殺人犯ですが助けてください、呪われたクソゲーがクリアできません!チャンネル登録お願いします

原案:狩野英孝 著者:架神恭介 キャラクター原案:倉持由香 プロデュース:株式会社ビーグリー

4-2.逃亡

 え、重大発表? 
ちょっと待って。
なにそれ、聞いてない!

 ……と思ったところで、俺はパッと思い当たった。
あ、これって……

 例の暴露の件だ!

 庵藤の野郎、何を勝手に予告してやがる。
みんなメチャクチャ期待してるじゃねえか!?

 うおお、どうしたらいいんだ、うおおおおお。
俺が困っている間にもコメント欄では「重大発表」に対する期待が高まり続けていく。
こ、これはもう適当なことでお茶は濁せないぞ。
「重大発表」に相応しい何かを、今すぐデッチ上げなければ……。

 ――あッ、そうだ!

 そう、この時の俺は冴えていた。
今日一日で一番冴えていた。

ある! 
あるじゃないか! 
今の俺にこそ可能な「重大発表」が! 

俺は一抹の希望を抱きながら配信用ノートパソコンに手を伸ばし、カメラをオンにした。

「み、みなさん、どうも~~」

 ノートパソコンをいじって角度を微調整する。
そう、今の俺に打てる起死回生の一手――、

「顔出し」だ!

「えー、重大発表です! UMBRELLAはこれまで声のみでやってきましたが……今日から顔出しでプレイしていきまーす! イェーイ!」

 庵藤が替え玉配信していた時には当然できなかった「顔出し配信」だ! 
チャンネル登録者数100万人の「UMBRELLA」が顔出し配信に切り替えるのは重大発表に違いないだろう。
何より本物の俺が配信していることがみんなに伝わるから、庵藤に関する変な疑惑も吹き飛ばせるはず。
この重大発表に視聴者を湧かせながら配信終了までなんとか乗り切るしかない!

 だが――!

「え……」
「今の……えっ」
「マ、マ、マジで、ヤバイって」

 あ、あれ???

 コメント欄の様子がおかしい。
俺の重大発表そっちのけで、みんなが何かに大騒ぎしている……。

「オ、オバケ……!」
「幽霊の顔が一瞬映った!」
「か、かお、顔!」
「死人のような目……」
「医者として断言する。アレは絶対に生きた人間じゃない」

 あ、あああああ……??

 俺の目の前が真っ暗になっていく……。
お、お、終わった……。
ダメだ、これはダメだ。
完膚なきまでに終わった……。
詰んだ。

 さっきカメラを微調整していた時に、床で死んでる庵藤の顔が一瞬映り込んでしまったのか……。
お、おおお、何が起死回生の一手だ。
俺はギネス級のバカ殺人犯だ! 
うおお、古賀さん、俺はどうすりゃいいんだ、助けてくれ~ッッ!!

 コメント欄では、さっきの一瞬の映像をキャプチャした人たちが続々と画像をアップして、そのURLを貼り付けている。
や、止めてくれ……。
既にオーバーキルだ。
勘弁してくれ~、もう自首する。
自首するから勘弁してくれ~~。
頼む~!

 俺は半ば放心状態のまま、示されたURLの一つをクリックした。
そこに庵藤の顔が映っていることを予見しながら……。
しかし、実際にそれを見た俺は――、

「は?」

 困惑した。
大いに戸惑った。

 いや、ないじゃん? 
庵藤の顔、映ってないじゃん。
ていうか、床まで映ってないし。
えっ、どゆこと? 
みんな、何をそんなに騒いで……

「はあああっ!?」

 ようやく気付いた俺の口から、素っ頓狂な声が捻り出された。

 壁だ。
後ろの壁にモヤが。
黒いモヤのようなものがあった。

 バッと後ろを振り返る。
いつも通りの壁だ。
何もない。
改めてパソコンの中の画像をジッと見る。
これは……顔? 
うーん……? 
顔に見えなくもない。
モヤの中に目と鼻と口のようなパーツが見えなくもない? 

 いや、でも、これ、影じゃないか?? 
カメラを微調整した時に光源との関係でたまたまそう見えただけのような気も……? 
仮にこれが庵藤の霊だとしても似ても似つかないぞ。
ドクターキリコも医者を名乗ってるくせに、「絶対に生きた人間じゃない」とか本当に適当なこと言うよなぁ。

 だが、俺のクレバーな分析とは裏腹に、コメント欄は大騒ぎしっぱなしだ。

「ヤバイ、ヤバイって!」
「これ、マジで配信すると死ぬゲームなんじゃ?」
「俺、寒気してきた」
「若色さん、今すぐ神社でお祓いを!」

 え?

 みんなマジで言ってんの? 
いやでも、そこまで言われると俺もだんだん怖くなってきたな。
ていうか、庵藤を殺したのは実際そうだし、この後、死体を隠蔽するつもりだし。
お祓いはいずれにせよ行った方がいいのかも……。

 そんなことを思って、ブルッと身震いしながら画面を見ると……あ、ニラネギだ。
しばらく書き込みのなかったニラネギが久しぶりにコメントしていた。
なんだか妙にホッとしたのだが、しかし、その内容は不穏そのものだった。

「結論だけ言います。本当に呪いの可能性があります」

 おいおいおい、ニラネギさんよーっ!?

 アンタまでなんて適当なことを! 
「このゲームの実況をした人は今もピンピンしてる」って、さっき、アンタ言ってたじゃん? 
何を急に言いだして……。

 いや……。

 え、ほんとにニラネギはなんで急にこんなことを言い出したんだ?

 ニラネギは「ちょっと気になる」と言って、そこからしばらく書き込みがなかった。
まさか何かを…………調べてたのか? 
えっ、ニラネギ、お前は一体、何を見つけたんだ??

 カメラの前で必死に表情を繕いながらも、俺が脳みそをフル回転させて考えていた時、不意に玄関から、

「ピンポーン」

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