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6-5.肝試し
「もしもし」
電話の向こうの声は……うん、やっぱり古賀さんだ。
しかし、声に元気がないな。
いやまあ、そりゃ疲れるよね。
俺だっていい加減疲れてる。
ただ、ちょっとボソボソ喋り過ぎなのは困るな。
何を言ってるのか、よく聞き取れない。
つき、の……?
つぎ……の?
そうして俺が困っていると、
「ホテル……」
古賀さんはもう少しだけハッキリした声を出してくれた。
あー……なるほど?
「次のホテル」ね。
そりゃそうか。
古賀さんもここに向かってるワケだが、うら若き女子に野宿なんて出来ないだろう。
ここで合流した後、近くに泊まる場所はあるか、ということか。
「確か、バスの中でホテルを見たけど、ここからじゃ車でもないと行けない距離だよ」
「車……」
「そうそう、車。タクシーを配車すれば、まあ行けるだろうけど」
でも、いいのかな?
あのホテル、明らかに、その……ラブホだったよな。
ああいうのって女子一人で泊まれるものなんだろうか?
俺も一緒にってのは色々問題あるよなぁ。
それを遠回しに伝えると、古賀さんも困ってしまったのか、うう……とか、あぅう……とか苦しげに唸っている。
いや、そんな泣きそうな声を出されてもな。
俺だって困ってるんだよね。
「写真……どうして……」
「え?」
あれ?
俺、アルバムを見つけた話ってもうしたっけ?
あれ?
んん?
まあ、いっか……。
「そうそう、三階で社長の毒島氏のものらしきアルバムを見つけてさ。ちょっと中を見させてもらったんだけど」
「ひどい……人のすることじゃない……」
「ええっ……で、でも、しょうがないじゃん!」
確かに人の写真を勝手に見るのはダメだけどさ!
今は非常事態なんだから……!
そんなこと言ったら、古賀さんがここに入れって言ったのもどうかと思うよ!
不法侵入じゃん!
「でさ! ちょっと気になったことがあって。サイドソフトの社員の名前一覧とかって、どこかで確認できないかな?」
「契約……」
「あ!」
そうか、契約書か……!
社と社員との間に雇用契約が結ばれているはずだから契約書があっても不思議ではない。
この部屋のどこかに保管されてるかも……。
しかし、古賀さんの即答は流石だな。
頼りになるぜ。
「古賀さん、ありがとう。すごくいいヒントだよ!」
「どうして? なんで……」
「えっ!? いや、なんでと言われても……。さすが目の付け所が違うというか、俺にはない鋭い視点の持ち主というか」
「私が……間違ってた……」
「いや、いやいや、そんなことないよ! えっ、何言ってんだよ!」
古賀さん、これ、完全に落ち込んでるなぁ。
頼むよ、さっきまでの冷静沈着な古賀さんに戻ってくれよ。
俺は必死に、古賀さんがいかに頼り甲斐があり、細かい気配りの出来る敏腕マネージャーであるかを力説したが、古賀さんはずっとブツブツと恨み言のようなことを呟き続けている。
ど、どうしたんだよ、古賀さん。何があったんだ!?
さらに古賀さんはヒートアップしていき、不穏な言葉すら口にし始めた。
「私は……裏切られた……もう、死にたい……」
「ま、待って、古賀さん! 落ち着いて。今回は俺、本当に迷惑かけたよ! 古賀さんが怒るのもよく分かる。それに関しては本当に申し訳ない!」
古賀さんにそこまで言わせてしまうなんて胸が痛い。
俺は痛切に、心からの言葉で訴えかけた。
「でも、俺! これを乗り越えたら、これからも古賀さんと一緒にやっていきたいんだ! だから、そんなこと言わないでくれ。今回の件、古賀さんは何も悪くない。俺のことはいくら責めてもいい。だから、絶対に自分を責めないでくれ!!」
「許さない!」
「はあぁっ!?」
「絶対に許さない!!!!」
古賀さんは急に声を荒らげた後、ブツリと一方的に電話を切った。
……ええっ!?
いや、俺のことはいくら責めてもいいとは言ったけど。
ちょ、ちょっと…………責めすぎじゃない?
いくらなんでもさあ!
いや、申し訳ないとは思ってるけど……。
その気持ちは本当だけど……そんな絶対に許さないとか、ちょっと古賀さんも言い過ぎじゃないの?
なんか声も無茶苦茶怖かったし。
「女の子の気持ちはよく分かんないなー……」
俺はブツブツ言いながら、それでも古賀さんの助言通りに契約書を探した。
果たして、それは部屋の隅の書類の束から発見された。
雇用契約書と履歴書がセットで保管されていたのだ。そして、
「…………」
俺がそこで見つけた文字列は、予想通りの代物だった。
――庵藤圭司。
履歴書で顔写真も確認した。
襟元だけでも十分に分かる変な服のセンスも間違いなく庵藤のものだ。
つまり、庵藤は株式会社サイドソフトの社員だった。
創業メンバーだから、おそらく『S/Witch』の開発にも関わっている……。
ここまでは俺の予想の範疇だった。
だが、ギョッとさせられたのはそこにあったもう一つの履歴書だ。
何者かにより、その名前と顔は黒のボールペンで何重にも塗りつぶされていた。
恨みの念が滲み出たような仕打ちだった。
一体この人物に何があったのか?
俺は他の履歴書を集合写真と照らし合わせて、消去法で、その人物を確認した。
すると、さっきは庵藤の顔にびっくりして見過ごしていたが、この人物の容姿にも驚かされることとなったのだ。
――これは偶然…………なのだろうか?
だが、もし、これが必然なのだとしたら……。
俺は最悪の事態を想定してスマホの待ち受け画面を開いた。
そこでは俺と庵藤が赤ら顔で笑っていた。
温泉宿の部屋で深夜まで、しこたま飲んだ時の写真だ。
涙が出てきた。
だって、そう考えるしかなかったから。
庵藤、お前……
――やっぱり、死んじゃったんだな……。
電話の向こうの声は……うん、やっぱり古賀さんだ。
しかし、声に元気がないな。
いやまあ、そりゃ疲れるよね。
俺だっていい加減疲れてる。
ただ、ちょっとボソボソ喋り過ぎなのは困るな。
何を言ってるのか、よく聞き取れない。
つき、の……?
つぎ……の?
そうして俺が困っていると、
「ホテル……」
古賀さんはもう少しだけハッキリした声を出してくれた。
あー……なるほど?
「次のホテル」ね。
そりゃそうか。
古賀さんもここに向かってるワケだが、うら若き女子に野宿なんて出来ないだろう。
ここで合流した後、近くに泊まる場所はあるか、ということか。
「確か、バスの中でホテルを見たけど、ここからじゃ車でもないと行けない距離だよ」
「車……」
「そうそう、車。タクシーを配車すれば、まあ行けるだろうけど」
でも、いいのかな?
あのホテル、明らかに、その……ラブホだったよな。
ああいうのって女子一人で泊まれるものなんだろうか?
俺も一緒にってのは色々問題あるよなぁ。
それを遠回しに伝えると、古賀さんも困ってしまったのか、うう……とか、あぅう……とか苦しげに唸っている。
いや、そんな泣きそうな声を出されてもな。
俺だって困ってるんだよね。
「写真……どうして……」
「え?」
あれ?
俺、アルバムを見つけた話ってもうしたっけ?
あれ?
んん?
まあ、いっか……。
「そうそう、三階で社長の毒島氏のものらしきアルバムを見つけてさ。ちょっと中を見させてもらったんだけど」
「ひどい……人のすることじゃない……」
「ええっ……で、でも、しょうがないじゃん!」
確かに人の写真を勝手に見るのはダメだけどさ!
今は非常事態なんだから……!
そんなこと言ったら、古賀さんがここに入れって言ったのもどうかと思うよ!
不法侵入じゃん!
「でさ! ちょっと気になったことがあって。サイドソフトの社員の名前一覧とかって、どこかで確認できないかな?」
「契約……」
「あ!」
そうか、契約書か……!
社と社員との間に雇用契約が結ばれているはずだから契約書があっても不思議ではない。
この部屋のどこかに保管されてるかも……。
しかし、古賀さんの即答は流石だな。
頼りになるぜ。
「古賀さん、ありがとう。すごくいいヒントだよ!」
「どうして? なんで……」
「えっ!? いや、なんでと言われても……。さすが目の付け所が違うというか、俺にはない鋭い視点の持ち主というか」
「私が……間違ってた……」
「いや、いやいや、そんなことないよ! えっ、何言ってんだよ!」
古賀さん、これ、完全に落ち込んでるなぁ。
頼むよ、さっきまでの冷静沈着な古賀さんに戻ってくれよ。
俺は必死に、古賀さんがいかに頼り甲斐があり、細かい気配りの出来る敏腕マネージャーであるかを力説したが、古賀さんはずっとブツブツと恨み言のようなことを呟き続けている。
ど、どうしたんだよ、古賀さん。何があったんだ!?
さらに古賀さんはヒートアップしていき、不穏な言葉すら口にし始めた。
「私は……裏切られた……もう、死にたい……」
「ま、待って、古賀さん! 落ち着いて。今回は俺、本当に迷惑かけたよ! 古賀さんが怒るのもよく分かる。それに関しては本当に申し訳ない!」
古賀さんにそこまで言わせてしまうなんて胸が痛い。
俺は痛切に、心からの言葉で訴えかけた。
「でも、俺! これを乗り越えたら、これからも古賀さんと一緒にやっていきたいんだ! だから、そんなこと言わないでくれ。今回の件、古賀さんは何も悪くない。俺のことはいくら責めてもいい。だから、絶対に自分を責めないでくれ!!」
「許さない!」
「はあぁっ!?」
「絶対に許さない!!!!」
古賀さんは急に声を荒らげた後、ブツリと一方的に電話を切った。
……ええっ!?
いや、俺のことはいくら責めてもいいとは言ったけど。
ちょ、ちょっと…………責めすぎじゃない?
いくらなんでもさあ!
いや、申し訳ないとは思ってるけど……。
その気持ちは本当だけど……そんな絶対に許さないとか、ちょっと古賀さんも言い過ぎじゃないの?
なんか声も無茶苦茶怖かったし。
「女の子の気持ちはよく分かんないなー……」
俺はブツブツ言いながら、それでも古賀さんの助言通りに契約書を探した。
果たして、それは部屋の隅の書類の束から発見された。
雇用契約書と履歴書がセットで保管されていたのだ。そして、
「…………」
俺がそこで見つけた文字列は、予想通りの代物だった。
――庵藤圭司。
履歴書で顔写真も確認した。
襟元だけでも十分に分かる変な服のセンスも間違いなく庵藤のものだ。
つまり、庵藤は株式会社サイドソフトの社員だった。
創業メンバーだから、おそらく『S/Witch』の開発にも関わっている……。
ここまでは俺の予想の範疇だった。
だが、ギョッとさせられたのはそこにあったもう一つの履歴書だ。
何者かにより、その名前と顔は黒のボールペンで何重にも塗りつぶされていた。
恨みの念が滲み出たような仕打ちだった。
一体この人物に何があったのか?
俺は他の履歴書を集合写真と照らし合わせて、消去法で、その人物を確認した。
すると、さっきは庵藤の顔にびっくりして見過ごしていたが、この人物の容姿にも驚かされることとなったのだ。
――これは偶然…………なのだろうか?
だが、もし、これが必然なのだとしたら……。
俺は最悪の事態を想定してスマホの待ち受け画面を開いた。
そこでは俺と庵藤が赤ら顔で笑っていた。
温泉宿の部屋で深夜まで、しこたま飲んだ時の写真だ。
涙が出てきた。
だって、そう考えるしかなかったから。
庵藤、お前……
――やっぱり、死んじゃったんだな……。
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