私服の時間

清水レモン

あせって消したら残った

感情の波が押し寄せてくる
防波堤を築いて待ち構えた
照りつける陽射しの熱さが
凍てついていたはずの水を沸かせにくる

壁にかけた鏡 鏡 鏡
屈み問う私はこのままでいい?

崖におちたハサミ ハサミ どこに
あんなに隠し持っていたはずなのに

うっかりしたのかよ

髪型ととのえ肌も決めた
選んだシャツに淀みなどない
会うまで時を揺るがしそうなトラブルなど起きないだろう

理性的に制的に制御して抑えた
奇跡的に静的にコントロールできた
ぬかりない
とめどない
心臓のドクドクと鼓動に酔いそうで

ほんのちょっぴり油断してしまったのかもしれないな
君の姿を見つけた瞬間
なにもかもを忘れた


汗をかくのは気持ちいい
でも自分の匂いが嫌い
無味無臭で鈍感になりたい
風に髪がなびいただけで
敏感に反応しちゃうから

魅力的で清適に性的なたたずまいは
記録的な感激を招いてしまうみたい
ころあいを見計らい
そりゃあ仕掛けるつもりでいたけれどさ?

ふいに湧いて噴き出した本能が香りを解き放つ
あせって
あせって
あせって消したら残った
ダメって
ダメって
見られたらマズイ
ばれないように工夫する余裕もなく
君の前で無防備になってしまった


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