ほっとけないよ?

清水レモン

そういえば以前どこかで

 ドラマ主題歌だっけ、異世界アニメだっけ。
 何度も聴いた覚えがあった。
 「僕はどうかしてる~僕はどうかしてる~」
 と繰り返されるサビのフレーズが気になって気になって!

 おれはBGMを振り払うようにしゃべりだす。

 「ふだんも、あの電車?」

 もっと違う聞き方あるだろ。
 ていうかオマエまずは自己紹介するんじゃなかったっけ。
 お互いの自己紹介をしましょって話、どこいった。
 と、脳が騒いでる。
 
 「ううん」
 彼女は首を振らずに否定する、
 「たまたま。はじめてだよ」

 「そっか」

 「そ」

 「うん」

 「…」

 (はじめて!?)

 おれは違和感を覚える。たまたま、はじめて。それじゃあ、
 「ふだんはどうやって通学」
 と思わず質問ひとりごと。

 「いつもは車で送ってもらってる。てた。おとうさんかおかあさんどっちか」

 「今朝は用事かなにか」

 「みたいな感じ。よくわかんないけど」

 「じゃあたいへんだったね」

 「うん」
 目を大きく一瞬あけて、ほんの少し身を乗り出して、でもすぐ戻りながら、
 「たいへんだった。とにかくもうなにあれって感じ。なんなのあれって」

 朝の満員電車は正直キツイ。いくつになっても慣れない。あまり冷静になって考えてしまうと、イヤであることを必要以上に自覚するからほどほどにしている。
 「おれは満員電車キライだ」

 「キライでも慣れてたよね」

 「そりゃまあ何年も何年も」
 おれは言いかけてくちを閉じた。しゃべりすぎじゃないだろうか、と思ったからだ。

 「何年もって、いま何年生なんですか」

 「三年だよ」

 「高校、よね」

 「そりゃ」

 「三年。三年間。何年もって? 三年間。三年間は長いといえば長いのかしら」
 そういう質問なら、ありがたい。
 おれは中学から電車通学さ。
 なんなら、小学生のときから電車で毎日ゴトゴト揺られている、塾だけど。
 そこで、

 「あらためまして自己紹介」
 と、おれは切り出した。

 「ええ」
 彼女は席ソファーから体を起こし、ふたたび身を乗り出してきた。
 「あらためまして、そういえば以前どこかでお会いしたことあるかしら?」
 ちょっとだけ、なにかに興味を持ちはじめたような視線が向けられた。
 

コメント

コメントを書く

「学園」の人気作品

書籍化作品