ほっとけないよ?

清水レモン

恋愛小説ってどういうの

 「友だちにいます、小説家になりたいっていう子が。

  私は書くより読むほうが得意だから。

  よく見せてもらってるよ」

 さっきまでよりも楽しそうに語り始めた彼女が、なんだか眩しい。後光がさしてるのか、夕暮れの残照か店内の照明の加減か。理由はわからないけど、むちゃくちゃ明るくなった気がする。

 「どんなの書いてるの? たとえば」
 と質問された。
 どんなの書いてる、か。
 おれは答を考える、

 「詞し」

 「詩し? ですか」

 「うん。詞し、だからなんていうのかな」

 「好きな詩人は誰」

 「詩人ていうと中原中也が思い浮かぶ」

 「うんうん」

 「そうだなあ、あてはないけど歌にしたいっていうのがあるか。あるな」

 「歌詞ですか」

 「関係ないけどシンガーソングライターには憧れる」

 「たとえば」

 「来生たかお、さん。とか好きだな」

 「お姉さんが作詞してますよね、聞いたことならあります」

 「曲もいいけど詞もいいんだよね!」

 「自分で歌ったりは」

 「あんま、しない。好きだけど、歌うの。でも聴くほうが多いな」

 「私は普段あんまり聴かないんですけど鼻歌なら歌いますよ」

 「ハナウタかい?」

 「ええ。フンフンフーン♪ って気づくと歌ってます」

 「いいね!」

 「でしょ?」

 「なんならスキップしちゃうとモットいい」

 「してるかも」
 と言ったあと、楽しそうに恥ずかしそうに誇らしげにウフフて微笑んでる。
 
 「じゃあ今度ぜひシュートの詩を見せてください」

 「いいけど」

 「私、歌います」
 
 「いいね。ハナウタで」

 「ええ。鼻歌でスキップかましながら」
 
 「エリカ…ちゃんの友だちが書いてるのはどんな」
 「エリカです『ちゃん』はダメ」
 「エリカ…は、どんなの書いて」
 「私じゃなくて友だちがね。恋愛小説」
 「へえ」

 おれは思い浮かべる。
 『恋愛小説って、どういうのをいうんだっけ?』
 

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