ほっとけないよ?

清水レモン

あってないようなもの

 おそらく彼女の家は厳しい。門限もあるだろう。
 『けど従順じゃないってことかな。あるいは不満も』
 おれは会話から予想する。
 父親は厳格で、おそらく門限は午後九時。
 ただし、門限を破ったことがないので実際どうなるのか彼女自身も知らない。

 『大変そうだ。がんばってるんだろうな』

 と心が納得する。

 同時に、ゆさぶりたい気持ちがこみあげてきた。それをおかまいなしに質問が飛び込んでくる。

 「シュートのうちは? 年頃の男の子は干渉されがちでしょう」

 「するどいね!」おれは驚きを隠さずに反応した、
 「過干渉かかんしょうまっしぐらさ。もうかなりのガチだよ」

 「そんなふうに見えないけどね」

 「親との約束は守るタイプなんでね」

 「へえ」彼女が真顔で驚きの表情だ。
 なにげに見えた紅茶それほど減っていない気がする。おれはコーヒー半分以上もう飲んでしまったが。

 「門限だってあるよ」

 「ほんとう!? 意外ね」

 「なにがどう意外なのかわかんないけど門限あるしちゃんと守ってる」
 
 「ちなみにどんな門限なの」

 「夜10時まわりそうなら電話すること。零時過ぎてからの外出は事前に申し出ておくこと。以上」
 おれは正直に言った。
 実際そのとおりで、帰宅が遅くなるのに電話連絡を怠ると激怒される。

 「それって門限? あってないようなものじゃ…」

 「てことは?」おれは逆に訊くけど「きみんちも似たようなかんじなの」

 噴き出しそうになる彼女、
 「なんでそうなるの」
 笑ってるような怒ってるような曖昧で優しい雰囲気が声ににじんでる。

 「エリカちゃん自分でさっき言ってたじゃん?」
 そうさ、あってないようななんとかかんとかって。

 「…ちゃん?」ひとりごと彼女が斜め上空を見あげた。どっち見てるのさ。

 「いちおう聞く?」おれが確認する。

 うなずいて「聞く」と即答された。

 
 

コメント

コメントを書く

「学園」の人気作品

書籍化作品