可能性のバイミー

360回転

彼女との幸せな未来に賭けるのですね?

彼女が鎌を振ると、私の足元が発光を始める
私はその光を見つめながら、彼女には本当に力があるのだなと感心をしていた
「ほんにゃらほにゃほにゃほにゃにゃにゃ」
なにやら訳の分からない呪文まで唱えてるし
「ほんにゃらほにゃほにゃほにゃにゃにゃ」
「ほんにゃらほにゃほにゃほにゃにゃにゃ」
「気が散ります、やめてください」
「はい、すみません」
叱られたので大人しく待つ事に決めて、私は目を閉じた
「ほんにゃらほにゃほにゃほにゃにゃにゃ」
ガン!
「ほんにゃらほにゃほにゃほにゃにゃにゃ」
ガン!ガン!
なにやら地面を鎌で叩いている音も聞こえるが、これも必要な行動なのだろうと、無言で待ち続けた
4.5分しごふんじっとしていると、足元の光が消えていくのが感じられた
私が目を開けあけ彼女を見つめると、彼女は私の事を睨みつけてから、話しかけてくる
「過去への干渉は終わりました、あなたの未来は書き換わり、最善の未来を引き寄せました」
彼女の言葉を聞いて、私は尋ねる
「では、私と彼女は結婚したって事ですか?」
私の質問に彼女は少しだけ、目つきを悪くしながら首を横に振った
「いいえ、あなたと彼女の破局は以前より早まりました」
「え?それは一体どう言う?」
「あなたが指定したターニングポイント、5月6日に干渉し、あなたには早めに家に帰り、彼女の誕生日を祝うように働きかけました、しかしその時には既に彼女の心はあなたの元にはなく、別の男と誕生日を過ごしていたのです」
「そんな同棲までしてたのに?」
「同棲していようとも関係なかったみたいですね、5月6日に男の家に呼ばれた彼女は二人で楽しい誕生日を過ごし、誕生日を祝おうとしてたあなたは原因を知り、以前よりも早い破局を迎えてしまったようです」
私は酷すぎる展開に、膝から崩れ落ちました
そんな私を見て、バイミーは私の肩を叩きながら言いました
「ポイントを間違うと、明るい未来に繋がっていない事もあります、あと31回ありますから、これからですよ」
こいつは悪魔か何かか?
31回あると言っても、その回数は自身の寿命な訳で、おいそれと失って良いいいものではない
1年あれば様々な事が実現可能なはずだ
そんな貴重な1年と言う時間をこんなくだらない事に消費してしまった事に、私は酷い喪失感を感じていた
そんな私の心境など知らずに、バイミーは言葉を投げてくる
「それで、どうしますか?1年分の寿命を消費して得られたモノはなし、貴重な1年を無駄にして帰るか、新しい可能性に賭けるか、選ぶのはあなたです」
バイミーの台詞に、私は頭を働かせて考える
確かに1年と言う時間は貴重だ
なにかを成すにしても、なにも成さないにしても、これだけの時間があれば出来ることは多いだろう
それが有益か無益かはまた別の話だが
しかし、されど
これは今まで生きてきた50年間で、一番のチャンスで、おそらくこれを逃したら今後の私の人生でこのような出来事が起こる事はないだろう
過去を知った上で過去に干渉できる、こんなチャンスは誰もが、喉から手が出る程欲しいはずで
そんな機会が目の前にあるのに、それに賭けないなどありえないこと
まさに、今こそが私の人生のターニングポイントなのだろう
残りの回数は31回
私の寿命を80と決めると、あと3回は使っても良いいいはずで…
よし、あと3回で決めよう
そうと決まれば、問題は何処に干渉するかである
私は彼女と結婚をする為に、彼女との関係が拗れる原因を探して、そこに干渉をしなければならない
しかし、なにが悪かったのだろうか?
誕生日を祝い忘れる前に、なにかあっただろうか?彼女との思い出に思考を巡らせるが、ピンと来るものが浮かんでこない
そもそもそれが分かっていたら、破局などしなかったはずで、私の思考の外にしか答えはないのではないか?
そう考えると目の前に居るこの子に、ヒントを貰った方が答えには近づけるのかもしれない
私はバイミーに質問を投げかける
「バイミー、私と彼女が拗れた原因はなんだと思いますか?」
「なんでしょう、私は彼女の心を読む事は出来ないので、正確な答えは出せませんが、あなたの人生を鑑賞した者の一人として感想を言わせてもらうと、あなたが仕事のしすぎだったんじゃないでしょうか?」
「仕事のしすぎ?」
「はい、働きすぎです、あなたはこの時期仕事で家に帰るのが遅く、彼女はその事でストレスを溜めていた可能性があります」
「働くのは良いいいことじゃないですか?」「それはそうです、ただあなたはこの時期彼女と全く喋っていませんでしたよね?家に帰ってもすぐに寝て、朝起きても何も言わずに家を出る、そんな日々に彼女は自身の必要性を感じられていなかったのかもしれません」
「そんな事で、他の男に行きますかね?」
「あなたにとっては大したことがなくても、彼女にとっては致命的だったのでしょうね、しかし、それも仕方のない事です、あなたはこの時、管理職になりたてで、様々なクレーム処理に追われていた、女性の事など考えている暇はなかったのです」
「そうです、39歳から仕事が忙しくなって、それからは仕事の事ばかり考えていました、でも給料も上がりましたし、彼女も報告した時は喜んでましたけど…」
「それはそうです、ただやはりコミュニケーションがないと言うのはよくありませんでしたね、ただ彼女と結婚したいのであれば、管理職になる未来を捨てる他ありません」
「管理職になるのを断れば、彼女と結婚できる?」
私の問いかけにバイミーは首を横に振りながら答える
「それも、分かりません、あなたは管理職になる事で給料を増やす事に成功しました、しかしそれを捨てると言うことは結婚の未来が遠のく事をも意味しています、これもあなたの人生を見ての憶測になりますが、あなたは派手な結婚式をあげたいタイプじゃないですか?それにはそれなりの資金が必要でしょう」
バイミーの意見は的を得ていた
確かに私は式をあげるなら、周りとは違う、派手な結婚式にしたいと考えるタイプだ
大物歌手やバンド、芸人などを呼んだり、ケーキなんかもド派手で手の込んだ物を作らせてやりたい
デカい会場に、凄い人達、沢山の桜を呼ぶのもありかもしれない
とにかく最高の1日にする為に、全力を尽くす事は間違いないだろう
そう考えると確かに、管理職になる前の給料では厳しいかもしれない
しかし、給料が上がったからと言って結局はクビになるのだ
そう考えると、無理をして管理職になるよりは、ならずに彼女と幸せに暮らす未来に賭けた方が幸せかもしれない
私は決心を固めると、バイミーにお願いをした
「バイミー、私が管理職を引き受けないように干渉して欲しい、私は彼女と結ばれる未来を、その可能性を買いたい」
私の願いを聞いて、バイミーは優しい微笑みを向けてくる
「彼女との幸せな未来に賭けるのですね?分かりました、それではあなたの過去に干渉を行い、管理職にならないように働きかけます」
バイミーはそう言うと、私の前で鎌を振り始めた

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