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6-4.肝試し
昭和84年9月3日0時48分 ――廃墟侵入から13分経過――
嫌々ながらも三階へ上ると、そこにあったのはトイレとシャワールーム、それと小さな私室だった。
トイレとシャワールームは(メチャ怖いので)さっと見るだけに留めて、最後に私室へと踏み込んだ。
「うわっ……」
雑然とした部屋だった。
何年放置されたのか分からない薄黒い布団が敷かれている。
放置されたであろう大量の書籍(主にマンガ)が壁際にうず高く積まれ、その周りにはゴミ袋やスナック菓子の袋、カップ麺の容器、謎の液体が入ったペットボトルなどが散乱している。
誰かの生活空間であったことは明らかで、しかも、この部屋の主はだいぶ雑な生活を送っていたことが見て取れた。
「ん?」
布団の上を照らしていた時に俺はそれに気が付いた。
布団の上に残る黒い靴跡、さらに周囲に散らばる乱雑な書類……何者かが荒らした形跡があった。
誰かがここに来て、何かを探したのか?
俺は試しに、部屋の隅に転がっていた小さな紙片を拾い上げてみた。
スマホの灯りで照らして目を凝らす。
これは……診察券か?
「桐公メンタルクリニック」
……とうこう?
きりこう?
なんて読むんだ??
いや、それよりも気になったのは、そこに書かれた名前の方だ。
「毒島太郎……」
この名前には見覚えがあった。
スマホを取り出し、さっき開いていたページを見て確認する。
やはり、あった。
株式会社サイドソフト代表取締役社長・毒島太郎だ。
……なんとなく想像が付いてきた。
この建物はおそらく毒島氏の私物だ。
周囲に広がる畑と一階の農作業器具を考えるに、元々は農業に使われていたのではないか?
それを二階をオフィスに変えてゲーム開発会社を立ち上げた。
三階は自分の私室として使った。
そんなところだろうか。
しかし、結局、三階にも誰もいなかった。
やっぱり庵藤はここにはいないのか?
なら、さっきの扉の音は何だったんだ?
それを考えると背中にぞくりとした感覚を覚える。
正直、早く外に出たいが、ここに招かれた意味がきっと何かあるはずなのだ。
それを見つけなければ、俺は一歩も前進できない気がしていた。
再び灯りで室内を舐め回す。
大きな装丁の、本のようなものが気に掛かった。
恐る恐る手に取って見ると、どうやら写真アルバムのようだ。
これは毒島氏の物だろうか?
開くと、フィルム現像された写真が多数収められていた。
アナログカメラが趣味だったのかもしれない。
アルバムはどうやら株式会社サイドソフトの歩みを記録しようとした物のようだった。
冒頭から見ていくと、会社の沿革がぼんやりと浮かび上がってくる。
最初の写真は農作業小屋が写されていた。
次の写真はそれが部分改築されていく様子。
建物に会社の名称看板が掛かった瞬間の記念写真。
そして、創業メンバーと思しき社員たちとの集合写真……。
「うん!??」
俺は自分の目を疑った。
灯りを当てて、まじまじとその写真を凝視する。
……似ている。
他人の空似にしては似すぎている。
だが、いかんせん小さすぎる。
判別し辛い。
いやしかし、この服装は……。
他にその人物が映った写真を探してアルバムをめくっていく。
社員総出のBBQの様子や、企画会議の様子などが収められていたが、どれも決定打に欠けた。
断定できない。
どんどんめくっていくと写真の様子が変わっていく。
明らかに社員の数が減っていった。
残った社員たちの顔からも生気が失われていく。
写真の側に日付が書かれているが、『S/Witch』の発売が近づくにつれて、オフィスの様子が荒廃していった。
寝袋やゴミ袋が無造作に床に投げ出され、社員たちが机にうっぷしている。
制作資料と思われるベビーカーと赤ちゃん人形も雑に転がされている……。
アルバムは発売当日の日付を最後に終わっていた。
最後は『S/Witch』の製品パッケージを写したものだ。
毒島氏は起業後、初めての成果物となるこのクソゲーに対して、どのような気持ちを抱いたのだろうか……。
だが、俺が気になったのは、そのさらに一つ前のページだ。
抜けていた。
そこにあったはずの一枚の写真が失われていた。
空白の空間に日付だけが残されていたが、それは発売日の十七日前となっていた。
ここには一体、何の写真があったのか?
誰が、なぜ、ここにあった写真を抜き取った?
この部屋を荒らした「犯人」の仕業なのか?
その空白部分の直前の写真は同日に撮られたもので、大きな建物の外観だった。
これはなんだろう?
この特徴的な外観……看板にうっすら見えるロゴマーク……。 
「どこかで……見たような……どこだ?」
思い出せない。
ともかく、毒島氏はこの建物に立ち寄って……おそらく、そこで何かをして……その写真を次のページに収めた。
そして、誰かが、何かの目的でそれを持ち去った……。
「テッテレーッ♪」
その時、手持ちのスマホが鳴った。
もう何度目だという話なので、俺もいい加減、驚かない。
きっと古賀さんだろう。
だが、画面を見るとなぜか番号が書かれていない。
不思議に思いながらも電話に出た。
嫌々ながらも三階へ上ると、そこにあったのはトイレとシャワールーム、それと小さな私室だった。
トイレとシャワールームは(メチャ怖いので)さっと見るだけに留めて、最後に私室へと踏み込んだ。
「うわっ……」
雑然とした部屋だった。
何年放置されたのか分からない薄黒い布団が敷かれている。
放置されたであろう大量の書籍(主にマンガ)が壁際にうず高く積まれ、その周りにはゴミ袋やスナック菓子の袋、カップ麺の容器、謎の液体が入ったペットボトルなどが散乱している。
誰かの生活空間であったことは明らかで、しかも、この部屋の主はだいぶ雑な生活を送っていたことが見て取れた。
「ん?」
布団の上を照らしていた時に俺はそれに気が付いた。
布団の上に残る黒い靴跡、さらに周囲に散らばる乱雑な書類……何者かが荒らした形跡があった。
誰かがここに来て、何かを探したのか?
俺は試しに、部屋の隅に転がっていた小さな紙片を拾い上げてみた。
スマホの灯りで照らして目を凝らす。
これは……診察券か?
「桐公メンタルクリニック」
……とうこう?
きりこう?
なんて読むんだ??
いや、それよりも気になったのは、そこに書かれた名前の方だ。
「毒島太郎……」
この名前には見覚えがあった。
スマホを取り出し、さっき開いていたページを見て確認する。
やはり、あった。
株式会社サイドソフト代表取締役社長・毒島太郎だ。
……なんとなく想像が付いてきた。
この建物はおそらく毒島氏の私物だ。
周囲に広がる畑と一階の農作業器具を考えるに、元々は農業に使われていたのではないか?
それを二階をオフィスに変えてゲーム開発会社を立ち上げた。
三階は自分の私室として使った。
そんなところだろうか。
しかし、結局、三階にも誰もいなかった。
やっぱり庵藤はここにはいないのか?
なら、さっきの扉の音は何だったんだ?
それを考えると背中にぞくりとした感覚を覚える。
正直、早く外に出たいが、ここに招かれた意味がきっと何かあるはずなのだ。
それを見つけなければ、俺は一歩も前進できない気がしていた。
再び灯りで室内を舐め回す。
大きな装丁の、本のようなものが気に掛かった。
恐る恐る手に取って見ると、どうやら写真アルバムのようだ。
これは毒島氏の物だろうか?
開くと、フィルム現像された写真が多数収められていた。
アナログカメラが趣味だったのかもしれない。
アルバムはどうやら株式会社サイドソフトの歩みを記録しようとした物のようだった。
冒頭から見ていくと、会社の沿革がぼんやりと浮かび上がってくる。
最初の写真は農作業小屋が写されていた。
次の写真はそれが部分改築されていく様子。
建物に会社の名称看板が掛かった瞬間の記念写真。
そして、創業メンバーと思しき社員たちとの集合写真……。
「うん!??」
俺は自分の目を疑った。
灯りを当てて、まじまじとその写真を凝視する。
……似ている。
他人の空似にしては似すぎている。
だが、いかんせん小さすぎる。
判別し辛い。
いやしかし、この服装は……。
他にその人物が映った写真を探してアルバムをめくっていく。
社員総出のBBQの様子や、企画会議の様子などが収められていたが、どれも決定打に欠けた。
断定できない。
どんどんめくっていくと写真の様子が変わっていく。
明らかに社員の数が減っていった。
残った社員たちの顔からも生気が失われていく。
写真の側に日付が書かれているが、『S/Witch』の発売が近づくにつれて、オフィスの様子が荒廃していった。
寝袋やゴミ袋が無造作に床に投げ出され、社員たちが机にうっぷしている。
制作資料と思われるベビーカーと赤ちゃん人形も雑に転がされている……。
アルバムは発売当日の日付を最後に終わっていた。
最後は『S/Witch』の製品パッケージを写したものだ。
毒島氏は起業後、初めての成果物となるこのクソゲーに対して、どのような気持ちを抱いたのだろうか……。
だが、俺が気になったのは、そのさらに一つ前のページだ。
抜けていた。
そこにあったはずの一枚の写真が失われていた。
空白の空間に日付だけが残されていたが、それは発売日の十七日前となっていた。
ここには一体、何の写真があったのか?
誰が、なぜ、ここにあった写真を抜き取った?
この部屋を荒らした「犯人」の仕業なのか?
その空白部分の直前の写真は同日に撮られたもので、大きな建物の外観だった。
これはなんだろう?
この特徴的な外観……看板にうっすら見えるロゴマーク……。 
「どこかで……見たような……どこだ?」
思い出せない。
ともかく、毒島氏はこの建物に立ち寄って……おそらく、そこで何かをして……その写真を次のページに収めた。
そして、誰かが、何かの目的でそれを持ち去った……。
「テッテレーッ♪」
その時、手持ちのスマホが鳴った。
もう何度目だという話なので、俺もいい加減、驚かない。
きっと古賀さんだろう。
だが、画面を見るとなぜか番号が書かれていない。
不思議に思いながらも電話に出た。
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