殺人犯ですが助けてください、呪われたクソゲーがクリアできません!チャンネル登録お願いします
1-4.殺人
部屋を出ると、すぐそこに灰皿が設置されていた。
俺も自分を落ち着かせるべく、煙草を取り出した。
禁煙は何度もチャレンジしたが、ことごとく失敗してきた。
外ではポツポツと雨が降り始めている。
紫煙を吐き出しながら俺自身も気持ちを整理し始めた。
UMBRELLAってなんなんだろう。
何のためにやっていたんだろう……。
元は俺がゲームが結構好きだったから、得意だったから始めたはずだ。
なのに最近はアイツの配信すらほとんど見ていない。
俺が成功できなかったのにアイツは成功した。
正直、嫉妬心があったのだろう。
自分の実力ではないところで自分が評価されることへの違和感もあった。
だから自然と配信から目を背けていた。
忙しいとか理由を付けて「見ない」ことを選択し続けた。
温泉旅行の時も庵藤とチャンネルの話は一切しなかった。
小学校や中学校の頃の思い出話やバカ話ばかりしていた。
庵藤からも一切話を振ってこなかったのは、アイツも俺が配信を見てないことに気付いてたんだろう。
だから、そうなんだ。
誰よりも「庵藤圭司」を見ていなかったのは俺だったんだ。
視聴者も庵藤を見ない。一番恩恵を受けている俺も庵藤を見ない。庵藤がああなってしまったのは当然だ。
「俺が一番……庵藤を追い詰めてたんだ」
確かに、俺には償いが必要なのかもしれない。
それにこれから先、俺がどんどん有名になっていっても、ずっとこれを続けるんだろうか?
どこかのタイミングで週刊誌にでもスッパ抜かれたら、その時のダメージは今とは比べ物にならないだろう。
「今、暴露するのも悪くないかもな……」
もっとも、やり方は重要だが……。
俺のダメージを抑えつつ、庵藤の新しい門出を応援するような形でうまく演出できないだろうか?
そうだ、ピンチではなく、これをチャンスに変えるんだ。
俺と庵藤ならきっとできる!
一緒に考えれば絶対に妙案が浮かぶはずだ。
俺の腹は決まりつつあった。
庵藤の決定がどうであれ俺はそれに従う。
庵藤の意志を最大限に尊重する。
それでいて庵藤自身も幸せになれるルートを探す。
アイツと一緒に模索する。
俺はアイツとこれからもずっと友達でいたい。
それを最優先する。
そう思いながら俺は待った。
二本目の煙草が短くなり、三本目に火を付けた。
まだ来ない。
いいよ、庵藤。俺はいつまでも待つ。
じっくりと気持ちを整理してくれ。
おれは紫煙を吐き出しながら、雨雲に隠れ始めた月を眺めて、次の煙草を取り出す。
腕時計を見た。
雨脚は強くなり、灰皿には俺の吸った煙草がいくつも投げ捨てられている。
な、なあ、庵藤……。
ちょっと、ゆっくりし過ぎじゃないか?
いや、分かる。大事な人生の岐路だ。焦ることではない。大丈夫だ、俺も付き合うぞ。
――ゴロッ、ゴロゴロ、ゴロッ……。
雷鳴が轟き、真っ暗な空に光が走る。
外はすっかりザーザー降り。
冠水する程の大雨だ。
指先で持てない程に煙草が短くなり、俺は最後の一本を灰皿に投げ捨てた。
「……お、遅すぎる」
いや、確かに俺は言った。
「ゆっくり気持ちを整理しろ」と。
でもちょっと、遅すぎるよな……。
ここまで来ると心配になってくる。
アイツ、まさか自殺とかしてないだろうな?
俺はためらった末にドキドキしながら扉を開けた。
「お、おーぃ、庵藤……お前、死んでないよな……?」
遠慮がちに部屋の中を覗き込む。
死んでた。
庵藤、死んでた。
白目を向いて舌を突き出したタラコ唇の変な顔で床の上に転がっていた。
手も顔も真っ赤だ。
でも、俺は眼の前の光景が全然意味が分からなくて、
「何やってんだコイツ」くらいの気持ちで普通に靴を脱いで部屋に入っていき、
そして、庵藤の近くまできて「あ、死んでる」と気付いた瞬間に、
――ドスン
と尻もちをついて、腰が抜けた。
同時に窓の外の闇夜を雷の強烈な光が引き裂いた。
雷鳴の中、雷の光に照らされた俺は真っ青な顔をしていたと思う。
「ふーぅひぃー! ふひぃぃーっ!」
悲鳴とか出なかった。
心臓がバクバクして、声にならない呼気が口と鼻から漏れるだけだった。
ビビりまくる俺の内心とは別に、
「死体の第一発見者のリアルな反応ってこれなんだな」
「今後の演技の参考になるな」と、
頭の中の誰かがそんな妙に冷静な反応をしていた。
「ぉ、ぉおぉぉおぉぉ……」
しばらく動転した後、俺はメチャクチャ怯えながらも庵藤の鼻先に指を近付けた。
呼吸……してない。
手首を掴む。分からん。脈、ない気がする。でも自信ない。押さえる場所を変えて何度も確認する。
あ、ダメだ。これ、やっぱりない。脈、ない。ないわー。
い、一体、どういうことなんだ??
自殺……には見えない。
辺りには首吊りロープもなければ手首に傷もない。
じゃあ、なんで庵藤は……と思った瞬間に「あっ!」と気付いた。
あれだ。やってた。思い切り後頭部ぶつけてたわ……。
俺が張り倒した時に庵藤がラックにぶつかって……あれの、当たりどころが……
「ぁ……ぁぁぁぁぁ……」
や、やっちまった……。
完全に事故ではあるが、殴るつもりで殴って相手が死んだのだから、これは確実に犯罪……過失致死傷罪ってやつか。
だが何より、自分が庵藤を殺してしまったことのショックが大きかった。
これからもあいつと一緒に頑張ろうと思った矢先だったのに!
と、この辺りでようやく、俺の頭の中に「救急車」というワードが浮かんできた。
いや、でももう死んでるし……この場合って警察だっけ? 110番? 119番?
どっちだ?? いやいやいや、待て。待て待て!
そうじゃない、待て待て待て。落ち着いて考えろ、俺!
「この状況、なんとかならないか?」
庵藤の死はもう仕方ない。
ショックだが、悔やんでも庵藤は生き返らない。
事実としてはこれで暴露問題は解決した。
俺と庵藤の関係を知ってる人間は他に誰もいない。
庵藤の死体さえ処理できれば……
いやいや、そこまでいかずとも事故死に見せかけることができれば……俺のキャリアも安泰だ。
「庵藤だって俺が不幸になることなんて望んでいないよな。……たぶん」
そんな都合の良い考えが頭をよぎる。
この時は魔が差したとしか言いようがない。
「自首」と「隠蔽」の間でまだ心は揺れていたが、隠蔽の誘惑に俺の心は傾いていた。
一体、どうすればこの状況を乗り切れる?
どうすれば俺の犯罪を隠蔽できる?
散々に乱れる脳髄で俺が必死にその答えを探し始めた瞬間、
「テッテレーッ♪」
俺は飛び上がる程に驚いた。胸ポケットのスマホがけたたましい着信音を鳴らしたのだ。
昭和84年9月2日20時11分 ――配信開始の11分前――
反射的に電話に出たのと、発信者の名前を視認したのはほぼ同時だったと思う。
「……あ、繋がった!」
電話の相手は古賀あすなさん――、マネージャーだった。
「若色さん、どうしたんですか。配信の時間もう過ぎてますけど、何かトラブってます?」
「えっ、あ……えっ……」
うろたえながら腕時計を見ると時刻は既に20時過ぎ。
確か、今日は20時からの配信予定だったはずだ。
「ひょっとして、気分が悪いとか?」
気分……気分はもちろん最悪だ。こんな最悪な一日はない。
「い、いや、大丈夫だ」
「ホントに? 声が震えてますけど……。若色さん、急に怒って出て行っちゃったから、ちょっと心配になって」
しまった! と俺は心の中で叫んでいた。
そうだった、庵藤からの電話を受けた時に古賀さんも側にいた。
こんなのメチャクチャ俺が怪しいじゃないか!
個人間トラブルからの過失致死傷罪……完璧にそれじゃん!
「いや、あれは、ごめん、別の仕事でトラブっててさ」
「別の? え、若色さん、もしかして闇営業……」
「や、違っ! 仕事っていうか、家事! 家事分担の話!」
「独身ですよね? まさか同棲? 今、部屋に誰かが……」
「ち、違……違う! 違ぁぁぁう!」
あ、あああ……。
我ながら悲しい程にダメダメだ。
語れば語る程にボロが出る。
まるでボロの自動販売機だ。
「なんか、おかしいですよ? やっぱり体調悪いんじゃないですか?」
「い、いや、それは違う。本当に違う。本当に大丈夫だから。大丈夫」
「……まぁ、それなら良いですケド。じゃあ、配信お願いしますね。みんな待ってますよ」
「あ、ぁぁ、うん……」
これは……なんとかなったのか?
なんとか古賀さんを誤魔化せたのか?
でも、こんな調子で俺は犯罪の隠蔽なんてやり遂げられるのか?
焦りと不安で黙りこくってると、俺を心配したのか、また古賀さんが何か言っていたが、正直、何も頭に入って来ない。
チラリと足下を見た。白目を剥いてタラコ唇で死んでいる庵藤と目が合った。
変な服を着てる。
顔が真っ赤だ。
温泉旅行で深夜まで大酒を酌み交わし、赤ら顔でワハハと笑っていた庵藤の顔がフラッシュバックした。
「若色さん、聞いてます?」
「殺した」
「……はい?」
古賀さんがキョトンとした声を出した。
「友達を殺した」
無理だった。
端から隠蔽なんてできるはずがなかった。
俺にはそんな能力もないし、庵藤のことを忘れて生きていくこともできそうになかった。
雨音と雷が鳴り響く中、俺が言葉を継げずに押し黙っていると、
「はい?」
古賀さんが壊れたテープレコーダーのように繰り返した。
この時は、まさか古賀さんからあんな言葉が出てくるなんて思わなかった。
その結果として、俺は死体の隣で『配信すると死ぬゲーム』を実況配信するハメになってしまうのだが――……。
俺も自分を落ち着かせるべく、煙草を取り出した。
禁煙は何度もチャレンジしたが、ことごとく失敗してきた。
外ではポツポツと雨が降り始めている。
紫煙を吐き出しながら俺自身も気持ちを整理し始めた。
UMBRELLAってなんなんだろう。
何のためにやっていたんだろう……。
元は俺がゲームが結構好きだったから、得意だったから始めたはずだ。
なのに最近はアイツの配信すらほとんど見ていない。
俺が成功できなかったのにアイツは成功した。
正直、嫉妬心があったのだろう。
自分の実力ではないところで自分が評価されることへの違和感もあった。
だから自然と配信から目を背けていた。
忙しいとか理由を付けて「見ない」ことを選択し続けた。
温泉旅行の時も庵藤とチャンネルの話は一切しなかった。
小学校や中学校の頃の思い出話やバカ話ばかりしていた。
庵藤からも一切話を振ってこなかったのは、アイツも俺が配信を見てないことに気付いてたんだろう。
だから、そうなんだ。
誰よりも「庵藤圭司」を見ていなかったのは俺だったんだ。
視聴者も庵藤を見ない。一番恩恵を受けている俺も庵藤を見ない。庵藤がああなってしまったのは当然だ。
「俺が一番……庵藤を追い詰めてたんだ」
確かに、俺には償いが必要なのかもしれない。
それにこれから先、俺がどんどん有名になっていっても、ずっとこれを続けるんだろうか?
どこかのタイミングで週刊誌にでもスッパ抜かれたら、その時のダメージは今とは比べ物にならないだろう。
「今、暴露するのも悪くないかもな……」
もっとも、やり方は重要だが……。
俺のダメージを抑えつつ、庵藤の新しい門出を応援するような形でうまく演出できないだろうか?
そうだ、ピンチではなく、これをチャンスに変えるんだ。
俺と庵藤ならきっとできる!
一緒に考えれば絶対に妙案が浮かぶはずだ。
俺の腹は決まりつつあった。
庵藤の決定がどうであれ俺はそれに従う。
庵藤の意志を最大限に尊重する。
それでいて庵藤自身も幸せになれるルートを探す。
アイツと一緒に模索する。
俺はアイツとこれからもずっと友達でいたい。
それを最優先する。
そう思いながら俺は待った。
二本目の煙草が短くなり、三本目に火を付けた。
まだ来ない。
いいよ、庵藤。俺はいつまでも待つ。
じっくりと気持ちを整理してくれ。
おれは紫煙を吐き出しながら、雨雲に隠れ始めた月を眺めて、次の煙草を取り出す。
腕時計を見た。
雨脚は強くなり、灰皿には俺の吸った煙草がいくつも投げ捨てられている。
な、なあ、庵藤……。
ちょっと、ゆっくりし過ぎじゃないか?
いや、分かる。大事な人生の岐路だ。焦ることではない。大丈夫だ、俺も付き合うぞ。
――ゴロッ、ゴロゴロ、ゴロッ……。
雷鳴が轟き、真っ暗な空に光が走る。
外はすっかりザーザー降り。
冠水する程の大雨だ。
指先で持てない程に煙草が短くなり、俺は最後の一本を灰皿に投げ捨てた。
「……お、遅すぎる」
いや、確かに俺は言った。
「ゆっくり気持ちを整理しろ」と。
でもちょっと、遅すぎるよな……。
ここまで来ると心配になってくる。
アイツ、まさか自殺とかしてないだろうな?
俺はためらった末にドキドキしながら扉を開けた。
「お、おーぃ、庵藤……お前、死んでないよな……?」
遠慮がちに部屋の中を覗き込む。
死んでた。
庵藤、死んでた。
白目を向いて舌を突き出したタラコ唇の変な顔で床の上に転がっていた。
手も顔も真っ赤だ。
でも、俺は眼の前の光景が全然意味が分からなくて、
「何やってんだコイツ」くらいの気持ちで普通に靴を脱いで部屋に入っていき、
そして、庵藤の近くまできて「あ、死んでる」と気付いた瞬間に、
――ドスン
と尻もちをついて、腰が抜けた。
同時に窓の外の闇夜を雷の強烈な光が引き裂いた。
雷鳴の中、雷の光に照らされた俺は真っ青な顔をしていたと思う。
「ふーぅひぃー! ふひぃぃーっ!」
悲鳴とか出なかった。
心臓がバクバクして、声にならない呼気が口と鼻から漏れるだけだった。
ビビりまくる俺の内心とは別に、
「死体の第一発見者のリアルな反応ってこれなんだな」
「今後の演技の参考になるな」と、
頭の中の誰かがそんな妙に冷静な反応をしていた。
「ぉ、ぉおぉぉおぉぉ……」
しばらく動転した後、俺はメチャクチャ怯えながらも庵藤の鼻先に指を近付けた。
呼吸……してない。
手首を掴む。分からん。脈、ない気がする。でも自信ない。押さえる場所を変えて何度も確認する。
あ、ダメだ。これ、やっぱりない。脈、ない。ないわー。
い、一体、どういうことなんだ??
自殺……には見えない。
辺りには首吊りロープもなければ手首に傷もない。
じゃあ、なんで庵藤は……と思った瞬間に「あっ!」と気付いた。
あれだ。やってた。思い切り後頭部ぶつけてたわ……。
俺が張り倒した時に庵藤がラックにぶつかって……あれの、当たりどころが……
「ぁ……ぁぁぁぁぁ……」
や、やっちまった……。
完全に事故ではあるが、殴るつもりで殴って相手が死んだのだから、これは確実に犯罪……過失致死傷罪ってやつか。
だが何より、自分が庵藤を殺してしまったことのショックが大きかった。
これからもあいつと一緒に頑張ろうと思った矢先だったのに!
と、この辺りでようやく、俺の頭の中に「救急車」というワードが浮かんできた。
いや、でももう死んでるし……この場合って警察だっけ? 110番? 119番?
どっちだ?? いやいやいや、待て。待て待て!
そうじゃない、待て待て待て。落ち着いて考えろ、俺!
「この状況、なんとかならないか?」
庵藤の死はもう仕方ない。
ショックだが、悔やんでも庵藤は生き返らない。
事実としてはこれで暴露問題は解決した。
俺と庵藤の関係を知ってる人間は他に誰もいない。
庵藤の死体さえ処理できれば……
いやいや、そこまでいかずとも事故死に見せかけることができれば……俺のキャリアも安泰だ。
「庵藤だって俺が不幸になることなんて望んでいないよな。……たぶん」
そんな都合の良い考えが頭をよぎる。
この時は魔が差したとしか言いようがない。
「自首」と「隠蔽」の間でまだ心は揺れていたが、隠蔽の誘惑に俺の心は傾いていた。
一体、どうすればこの状況を乗り切れる?
どうすれば俺の犯罪を隠蔽できる?
散々に乱れる脳髄で俺が必死にその答えを探し始めた瞬間、
「テッテレーッ♪」
俺は飛び上がる程に驚いた。胸ポケットのスマホがけたたましい着信音を鳴らしたのだ。
昭和84年9月2日20時11分 ――配信開始の11分前――
反射的に電話に出たのと、発信者の名前を視認したのはほぼ同時だったと思う。
「……あ、繋がった!」
電話の相手は古賀あすなさん――、マネージャーだった。
「若色さん、どうしたんですか。配信の時間もう過ぎてますけど、何かトラブってます?」
「えっ、あ……えっ……」
うろたえながら腕時計を見ると時刻は既に20時過ぎ。
確か、今日は20時からの配信予定だったはずだ。
「ひょっとして、気分が悪いとか?」
気分……気分はもちろん最悪だ。こんな最悪な一日はない。
「い、いや、大丈夫だ」
「ホントに? 声が震えてますけど……。若色さん、急に怒って出て行っちゃったから、ちょっと心配になって」
しまった! と俺は心の中で叫んでいた。
そうだった、庵藤からの電話を受けた時に古賀さんも側にいた。
こんなのメチャクチャ俺が怪しいじゃないか!
個人間トラブルからの過失致死傷罪……完璧にそれじゃん!
「いや、あれは、ごめん、別の仕事でトラブっててさ」
「別の? え、若色さん、もしかして闇営業……」
「や、違っ! 仕事っていうか、家事! 家事分担の話!」
「独身ですよね? まさか同棲? 今、部屋に誰かが……」
「ち、違……違う! 違ぁぁぁう!」
あ、あああ……。
我ながら悲しい程にダメダメだ。
語れば語る程にボロが出る。
まるでボロの自動販売機だ。
「なんか、おかしいですよ? やっぱり体調悪いんじゃないですか?」
「い、いや、それは違う。本当に違う。本当に大丈夫だから。大丈夫」
「……まぁ、それなら良いですケド。じゃあ、配信お願いしますね。みんな待ってますよ」
「あ、ぁぁ、うん……」
これは……なんとかなったのか?
なんとか古賀さんを誤魔化せたのか?
でも、こんな調子で俺は犯罪の隠蔽なんてやり遂げられるのか?
焦りと不安で黙りこくってると、俺を心配したのか、また古賀さんが何か言っていたが、正直、何も頭に入って来ない。
チラリと足下を見た。白目を剥いてタラコ唇で死んでいる庵藤と目が合った。
変な服を着てる。
顔が真っ赤だ。
温泉旅行で深夜まで大酒を酌み交わし、赤ら顔でワハハと笑っていた庵藤の顔がフラッシュバックした。
「若色さん、聞いてます?」
「殺した」
「……はい?」
古賀さんがキョトンとした声を出した。
「友達を殺した」
無理だった。
端から隠蔽なんてできるはずがなかった。
俺にはそんな能力もないし、庵藤のことを忘れて生きていくこともできそうになかった。
雨音と雷が鳴り響く中、俺が言葉を継げずに押し黙っていると、
「はい?」
古賀さんが壊れたテープレコーダーのように繰り返した。
この時は、まさか古賀さんからあんな言葉が出てくるなんて思わなかった。
その結果として、俺は死体の隣で『配信すると死ぬゲーム』を実況配信するハメになってしまうのだが――……。

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