ほっとけないよ?

清水レモン

星めぐる

 「わかった」
 おれは思わず答える「わかったよ恋愛小説それ」

 彼女は黙ったまま凝視している。
 おれのこと?
 それとも別のなにかが見えているの、だろうか。

 「ところでさ」
 おれは質問をすることにした「時間どのくらい大丈夫? このあと」

 「そんなに退屈ですか。もうここにいることが」
 彼女の笑顔と紅茶の香り。
 フーっとカップの表面を息が吐かれて香ったかのよう。

 「気を悪くしたならごめん。
  門限とかあると迷惑かけちゃうから」

 「もうすでに迷惑かけてるって発想は?」
 ニヤッと、なにか企む悪い子のような笑顔。そんな表情もできるんだね。

 「ないな」おれは即答した。

 まるで声を押し殺すみたいに笑ってる彼女を見て、ちなぜか癒される。

 「門限ならあるようでないもの、で、あるにはあるかな」
 
 「ありがと」おれは即答。

 「なんに対する感謝なの」

 「あるんだかないんだかわかんないものを教えてくれて」

 「遅く帰るとマズイとは思うし、かといって目覚ましアラームかけてあるのと違うし」

 「うん。つまりエリカは愛されてるんだ」
 思わず自然に呼び捨てファーストネームで言ってしまった。

 「ええ。そりゃもう」
 にこやかで柔らかい満面の笑みっぽくて、瞳が笑っていなかった。
  

コメント

コメントを書く

「学園」の人気作品

書籍化作品