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原案:狩野英孝 著者:架神恭介 キャラクター原案:倉持由香 プロデュース:株式会社ビーグリー

幕間:『166』①

 以下は、某匿名掲示板のプログラマー板の愚痴スレッドに書き込まれた内容である。

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166:仕様書無し:昭和82/3/4(金) 21:20:26.52 ID:rKjs▓▓▓▓▓

以前に働いていた会社がクソすぎた。
あれから4年経って流石に吹っ切れたけど、当時辞めた時はマジでメンタルがヤバかった。

ゲーム開発なんだけど少人数制というか、ただでさえ納期ヤバかったのにどんどん辞めていって、最終的に残ったのは俺と社長とディレクターの三人だけ。

社長から連日怒鳴られてる新人ディレクターが可哀想だから、俺はなんとか続けてたんだけど、正直、あの時点ですぐ辞めておけば良かった。
今でも後悔してる。

発売まで一ヶ月を切った段階で進捗は40%くらい。
キャラは動くしフィールドも一通り作ってたけど、ストーリーやイベントの実装が全然間に合ってない。

一応ホラーゲームだったから演出も重要なんだけど、作り込んでると明らかに間に合わない。
でも社長は、販売延期はしない、何が何でも発売日に出すの一点張り。
たぶん資金繰りが限界だったんだろう。
実際、発売後に即廃業したしね。

無理矢理でもいいから形にして、とにかく発売日に出せって言われるんだけど、それでいて、プレイ時間は20時間は確保しろって言われて。
「プレイ時間30時間以上」を大々的に謳って宣伝してたから、せめて20時間はないとカッコ付かなかったんだと思う。

でも、こっちからすると、そんなんムリ、できるわけないって感じ。
演出を適当に誤魔化して手抜きして、最低限のイベントを実装するとして、どんなにゲームが下手でも、それだとせいぜい2時間くらいか?
俺もゲームは下手な方だけど、それでも20時間は絶対に掛からない。
そしたら社長がメチャクチャ言い出した。

167:仕様書無し:昭和82/3/4(金) 21:27:11.23 ID:rKjs▓▓▓▓▓

プレイヤーキャラの操作性を劣悪にしろ、って言ってきたんだ。
その時に作ってたゲームは某ゾンビゲームみたいな見下ろし型のリモコン操作だったんだけど、「回転に慣性を付けろ」「まともに前に進めなければプレイ時間を稼げる」とかなんとか。

俺は「コイツ正気か?」って思ったけど、俺も連日サービス残業の休日なしで、まともな判断ができなかったんだよな。
「ハイハイ、それでいいならやりますよ」みたいな感じで言われるままに慣性を付けてさ。
いや、意味分かんないよな。
なんで横を向くだけで身体が滑るんだよ。
靴底に油でも塗りたくってんのかって話よ。

で、後ろから見てたディレクターの子が泣きそうな顔しててさあ。
そりゃそうだよな……。
初めて自分がディレクションするゲームが、訳の分からん指示でクソゲーにされていくんだぜ。
俺も申し訳ないなと思ってたんだけど、社長が「全然ダメだ」「これだと20時間稼げない」「もっと慣性付けろ」とか言ってきて。

流石に俺も「これ以上やったら遊べないですよ!」って反論したんだけどさ、全然、話聞いてくれねえの。
社長いわく、プレイ時間が短すぎるのは優良誤認表示とみなされ課徴金納付命令……つまり罰金の対象になる可能性があるけど、クソゲーであることは法に違反しない、とかなんとか。
ホントにユーザーのことなんか何も考えてない。

で、俺思ったんだよ。
これはむしろかなり大袈裟に設定して、社長に「これはいくらなんでもダメだな」と言わせなきゃいけない、って。
だから、方向キーを押すとその場で三回転くらいするギャグみたいな代物を出したんだよ。

そしたら、社長は「これだ! やればできるじゃないか!」とか言ってさあ。
社長の頭、どうかしてたんだと思う。
いや、元から変なヤツではあったけどさ。
ディレクターの子はいよいよ泣きそうだったな。

168:仕様書無し:昭和82/3/4(金) 21:31:28.83 ID:rKjs▓▓▓▓▓

もうこの時点でまともに遊べるゲームじゃないんだけど、さらに「セーブ機能を消せ」と言ってきた。
まあメニューから選択肢を消すだけだから簡単だし、慣性の時点でクソゲーは決定済みなので、言われるままにハイハイって消したら、さらに「オープニングムービーをスキップ不可にしろ」ってさ。

「あー、なるほど、コンボね!」って変に納得しちゃったよ。
基本即死するゲームなのに、毎回最初からやり直しで、オープニングムービーを毎度見させる。
そんな感じで他にも姑息な時間稼ぎをいろいろ作らされたよ。
その中でも一番すごいのがあるんだけど、実に4000の……いや、その話はまあいいや……。

なんで俺はこんな電子のゴミを作ってるんだろうと思ってたけど、でもとにかく、早く終わらせたくてさ。
言われるままに実装してた。
ゲームの出来がどうのこうの以前に家に帰って寝たかったんだ。
もうしばらく帰宅してないし、2時間以上の睡眠も取ってない。
それなのに社長が思いつきで、「宣伝配信するから出演しろ」とか言ってくるの。
マジで仕事増やすなよ……なんでプログラマーに宣伝させるんだよ……そんな時間あるなら寝させてくれよ……。

で、この日までにマスターアップしないと絶対間に合わない、っていう一週間前くらいの時に、社長が妙にウキウキしながら、「メシ食ってくる」って言ってディレクターの子と車で出ていってさ。
俺はもうその時点でかなりムカついてたんだよね。
こっちはカップラーメンをエナドリで流し込んでるんだぞ、と。

で、しかも、あの二人、全然帰ってこねえの。
マジで絶対辞める! 
って、その時は思ってたんだけど、四時間くらいして二人が帰ってきたら、ディレクターの子がなぜかメッチャ泣いてて。

その時は全然意味が分かんなかったんだけど、女の子が泣いてると怒るに怒れなくなっちゃってさ。
社長が必死に慰めてたから、プロジェクトがクソになってる件で落ち込んでんのかな、くらいに思ってた。
俺も余裕がなかったから見て見ぬフリしてたんだけど、今にして思えばちゃんと話を聞いておくべきだった。

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