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原案:狩野英孝 著者:架神恭介 キャラクター原案:倉持由香 プロデュース:株式会社ビーグリー

3-3.写真

 奇妙な絵――。

 絵? 
いや、あれは写真か? 
それは画面一杯に大写しにされていた。
そして、同時に、体の芯まで冷え切るような震えを伴う凄まじい寒気を感じて、俺は思わず息が止まったのだ……。

 画面に表示されていたのは、なんてことのない普通の写真だった。
解像度の粗いボケボケの白黒写真で、写っているのは女……だろうか? 

両手、露出した肩口、それと、薄く笑っているであろう顔の下唇。
その辺りまでが画面いっぱいにデカデカと表示されていた。
女の両手は顔の左右にあって、途中で見切れているが、おそらくダブルピースしているのか? 
背景は夜空のように見える。

「な……んだ……。これ……」

 その写真には怖いところなど何一つなかった。
むしろ笑顔やダブルピースなど楽しい要素しかないはずだった。
にも関わらず、俺は体の芯から震えていた。
意味が分からない。
なぜ急にこんな写真が挟まれたのかも分からないし、俺がこれの何にビビっているのかも分からない……。

 その写真に見入ったまま数秒が経ったところで、急にゲームは元の画面へと戻り、カギを入手したことが示された。
さっきの写真には何の説明も入らない。
俺だけが一人、幻覚でも見たのかと思ったが、

「え、今のなに?」
「写真?」
「不思議な演出……」
「妙にびびった」
「なんか寒気した」
「ヒヤッとなったw」

 視聴者たちも同じものを見ていた……。
え、じゃあ、普通にゲームの演出なのか? 
にしても、なんだか不自然だよな……。

「本物の心霊写真を見た時と同じ感覚を覚えました(笑)」

 妙にオカルトに詳しいニラネギがそんなことを言っている。

「心霊写真? いやいや、それはないっしょ!」

 俺は笑いながら否定した。
腕が三本あるとか人の顔らしき影とかオーブだとか、そういうのは一切なかった。
むしろ、そういった分かりやすい心霊写真ならゲーム上の演出として理解できるのだが……。

 本当に俺達は一体何を見せられたんだ?

 ともあれ、これで「女性キャラが勝手に死ぬ」問題は解決したはずだ。
後は何とかして”開かずのテナント”の呪いを解けば、きっと脱出できる。

「!?」

 そう思っていた矢先である――。

「ねえ、知ってる? 12階にある、開かずのテナントの話……」

 経理の女性との会話イベントが唐突に発生した。
あ、あれ? 
このセリフって……。

 おかしい。
一度オフィスの外に出て、戻ってくることが会話の発生条件だったはずだ。
話の展開からしてもありえない流れだぞ。

「お願い、開かずのテナントの様子を見てきて」

 そう言って女性キャラがカギを手渡してくる。
いや、そのカギはもう俺が持ってるんだが? 
お前のそのカギ、どっから沸いてきた?

「う、ううううう! うあ……あ、あ、ああ……」

 女性キャラが白目を剥いて呻きながら倒れて、画面には例の血飛沫とGAME OVERの文字が浮かびあがった。
それを見た俺は……

「ダ、ダメだ……」

 半泣きで天を見上げていた。
これは、バグだ……。
間違いなくバグだ。

「医者として断言する。バグだ。あの写真のせいだ」

 コメント欄でドクターキリコもそう言っていた。
キリコは以前に匿名掲示板にてスタッフの内情暴露を見たと言い、致命的バグの存在も予言していた。
俺も「ここで来たかぁ」と頭を抱えてしまった。

「いや、今のが正解ルートのはずですよね!?」

 俺が嘆くと、コメント欄も俺に同意する書き込みで溢れかえった。
女性キャラのバッグからカギを奪ったことで、彼女は"開かずのテナント"に入れなくなり、主要登場人物死亡でのゲームオーバーが回避される……。

 そういう話のはずなのに、なぜか女性が"開かずのテナント"に行った後の展開になってしまっている……。
プログラムの問題としか思えない。

ビビらせてくるホラー表現だとか、ギリギリ推理が成り立つ謎解きだとか、
「見るべきところもあるゲームだな」くらいに評価し始めていたのに……
こんな酷いバグ残したままゲーム出しやがって……
プログラマー出てこい、ぶち殺すぞ。

「もう一度、あの写真見るの嫌だなぁ……また出てくるのかなぁ……」

 とボヤキながらも、ニューゲームを開始した後、俺は再び同じ手順を踏んだ。
結果、全く同じ。
あの写真もやっぱり出てきたし、バグってGAME OVER一直線も同じ。
写真が出てきた途端に体の芯まで寒くなるところまで同じだった。

「何度見てもゾクッと来る」
「冷や汗が止まらないんだけど」
「あの写真、スゲー怖いんだけど、俺だけ?」

 そんなコメントが目立ってきた。
ホントになんなんだ? 
俺は頭を抱えてしまう。

「はい! というわけで、このゲームはバグのせいで先に進めないことが分かりました。終わりま~す!!」

 ……そう言って配信を終わらせたいのはやまやまだったが、俺の心を見透かしたかのようにマネージャーの古賀さんからメールが届いていた。

「もうちょっとですから頑張ってください」

 一体何がもうちょっとなんだ!? 
もうちょっとやったら終わっていいの?? 
こっちは心身共に既に限界なんだが……。
なんだかさっきから震えが止まらないし。

 まあ、具合も悪くなって当然だ。今日は本当に色々ありすぎた……。

 俺は自分を落ち着かせるべく、何度か深呼吸して、古賀さんから貰ったお茶を飲んだ。
うまいな、この麦茶……。
古賀さんのためにも、もう少しだけ配信頑張るか……。
俺はゲームパッドを握りしめた。

「えっと、他にルートがあるかもなので、オフィスの外をもう一度、しらみ潰しに探索してみます」

 明らかに正解の攻略法があるのに、それ以外の方法を探さなきゃいけないのは凄まじい徒労感だ。
結局、どれだけ調べても攻略の糸口は全く見つからなかったし……。

 ただ一方で、例の写真に酷似したものをいくつかの場所で見つけることができた。
意外な場所を調べることができたり、何もない場所でボタン連打していたら急に出てきたり……。
だが、写真の内容は相変わらず意味不明だった。

・布団の上に置かれたハンカチ(?)
・飲みかけのコップ二つ(?)
・中身を取り出されたビニール包装(?) 
・斜め線(?)

 そんなものばかりだ。
どれもボケボケな上に画面が粗い。
これら一連の写真に関係があるのかどうかも分からないが、やはりどの写真も出た瞬間にあの不快な寒気が伴っていて、すごくイヤだった。

 不可解な発見物の数々には視聴者たちも困惑していた。
あまりにも意味が分からなくて、不気味だった。
ここまで含めてゲーム上の演出なら、ある意味で成功ではあるが……。

と、そんなことを俺が思っていたら、

「ハンカチに血が付いてない?」

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