ほっとけないよ?

清水レモン

あらためて思い直した

 お知らせトーンが鳴り響く。
 
 ギルドメンバーのヒデヒラさんからメッセージです

 無機質な声だと思っていたけれど、こうやって定着しつつある。
 すぐに読もうか迷ったが、

 「再生して」
 おれは命令した。

 二件 あります

 あれ?
 増えたのか。


 おーい、どうして昨夜こなかったんだよー
 
 プー

 今夜こっちムリ わるい

 プー

 
 『なにか約束していたんだっけ?』と記憶を探るが何も思い浮かばない。
 急いで確認する必要なんてなかったな、とあらためて思い直した。


 雲海の下のほう閃光きらめいて季節はずれのゲリラ豪雨みたいだ。
 「夕立」と呼ばれていたのは、いつの日か。いや。朝でも昼でも関係なく降るなら、もはや夕立ではないのだろう。
 気圧の変化で頭痛が起きる。できれば動きたくないときだってあるさ。なんなら頭のなかすべて全世界に公開してもいいから自動思考にしてくれないか。
 やらなければいけない仕事。今日のマストだろ、どうせ積みあがってる。やらなくちゃいけないことは、やらなくちゃなにも始まらないってことさ。
 家賃収入で暮らしていけると聞いたときから、うすうす感じていたんだけどね。なにもしないでいいわけないじゃん。
 他のオーナーはどうだか知らないが、放置しておくのは問題だろう。
 通路に捨てられたゴミ。張り替えていないポスター。無法地帯な掲示板。あきらかに住んでいないだろって顔が跋扈するフロア。どこまでが公共で、どこからが私道なんだっけ。
 そもそもマンションに所有権もないだろうよ。
 一棟まるごとならともかく、おれが担当するフロアこの床面積。
 それにしても、ここ東京バベルは今日も平和だ。平和だけれど違和感がいっぱい。違和感を見逃すと目をつけられちゃうぜ?
 と、荒々しく熱く語りたいけど、うっとうしいって煙たがられてしまうんだろうな。

 地上、一万メートルなんだっけか?
 酸素の薄さにも慣れてきた。


 あたらしいメッセージが 五    件あります
 再生しますか


 「いまは、いい」
 なにも考えずに反応したら、

 承知しました再生します ピー


 「いや、いいって言ったろ聞こえないのか? いまは、いいって」

 おーい、このあと

 プー


 しかたなく続きを待つが無音、そしてプー。それが何回か繰り返されて、

 完全に黙り込んだ。


 声の主からすると、なんのことはない。ヒデヒラじゃんか。
 同じギルドに所属し、同じフロアに住んでいる。
 するとインターフォンが鳴った。

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