ほっとけないよ?

清水レモン

記憶の再生と再記録

 自分で自分が嫌になる……ということが、あまりない。
 基本的に自分が好きで自分の決断が圧倒的に良いとさえ思い込める性格。批判されても、それはそれ。意見が違うからといって、対立を深める理由にはならないと考えている。
 そんなわけで、背中を預けられる相棒がいるし、ことごとく意見が対立しまくる幼なじみもいる。嫌味しか言われた記憶がないような同級生も少なくない。
 なにか言われて、その内容が嫌だなと思ったら……いやまあ、いいやそんなこと。

 世界はひとつとは限らない。そのことは子供の頃から感じている。
 パラレルワールドがあるとして、境界線を越えることができるのかどうか考えたとき、とりあえず不可能とは限らないんだろうなと思った。
 会えば喧嘩。そんな、どうしようもない縁のひとりに科学者がいる。小学生の頃から優秀だった。なにかにつけて、つっかかられた。そのたび喧嘩。理論武装が得意なのだろう、あるいは左脳が発達していたとか。言い合いになると、まず勝ち目がない。ゆえに拳で臨むわけだが、小学校は「喧嘩両成敗」だったので双方共に罰を受ける。
 おれはそれで納得してた。なにしろ、言いがかりつけられて喧嘩になって、その果ての結末だ。言われっぱなしはできなかった。むしろ殴って蹴って、ぶっとばしてスッキリだよ。もちろん殴り返されると痛いし、思い切り平手打ちを喰らってしまったこともある。あの時は正直まいった。
 『どうしてくれるんだよ。おまえのせいでこっちまで怒られたじゃねえか』
 と、喧嘩両成敗後の校門前で言われるのがおちだったが、もとはといえばそっちが因縁つけてきたからだろう?
 『覚えてろよ!』
 とステゼリフもお決まりだったし。
 誰がオマエのことなんかいちいち気にするもんか。ましてやいちいち覚えておくものか。
 そう思っていたのにさ。
 結局なんでなのか、いまだにこうしてスラスラ思い出せてしまう。実に気持ち悪い。だが、これはこれ。思い出してしまうのはしかたないんだよ、台風がやってくるようなものなのだから。大切なことは、しっかり対策をして、安全第一をはかり、やりすごすこと。
 忘れようと努力したこともあったげ、記憶の再生と再記録につながっただけだよ。だから自然に水に流すことにした。心掛けたのは距離をおくこと。とにかく会わない。会わなければ、物理的喧嘩は発生しないし、聞きたくない言葉を聞かずに済む。
 『このまえの同窓会どうして来なかったの?
  あいつも丸くなったし、会いたがってたよ~』
 なんて別の同級生に言われたこともあったが、そうですかどうぞおかまいなく。
 かなり時間はかかったけれど、いまは怒りに震えることは、まずない。思い出して気持ち悪くなっても、低気圧で数時間頭痛に苦しむのと似たようなこと、じきに通り過ぎる。
 だから気にしないし、思い出しても通過していくのを見送るだけ。
 空を宇宙ステーションが通過していくのを眺める、それと似たようなものさ。

 朝の閃光が廊下にいても感じられる。空気そのものが発光するらしいよ。
 

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