可能性のバイミー

360回転

可能性を買いませんか?

画面の光が消えて、部屋の中には沈黙が訪れる
「どうでしたか?あなたの人生は?」
女性の言葉に、私は静かに答えた
「最悪ですね、やる事なす事空回りばかりで、見ていて痛々しいと言うか、呆れてしまいます」
私の台詞を聞いた女性は無言で私の顔を見つめてくる
私は女性の意図が分からずに質問を投げかけた
「それで、なんなんですか?この状況は」
私の質問に彼女は軽く頭を下げながら答えた
「申し遅れました、私の名前はバイミー、西村宏太さん、あなたの未来を変える為にやって来ました」
変わった名前だなと内心で思いつつ、私は尋ねる
「バイミー…未来を変える為って、どう言うことですか?」
「あなたは、今の人生に満足していないでしょう?私は人生に満足していない者の前に現れて、満足のいく未来を提供する為に存在しています」
「満足のいく未来…」
「そうです!満足したいでしょう?せっかくの人生ですから、あなたはこんな人生を望んではいなかった?違いますか?」
彼女の台詞に私は震える声で答えた
「当たり前だ…私はもっと素晴らしい人生を送りたかった…夢を叶えて、お金を手に入れて、好きな女性と結婚して、友人達と楽しく暮らす、でも全部上手くいかなかった、なに一つとして叶わなかった、こんな人生で満足なんて言える訳がない…」
私の言葉を聞いて、彼女は笑みを浮かべる
「そうでしょう、あなたの人生は上手く歩めば本当は悪いものではなかったのです、しかし、なんの因果か、ことごとく空回りをしてしまった、あの時あれをしていれば、あの時あれをしていなければ、様々な選択肢をあなたは選び間違え続けました、それが上手くいっていたら、あなたの人生は素晴らしい可能性へと繋がっていたのにも関わらず」
彼女の言葉に、様々な出来事が頭の中を巡る
やってしまった後悔と、やらないで後悔した事、あったかもしれない様々な可能性達が、頭の中をぐるぐると回っていく
彼女の言っている事は正しい、私には沢山のチャンスがあったはずである
人生を良い方向へ進ませる為の、有難い機会が
それなのに、私はそれをことごとく無駄にしてしまったのだ
ダイジェストを見てから、その思いは強い確信へと変わっていた
私は縋るような思いで、彼女に尋ねる
「私はどうしたら良いのですか?あなたにお願いをしたらやり直しの機会が与えられるのですか?」
私の質問に彼女は首を横に振る
「やり直しは出来ません、やり直しとは過去に意識を飛ばして、人生をやり直すと言うことです、私にはそこまでのパワーはありません、ただ可能性を売る事は出来ます」
「可能性を売る?…」
「はい、あなたの意識を送る事は難しいですが、今見た人生のターニングポイントに干渉して、事象を捻じ曲げる事は出来ます、捻じ曲がった事象によって現在のあなたの生活は書き変わり、あなたの望んだ未来に近づく事は可能です」
彼女の説明を聞いて、私は言った
「つまり、私がターニングポイントを指定したら、その時の行動を捻じ曲げてもらえるから、未来は変わるけど、素晴らしいものに変わった過去の体験自体は体感できないって事ですか?」
私の質問に彼女は頷き答えた
「その通りです、つまり過去を変える事は出来ても、今のあなたにそれが還元されるのは、今現在あなたが生きる今後の人生からになります」
「なるほど…もし私が過去に干渉して結婚する未来を引き寄せたとしても、結婚から現在までの楽しさは味わえないと言うことですね…」
「そうです、理解が早くて助かります、それで、どうしますか?未来を変える為に、可能性を買いませんか?」
彼女の問いかけに、私は質問で返した
「可能性を買うと言うのは、なにかお金が必要と言うことですか?」
私の質問に彼女は笑みを浮かべると、楽しそうに説明をしてくれる
「いえ、お金は要りません、ただ過去に干渉すると言うのはそれなりのパワーが必要になります、あなたの残りの寿命1年分で、一回干渉できるってレベルでしょう」
「寿命…」
「そうです、寿命です、あなたの残りの寿命は32年程ありますから、それを使って人生を好転させることが可能でしょう…ただ、使い方によってはあまり意味のないことにもなってしまうので、使いどころが重要になってきますが…」
32年と言うことは私は84歳まで生きられると言うこと
自身の寿命をカミングアウトされるのは、余り心臓に良くないなと思いつつ、私は彼女に言った
「じゃあとりあえず、彼女と別れる前のあの日に干渉して欲しい」
「あなたが彼女と別れた原因は…彼女が別の男と大人の関係を持った事が原因でしたね」
「そう、42歳の時、あの時は仕事がかなり忙しい時期で、彼女の誕生日を祝い忘れたことがあったはずだ、おそらく、あの日にちゃんと祝っていれば、彼女が他の男に行くことはなかったはずで」
私の台詞に彼女は頷きながら言う
「なるほど、なるほど、あなたが42歳の時の彼女の誕生日、つまり5月6日に干渉して、あなたにバースデーを祝ってもらうと、そう言う解釈で大丈夫ですか?」
彼女の質問に私は無言で頷く
すると、どこから取り出したのかは分からないが、私の前で怪しげな鎌を振り出した
真っ黒な鎌は彼女の身長の倍ぐらいの長さがあり、先端には鋭利な刃物が錆ひとつなく輝いていた

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