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原案:狩野英孝 著者:架神恭介 キャラクター原案:倉持由香 プロデュース:株式会社ビーグリー

6-2.肝試し

 そのほとんどはごく短いもので、ネット上での騒ぎを簡潔に伝えるものばかりだった。
もちろん俺の居場所や行き先なんて触れてすらいない。

 だが、その中に一つ、ダントツで情報量の多い記事があった。
ゲームの背景情報や俺の配信中の様子などにも触れており、明らかにリアルタイムで見ていないと書けない内容だった。
『S/Witch』の開発裏話まで取材している。
一体、誰の記事なのかと思い、末尾にあった寄稿者の名前を確認すると…………。

 葱沢藤一郎……とあった。

 ネギ……サワ……? 
ネギって…………えっ、もしかして、ニラ……ネギ!??

 俺はハッとしてSNSを開いた。
来てる……。
DMで「葱沢藤一郎」を名乗るアカウントから連絡が来ている。
「配信を見ていた」「NIRA†NEGI名義でコメントしていた」「急ぎ話がしたい」といった内容で、通話ツールのアカウントや電話番号も載せられていた。
連絡をくれ、ということだろう。

「ど、ど、どうしよう……」

 俺は迷った。
これまでの書き込みや、この記事からしてもニラネギの情報力は間違いない。
「ゲームの呪い」に関して、より詳細な情報が得られるかもしれない。
ただ、何者かがコメント欄で庵藤の名前を出してきたし、ニラネギも当然その点は不審に思っているはずだ。
ニラネギと話すことにはリスクもある……。

 と、その時、

 ――ガチャン!

 大きな金属音が辺りに響き、俺は驚きのあまり飛び跳ねそうになった。
さっきから物音がする度にビビりまくっているが仕方ない。
怖いんだ!

 音の発生源と思しき方に目を向けると……外付けの階段だ。
その二階部分の扉から音がしたのか? 
誰かが扉を開けてこちらを確認した? 
もしや、庵藤……か??

 迷った挙げ句、俺は入口へと向かって足を踏み出していた。
考えてみれば、この住所を残したのは庵藤なのだ。
仮に庵藤がいなかったとしても、この場所へと俺を導くことで庵藤は何かを伝えたかったに違いない。

だから、そんな危ないことはないはずだ。
きっと。
たぶん。
おそらく……。

 おい、庵藤、信じてるぞ。

 自分に必死にそう言い聞かせて、俺は入口の扉を開いた――。

 *

昭和84年9月3日0時35分 ――廃墟侵入――

「お、お、お邪魔、します……」

 おっかなびっくり入口の扉を開く。
ここが施錠されていれば諦めも付いたのだが……開いた。
どういう管理をしてるんだ。
杜撰  過ぎるだろ。

 当たり前だが中は真っ暗だ。
ひどく埃臭い。
俺はスマホを取り出して懐中電灯アプリを立ち上げる。
その灯りが目の前を照らした瞬間、

「ひいぃっ!」

 そこに現れた光景に俺は早くも腰を抜かしそうになっていた。

 ベビーカーだ。

 ベビーカーの上に人形が乗っている。
妙にリアルな赤ん坊の人形で、可愛いというよりは生々しく不気味だ。

 ちょっと待ってくれよ! 
なんでいきなりこんなものが! 
俺をビビらせる以外にここに置く意味があるなら教えてくれよ!?

「突然動き出したり、泣き出したりしないよな……」

 俺はそんなありきたりなホラー展開を想像して、瞬きもせずにしばらく凝視し続けた。
が、人形は人形だしベビーカーはベビーカーだ。
そんな怪現象が起こるわけもなく、緊張したまま人形を見つめ続ける自分がなんだか恥ずかしくなってきた。

 別の場所を照らしていく。
建物の一階はガランとしていた。
壁に黒板が掛かっていることと、農作業器具と思しきものが隅に転がっていることを除けば、他にはほとんど何も無い。

「一階は車庫なのかな?」

 小声で呟く。
奥の方には二階へと通じるであろう階段が見えた。

「おーい……庵藤……おーぃ……」

 上階へ向けて、遠慮がちに呼びかけてみる。
返事はない。
さっきの扉が開いたような音は庵藤の仕業ではなかったのか? 
風で開いただけ……とか? 
いや、そんな事ありえるか? 
鉄の扉だぞ??

 しかし、庵藤以外の誰かがいるなら、それはそれで怖いな。
例えば、近所の悪ガキが占拠してたら普通に怖い。
いやでも、それにしたって、そいつらは真っ暗な中で何をしてるんだという話だが……。

「誰かぁー。誰かいますかぁー? 誰かぁー」

 やっぱり何の返答もない。
建物の中は静寂が支配し続けている。
本当に誰もいないのか? 
じゃあ、さっきの音は何なんだ?

 俺は大きめの石を拾ってきてドアストッパーの代わりに扉を固定し、恐る恐る中へと進んでいく。
中に入った瞬間に入口がバターンと閉まる……みたいなありがちな展開を警戒したのだが、今のところ大丈夫そうだ。
もっとも、本当にそんな怪奇現象が起こったら、こんな石くらい問答無用で吹き飛ばしそうなものだが。

 階段に到着し、二階の方へと向けて懐中電灯の光を投げかける。
特に怪しいものはない。
意を決して進んでいくが、恐怖で心臓がバクバクしている。
階段を踏みしめる自分の足音ばかりが静寂の中に響く。

くそっ、なんで俺がこんな目に! 
俺、なんか悪いことしたか!?

 登り切ると、そこには扉があった。
「株式会社サイドソフト」の表札が架けられている。
階段はさらに三階へと続いていたが、先程の扉の音を考えれば二階に誰かがいる可能性が高い。
俺は嫌な汗をかきながら扉を開いた。

 そこはオフィスだった。
等間隔でデスクが並び、置き去りにされたであろう書類や書籍が床や机上に乱雑に投げ出されている。
壁にはホワイトボードと動きの止まった掛け時計。
荒れ果ててはいるが何の変哲もないオフィスだ。

 だが、あちこちに光を投げかけて確認していくうちに、

「うん?」

 俺は奇妙な既視感に囚われていた。
なんだこれ……。
何か、見覚えがある。
俺はこの場所を知っている。
ごく最近、どこかで見た覚えがある。

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