私服の時間

清水レモン

借り物競争

渡されたメモに書かれていたのは
『好きなひと』
なんだよそれあんまりじゃんか
見世物になりたくない
けど彼女に手を伸ばした

察した彼女が私の手をとる
見世物にはしたくない
けど迷う余裕もなく走り出す

ゴールを切ればテープまとわりついて
息切れが気持ちいい
ひやかされるのは気持ち悪いけど
しばらく彼女とうろうろする

だって呼吸が乱れたまんま

ひらめくアイデアって言ったって
所詮どこからともなく来た指令
こんなメロディ
どんなリズム
そんなポエム
あんなエモり

この手を伸ばし
その手を招く
どの手を選ぶ
あの手が呼ぶ

ああすべて借り物ですよね

つくってみたよ
オリジナルだよ
ゆうべ書いたし
これこそ自分だ

なんて笑っても借り物でした

あまりにも呼吸が整わなくて
体育館まで歩いてしまった
校庭の騒ぎが遠ざかって
焼却炉の匂いがする
戻らなきゃ
戻らなきゃだね

結局あのあと特になにもなく
不安の雲は消え失せていたし
誰かにイヤナ思いさせられず
あっけにとられた路地と路地

あの日を境に
気にしなくなって
その日を区切りに
遠慮しなくなる
まわりの視線が別方向
私の宇宙が横たわる

扉を開ければ美少女美男子
ときめく胸のうちに星ひかり
扉を閉めても美男美女
面白可笑しくエピソード

そんな教室にいられない
あんな脅迫は耐えがたい
どんな協力を請えばいい
私と彼女の路地と路地にほら
カラスノエンドウが咲いている

よってたかって雑草呼ばわり
されてもシラベリャ図鑑に載ってた
私と彼女は文字の誤字を正そうとするけど
ユキヤナギにはかなわない


せめてもの償いに手紙を書けば
どんな言葉でも借り物です

まるで私の真心だなんて
フリをしてみても借り物です


うそ いつわり 借り物
でも
これはどうだろう
じっと手を

それはどうだろう
きみの手を

あれはどうなのか
つないでみせる

私と彼女の地球儀は月もついていて
水のない海が待っている





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