの顔だった。
俺の目を見ながら、震える声で彼女は呟いた。湧き上がる憎悪を堪えながら……。
「ずいぶん……冷静なんですね」
そして、彼女は手の中のバールを強く握りしめる。
「あなたは縛られている。そして、私は顔を出して認めた。これがどういう意味か分かってます? 私は逮捕なんて恐れていない。どうあっても、あなたを殺す。私だと分かったって何の意味もないんですよ」
俺は返答した。もちろん、至って冷静に。
「キミには俺は殺せない」
「どうして? あなたを殺すか殺さないか、私が決めるんですよ?」
古賀さんが小馬鹿にしたようにクスッと笑った。
挑発と取ったのだろうか。
だが、俺の言葉は断じて挑発などではない。
単なる事実だ。
古賀あすなには俺を殺す理由がない。
そして、今行われている、この配信こそが俺の身の安全を保証する。
ノートパソコンをちらりと見るとコメント欄は当然困惑に包まれていた。
「なんだこれ?」
「演劇?」
「演出凝りすぎ」
「いや、でもガチっぽくないか」
「医者として断言するが、これは事件性がある」
事件性を見抜いている視聴者は一定数いる。
おそらく既に警察に通報されているはずだ。
とはいえ、この場所を特定できるかは別の話だ。
古賀さんがくすっと小さく笑った。
「でも、不思議ね。どうして……私だって分かったの?」
「キミは大きなミスを犯した」
「ミス?」
「ああ……だが、そんなことより、先に言うべきことがある」
俺は真っ直ぐに彼女の目を見つめて言った。
「庵藤圭司を殺したのはキミだ」
えっ?
と震えて、古賀さんがギョッとしたような表情を見せた。
それはそうだろう。
彼女に「殺害した自覚」などなかったはずだから。
「古賀さん、キミが本当に殺そうとしたのは俺だ。だが、キミは誤って……」
困惑している。
古賀さんが目を見開いて、困惑の眼差しで俺を見ている。
「キミは誤って、正しく庵藤を……あんでぃろを殺したんだ」
これを伝えた時の彼女の反応は極めて複雑なものだった。
彼女はキョトンとした。
そして、その直後に、きっと何かを悟ったのだろう。
だからこそ、複雑な反応をした。
古賀さんはある意味、正しく成し遂げていたのだ。
しかし、それは彼女の間違いだったし、今も間違っていた。
「庵藤圭司はずっと俺の代わりに配信をしていた。だから、キミは庵藤を俺と誤認した」
「ま、待って……。でも庵藤は、若色さんが、殴って殺したと……」
「最初は俺もそう思っていた」
目をつむる。
まぶたの裏に庵藤の死に顔が蘇る。
真っ赤な顔でタラコ唇で死んでいた。
人間って変な顔で死ぬもんだな、と思ったものだ。
だが、違う。
庵藤の本当の死因は……
「アナフィラキシーショックだ」
皮膚の発赤、唇の腫れ……いずれもその典型症状だ。
「つまりは、毒殺。古賀さん、キミが差し入れてくれたお茶に毒が仕込まれていた」
「…………」
「だが、あのお茶は俺も飲んでいた。妙にうまかったのを覚えている。それに毒なんて素人が気軽に手に入れられるものでもない。ただ、アイツを……庵藤を殺す分には簡単だった。そう」
――蕎麦湯だ。
古賀さんはいつもの差し入れの麦茶に蕎麦湯を混ぜていたのだ。
妙に味わい深くてうまいと思ったが、蕎麦湯と麦茶って合うもんなんだな……。
庵藤は重度の蕎麦アレルギーだった。
俺も子供の頃は卵アレルギーだったし、一度あんな顔になったことがある。
俺はそれを思い出したのだ。
庵藤は俺のフリをして配信していた。
蕎麦アレルギーの件も俺の体質かのように話していた。
古賀さんも配信でそれを知ったはずだ。
実際、古賀さんは俺の下に来た蕎麦の仕事を一件断っている。
だから、古賀さんは蕎麦湯を混ぜた……。
俺があれを配信中に飲めばアナフィラキシーショックが発生し、少なくとも配信は中断する。
理想的な展開は配信中に死亡することだっただろう。
そうすれば……
『S/Witch』は"配信すると死ぬゲーム"として確固たる地位を築くことになる。
「キミは俺を呪いに見せかけて殺そうとした。その目的は……アレの拡大を防ぐため。そうだね?」
今も配信中なので故人の名誉のために詳細は伏せた。
だが、本人には十分に伝わっているはずだ。
古賀さんは伏し目がちで震えている。
「お姉ちゃんの――……」
そう、写真だ。
彼女の姉の淫らな光景が切り抜かれた写真……。
社長が無理矢理に入れたという静止画……おそらくはリベンジポルノの一環だ。
社長は彼女に本気で入れ込んで、関係の継続を望んだが、古賀さんの姉――、古賀瑛子さんはそれを拒否したのだろう。
彼女の名前は説明書から、顔は社長のアルバムから確認した。
そっくりだった。
たぶん双子だ。
古賀さんは肉親の名誉のために、その写真を人目から隠したかった。
「UMBRELLA」の配信も止めたいし、できることなら後続のプレイヤーが生まれないようにしたかった。
『S/Witch』を呪いのゲームに仕立て上げれば、みんなプレイを忌避するのではないか……彼女はそう考えたのだ。
もっとも、そんないわくつきのゲーム、逆にみんな触りたくなりそうなものだから、彼女の目論見通りになるかは俺には疑問だ。
だが、彼女には大きな誤算があった。
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