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5-2.スーサイドソフト
「ただ、私は正直、友達がいたという話から疑っています。若色さん、失礼ながら、ここ最近かなり不安定だったのでは? だって」
古賀さんは唐突に不穏な話をぶっこんできたのだ。
「壁に手形を付けまくってますよ」
なんだそれ……。
直後に古賀さんから写真が届いたが、確かに、あった。壁一面に無数の手形が。
血のような赤い色で塗られた手形が壁に刻み込まれていた……。
まさか、さっきのヤツか?
扉を執拗に叩いていたヤツがやったのか?
何故だ。
どういうメッセージなんだ?
いや、まさか。
……まさか本当に……本当にこれは俺がやったのか??
「『S/Witch』の実況配信が決まってから、若色さん、ずっとおかしかったですよ」
そ、そうなのか?
俺、何かおかしかった?
えっ、いつだ?
一週間前?
二週間前?
古賀さんから見て、俺、いつもと何か違ってたのか?
わ、分からない……!
「『S/Witch』に対して――、何か思うことでもありましたか?」
「な、ないっ! 何もない! 何一つない!」
俺は慌てて否定した。
いやだって、本当にない。
何もない。
だって、あのゲームを知ったのは今日のことなんだぜ!?
俺の返答に古賀さんは少し不満気な様子だった。
それはそうだろう。
古賀さんからすれば、殺人だの呪いだの、それら全てが俺の気の迷いなら、それが一番だったはずだ。
でも、やっぱり俺の気の迷いでもノイローゼでもないことは明らかだ。
古賀さんの希望的観測は残念ながら大外れだ。
第一に、庵藤は実際に存在している。
これはまず確かだ。
だって、宅配便の兄ちゃんも目撃してるのだから。
第二に、手形の件も絶対に俺じゃない。
俺が配信をしていた時にそんなものは絶対になかった。
仮にあの位置に、もしそんな不気味なものがあれば視聴者が絶対にコメントで騒いだはずだ。
だから、少なくともこれに関しては、間違いなく――、
「古賀さん、呪いは実在する」
電話の向こうで「はぁ?」と呆れるような声を出されたが、いや、そうとしか結論できない。
「『S/Witch』の呪いは……実在する!」
「若色さん、やっぱり疲れて……」
「信じてくれ!」
俺は祈るような気持ちで説明した。
どう考えても呪いとしか結論できないことを。
そんなことを何度も繰り返し説いてること自体が、俺の正気を疑われそうだが……。
「わ、分かりました。ひとまず、呪いの件は置いておきましょう。そんなことより……」
お、置くな、ひとまず置くな!
そんなこととか言うな!
こっちは怖いんだぞ!!
そう言いたくなったが、続く古賀さんの言葉には同意するしかなかった。
「そんなことより、そのお友達を探しましょう。警察に行かれる前に示談しないと」
「た、確かに……」
示談の件もだが、庵藤のことが普通に心配だった。
生きてるにしても強く頭を打ってるわけで……。
「それで一つ聞きたいのですが、若色さん、机の上にメモを残しましたか」
「?」
「住所のメモです」
俺は戸惑いながら否定した。
メモ?
何の話だ。
「埼玉県▓▓町4丁目▓5ー1▓って書いてありますが」
いや……そんな住所メモは知らない。
古賀さんに改めて確認したが、配信用デスクの真ん中に置かれていたという。
そんなものがあれば俺が気付かないはずがない。
ということは……。
「庵藤……俺の友達が、意識を取り戻した後に、書いた?」
「……かもしれませんね」
なぜだ?
庵藤が行き先を俺に知らせた?
いや、最寄りの病院に行くなら分かるが、埼玉だなんて遠すぎる。
なぜそんなところに?
庵藤のスマホに電話連絡を入れてみたが、出ない。
無視をしているか、そもそもスマホを持ち運んでないのかもしれない。
「ちょっと状況が分からないのですが、若色さん、こちらの住所を当たってみてくれませんか? お友達がこちらに向かった可能性があります。ただ、若色さんを一人にするのも不安なので、事務所に連絡して手の空いたスタッフを向かわせます。先に向かっていて下さい」
「わ、分かった。古賀さんは?」
「夜間対応している近隣の病院を片っ端から確認します。お友達のフルネームと、あれば写真画像を送って下さい。昏倒する程に頭を打ったということは脳震盪ですよね。CTやMRIを撮るはずなので、受診しているなら、まだ病院にいる可能性が高いです。確認次第、そちらに合流しますが、こちらは時間が掛かると思います」
電話を切った後、俺と庵藤が一緒に写っている写真を古賀さんに送った。
待ち受けにしている温泉旅行での一枚だ。
宿の部屋で深夜まで二人で飲み交わし、酔った勢いで撮った写真だ。
スマホの中では浴衣姿の俺たち二人が、肩を組んで最高の笑顔で笑っている。
庵藤が生きていてくれたら……どれだけ嬉しいことか。 
ともかく、確かめに行こう。
古賀さんの言ってた住所を地図アプリに入れて経路を確かめてみる。
都心部から離れており、最寄り駅からも遠い。
駅から徒歩で向かうのは大変そうだが、幸いにも最終バスにギリギリ間に合いそうではある。
古賀さんは唐突に不穏な話をぶっこんできたのだ。
「壁に手形を付けまくってますよ」
なんだそれ……。
直後に古賀さんから写真が届いたが、確かに、あった。壁一面に無数の手形が。
血のような赤い色で塗られた手形が壁に刻み込まれていた……。
まさか、さっきのヤツか?
扉を執拗に叩いていたヤツがやったのか?
何故だ。
どういうメッセージなんだ?
いや、まさか。
……まさか本当に……本当にこれは俺がやったのか??
「『S/Witch』の実況配信が決まってから、若色さん、ずっとおかしかったですよ」
そ、そうなのか?
俺、何かおかしかった?
えっ、いつだ?
一週間前?
二週間前?
古賀さんから見て、俺、いつもと何か違ってたのか?
わ、分からない……!
「『S/Witch』に対して――、何か思うことでもありましたか?」
「な、ないっ! 何もない! 何一つない!」
俺は慌てて否定した。
いやだって、本当にない。
何もない。
だって、あのゲームを知ったのは今日のことなんだぜ!?
俺の返答に古賀さんは少し不満気な様子だった。
それはそうだろう。
古賀さんからすれば、殺人だの呪いだの、それら全てが俺の気の迷いなら、それが一番だったはずだ。
でも、やっぱり俺の気の迷いでもノイローゼでもないことは明らかだ。
古賀さんの希望的観測は残念ながら大外れだ。
第一に、庵藤は実際に存在している。
これはまず確かだ。
だって、宅配便の兄ちゃんも目撃してるのだから。
第二に、手形の件も絶対に俺じゃない。
俺が配信をしていた時にそんなものは絶対になかった。
仮にあの位置に、もしそんな不気味なものがあれば視聴者が絶対にコメントで騒いだはずだ。
だから、少なくともこれに関しては、間違いなく――、
「古賀さん、呪いは実在する」
電話の向こうで「はぁ?」と呆れるような声を出されたが、いや、そうとしか結論できない。
「『S/Witch』の呪いは……実在する!」
「若色さん、やっぱり疲れて……」
「信じてくれ!」
俺は祈るような気持ちで説明した。
どう考えても呪いとしか結論できないことを。
そんなことを何度も繰り返し説いてること自体が、俺の正気を疑われそうだが……。
「わ、分かりました。ひとまず、呪いの件は置いておきましょう。そんなことより……」
お、置くな、ひとまず置くな!
そんなこととか言うな!
こっちは怖いんだぞ!!
そう言いたくなったが、続く古賀さんの言葉には同意するしかなかった。
「そんなことより、そのお友達を探しましょう。警察に行かれる前に示談しないと」
「た、確かに……」
示談の件もだが、庵藤のことが普通に心配だった。
生きてるにしても強く頭を打ってるわけで……。
「それで一つ聞きたいのですが、若色さん、机の上にメモを残しましたか」
「?」
「住所のメモです」
俺は戸惑いながら否定した。
メモ?
何の話だ。
「埼玉県▓▓町4丁目▓5ー1▓って書いてありますが」
いや……そんな住所メモは知らない。
古賀さんに改めて確認したが、配信用デスクの真ん中に置かれていたという。
そんなものがあれば俺が気付かないはずがない。
ということは……。
「庵藤……俺の友達が、意識を取り戻した後に、書いた?」
「……かもしれませんね」
なぜだ?
庵藤が行き先を俺に知らせた?
いや、最寄りの病院に行くなら分かるが、埼玉だなんて遠すぎる。
なぜそんなところに?
庵藤のスマホに電話連絡を入れてみたが、出ない。
無視をしているか、そもそもスマホを持ち運んでないのかもしれない。
「ちょっと状況が分からないのですが、若色さん、こちらの住所を当たってみてくれませんか? お友達がこちらに向かった可能性があります。ただ、若色さんを一人にするのも不安なので、事務所に連絡して手の空いたスタッフを向かわせます。先に向かっていて下さい」
「わ、分かった。古賀さんは?」
「夜間対応している近隣の病院を片っ端から確認します。お友達のフルネームと、あれば写真画像を送って下さい。昏倒する程に頭を打ったということは脳震盪ですよね。CTやMRIを撮るはずなので、受診しているなら、まだ病院にいる可能性が高いです。確認次第、そちらに合流しますが、こちらは時間が掛かると思います」
電話を切った後、俺と庵藤が一緒に写っている写真を古賀さんに送った。
待ち受けにしている温泉旅行での一枚だ。
宿の部屋で深夜まで二人で飲み交わし、酔った勢いで撮った写真だ。
スマホの中では浴衣姿の俺たち二人が、肩を組んで最高の笑顔で笑っている。
庵藤が生きていてくれたら……どれだけ嬉しいことか。 
ともかく、確かめに行こう。
古賀さんの言ってた住所を地図アプリに入れて経路を確かめてみる。
都心部から離れており、最寄り駅からも遠い。
駅から徒歩で向かうのは大変そうだが、幸いにも最終バスにギリギリ間に合いそうではある。
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