可能性のバイミー
episode 3 あなたは挫折した事がないのですか?
episode3
僕には分からない事がある…
人生は確かに苦難の連続だ…山があり谷があり、そこには数多くのドラマがある…
しかし、それでも、超えられない山はない
いくら谷に落ちたとしても、這い上がれない訳はないだろう?
人間は努力次第でいくらでも変わっていけるではないか?…
それなのに何故、人は努力を放棄し、今ある環境に甘んじ、不平不満だけを並べ続けるのか…
僕には理解が出来ない…
嫌な事があるなら、それを変える為に努力するのが当たり前じゃないか?そんな事もやらないのに不幸な顔をしながら周囲に不快感を与えて、その事について言及されると『お前には分からない』等と言い、誰にも触れられないように小さな殻の中に閉じこもる
理解して欲しいのなら、歩み寄る姿勢を見せるべきではないか?と思うのだが、不幸な顔をした人達は他人からの助けを簡単には受け取らないし、差し伸べられた救いの手に、噛みつこうとする者さえ居る…
しかし、僕は彼らの事も理解したい…分からないままでは気持ちが悪いと感じる…
彼らが、どんな境遇で育ち、どんな気持ちで生きているのか
それを知る為には、彼らと同じ立場に立たなければならないだろう
しかし、それは無理な話だ…
僕は僕だし、”不幸人”は”不幸人”だ…
僕が僕である限り、そのような境遇になる事はないだろう
それ程までに人生と言うのは、知能とマインドに支配されているのだ…
僕がもし別の誰かと入れ替わったとしても、結果は変わらない
「なんで僕が”不幸人”の事で頭を悩ませているんだ…」
独り言を呟き、パソコンに保存されていた写真を、ゴミ箱の中にまとめてドロップする
「もう飽きたよ…こんなクソゲーみたいな世界…」
プチュン!………
パソコンの電源を落としてから、グラスの中の水を飲み干す
そろそろ寝ないと肌が荒れてしまうかもしれない
僕がベッドに向かおうと作業部屋の扉を開くと、眼前に見知らぬ女の子が現れた…
僕は驚き、床に尻餅をつく
「誰?……」
問いかけると、女の子は明かりの点いていない通路から、作業部屋の中に足を踏み入れてから言った
「すみません、驚かせてしまいましたね、私の名前はバイミー…人生に絶望した者の前に姿を現す存在…」
いきなり出てきて訳の分からない事を言う彼女は、綺麗な顔立ちをしていた…
ロングの黒髪はツヤツヤで、黄色に輝く瞳には威圧感のようなモノを感じる…
声の雰囲気から悪意のある存在には感じられないが、独特なファッションをしているせいか、何処か胡散臭さがあると僕は感じた…
謎の侵入者を無言で見つめていると、彼女は冗談っぽい笑みを浮かべてから僕に言った
「なんだこいつは?と言いたそうな顔をしていますね?…私はあなたの人生を良いモノに変える為にやって来ました…」
やはり胡散臭い…僕は流れに乗るように言葉を発する
「人生を良い方向にって…具体的には?…」
「そうですね、具体的な説明をする為に…まずは場所を変えましょうか?…」
彼女がそう言うと同時に、僕は眩暈に襲われる…
そして、気づくと真っ暗な空間に移動していた…
彼女はマジシャンかなにかだろうか?…
僕は探るように問いかける
「あの、なんですかここ…これはなにかの番組のドッキリとか?…」
「いいえ、違います…ここはあなたの人生を振り返る場所です…詳しい説明は省きますが、とりあえずこのモニターを見てください」
彼女に促されるまま、ポツンと置かれている椅子に腰を下ろし質問する
「僕はなにを見せられるんですか?人生を振り返るって、まるで僕が死んでしまったみたいな事言ってましたけど…」
「大丈夫です、あなたは74歳まで生きる予定ですから…これはあなたが生まれてから29歳の現在に至るまでを、ダイジェストで見る事が出来る機械です」
「人生をダイジェストで見る事が出来る…その映像を見る事になんの意味が?…」
僕の問いかけに、彼女は少しだけ考えるような仕草を見せてから言った
「意味ですか…申し訳ないですが、質問は後からお願いします」
先程までは丁寧に説明をしてくれたのに、急に投げやりな態度を取る彼女の意図が掴めない…
僕は訳も分からないまま、モニターに映った自身の映像を見つめ続けた…
……………
「それで、結局この映像を見せた意味はなんですか?」
僕が質問をすると、彼女は答える
「この映像を見てもらった事にはしっかりとした意味があります、あなたには今から人生のターニングポイントを指定してもらいます…」
「ターニングポイント?…」
「はい、ターニングポイントです、私はあなたが指定した日付に干渉して、過去改変を行う事が出来ます…」
「過去改変…」
「はい、過去改変を行う為に、あなたは人生のおさらいをする必要があったのです…」
過去改変…アニメや漫画で見た事があるような話だ…
こんな事が本当にあるとは夢にも思っていなかった…
僕はなんとなく状況を理解し、彼女に言った
「ちょっと待ってください…そう言うのは先に言っておくべきじゃないですか?…先に言ってくれてたら映像を見ながら『ここがターニングポイントかも』とかって考える事も出来るじゃないですか?」
「それはそうです、しかし、いきなり説明から入ると聞く耳を持たない人が多いのも事実です…」
「聞く耳をもたない?」
「はい、あなたは初めて私を見た時に、どのような感情を持ちました?…おそらく怪しいだの、詐欺師っぽいだのと、疑いの気持ちを持っていたのではないですか?」
「それは…」
彼女の言う通り、僕は少しだけ胡散臭さいと感じていた…
「それが普通の反応です、いきなり過去改変の力があると言う話をしても、信じてくれる人は少ないです…しかし、映像を先に見せると結果は違います…”自身の人生”を”自身の記憶”よりも正確に映し出すモニターを見せられて、私の力に疑いの目を向ける人はあまり居ませんから…疑われていない状態で話をした方が、こちら側にはメリットがあるのです」
彼女の言いたい事は理解ができた…
しかし、やはり、事前に説明をしてくれた方がターニングポイントを選びやすいのも、また事実であろう…
僕は彼女の言葉に頷きを返しつつ、それでもと苦情を入れた
「あなたの言い分は理解しました、しかしターニングポイントを決めるのはやはり難しいですよ…僕は映像を見終わった現在、何処にターニングポイントがあったのか思いついていませんから…」
「改変ポイントが思い当たらないのは珍しい事ですよ?…ほとんどの人はやらかしたポイント…つまり、やり直したいと思うポイントを正確に把握している事が多いですから…あなたは挫折した事がないのですか?…」
「僕は…」
挫折した事ならある…最近だって付き合っていた彼女に振られて落ち込んでいたのだ…
それでも、僕は挫折を克服する事ができる…
今までだって嫌な事は沢山あったけど、僕はそれを努力で乗り越えてきた…
「挫折した事ぐらいあるよ…ただ、僕はそれをちゃんと乗り越えてきたんだ…だから僕の人生は完璧に近い…ただ、世間は違う…世間は完璧な僕を理解できない…」
僕の言葉を聞いて、彼女は首を傾げながら言う
「そうなんですか?…それでは改変する場所はないと?」
問いかけられた僕は、少しだけ考えてから言った
「対価は必要なんですか?…悪い話じゃないですし、対価次第ではやってみるのもありかもしれません…」
「対価は1回の改変につき、あなたの寿命1年分です」
「1年…それは大きな対価ですね…」
「はい、過去を捻じ曲げるのは簡単ではありませんから」
1年の寿命を使って過去を改変する…
美味しい話には見えるが、そこまでして変えたい過去なんて僕には…
……………
「さっき僕の寿命は74歳って言ってました?」
僕の質問に彼女は答える
「はい、そうです…あなたには45年の寿命が残されています」
「では、その改変を一度だけ試してみたいです」
「分かりました、改変ポイントはどうしましょう?」
彼女の怪しげな笑顔を見て、僕は言った
「待った!その前に、この改変のメリット、デメリット、細かい説明を全てお願いします!こう言う話は後からやらなければ良かったとなるパターンが多いですから…事前に契約内容を細かく書面で教えてください!」
僕の提案に彼女は少しだけキョトンとしていたが、すぐに無言で頷く
僕の目が瞬きをした一瞬、彼女は忽然と姿を消した…
「訳が分からない…」
暗い空間で独り言を呟き、僕は椅子に座り込む…
変な状況を簡単に受け入れている自身がなんだかおかしくて、自嘲の笑みがこぼれた…
僕には分からない事がある…
人生は確かに苦難の連続だ…山があり谷があり、そこには数多くのドラマがある…
しかし、それでも、超えられない山はない
いくら谷に落ちたとしても、這い上がれない訳はないだろう?
人間は努力次第でいくらでも変わっていけるではないか?…
それなのに何故、人は努力を放棄し、今ある環境に甘んじ、不平不満だけを並べ続けるのか…
僕には理解が出来ない…
嫌な事があるなら、それを変える為に努力するのが当たり前じゃないか?そんな事もやらないのに不幸な顔をしながら周囲に不快感を与えて、その事について言及されると『お前には分からない』等と言い、誰にも触れられないように小さな殻の中に閉じこもる
理解して欲しいのなら、歩み寄る姿勢を見せるべきではないか?と思うのだが、不幸な顔をした人達は他人からの助けを簡単には受け取らないし、差し伸べられた救いの手に、噛みつこうとする者さえ居る…
しかし、僕は彼らの事も理解したい…分からないままでは気持ちが悪いと感じる…
彼らが、どんな境遇で育ち、どんな気持ちで生きているのか
それを知る為には、彼らと同じ立場に立たなければならないだろう
しかし、それは無理な話だ…
僕は僕だし、”不幸人”は”不幸人”だ…
僕が僕である限り、そのような境遇になる事はないだろう
それ程までに人生と言うのは、知能とマインドに支配されているのだ…
僕がもし別の誰かと入れ替わったとしても、結果は変わらない
「なんで僕が”不幸人”の事で頭を悩ませているんだ…」
独り言を呟き、パソコンに保存されていた写真を、ゴミ箱の中にまとめてドロップする
「もう飽きたよ…こんなクソゲーみたいな世界…」
プチュン!………
パソコンの電源を落としてから、グラスの中の水を飲み干す
そろそろ寝ないと肌が荒れてしまうかもしれない
僕がベッドに向かおうと作業部屋の扉を開くと、眼前に見知らぬ女の子が現れた…
僕は驚き、床に尻餅をつく
「誰?……」
問いかけると、女の子は明かりの点いていない通路から、作業部屋の中に足を踏み入れてから言った
「すみません、驚かせてしまいましたね、私の名前はバイミー…人生に絶望した者の前に姿を現す存在…」
いきなり出てきて訳の分からない事を言う彼女は、綺麗な顔立ちをしていた…
ロングの黒髪はツヤツヤで、黄色に輝く瞳には威圧感のようなモノを感じる…
声の雰囲気から悪意のある存在には感じられないが、独特なファッションをしているせいか、何処か胡散臭さがあると僕は感じた…
謎の侵入者を無言で見つめていると、彼女は冗談っぽい笑みを浮かべてから僕に言った
「なんだこいつは?と言いたそうな顔をしていますね?…私はあなたの人生を良いモノに変える為にやって来ました…」
やはり胡散臭い…僕は流れに乗るように言葉を発する
「人生を良い方向にって…具体的には?…」
「そうですね、具体的な説明をする為に…まずは場所を変えましょうか?…」
彼女がそう言うと同時に、僕は眩暈に襲われる…
そして、気づくと真っ暗な空間に移動していた…
彼女はマジシャンかなにかだろうか?…
僕は探るように問いかける
「あの、なんですかここ…これはなにかの番組のドッキリとか?…」
「いいえ、違います…ここはあなたの人生を振り返る場所です…詳しい説明は省きますが、とりあえずこのモニターを見てください」
彼女に促されるまま、ポツンと置かれている椅子に腰を下ろし質問する
「僕はなにを見せられるんですか?人生を振り返るって、まるで僕が死んでしまったみたいな事言ってましたけど…」
「大丈夫です、あなたは74歳まで生きる予定ですから…これはあなたが生まれてから29歳の現在に至るまでを、ダイジェストで見る事が出来る機械です」
「人生をダイジェストで見る事が出来る…その映像を見る事になんの意味が?…」
僕の問いかけに、彼女は少しだけ考えるような仕草を見せてから言った
「意味ですか…申し訳ないですが、質問は後からお願いします」
先程までは丁寧に説明をしてくれたのに、急に投げやりな態度を取る彼女の意図が掴めない…
僕は訳も分からないまま、モニターに映った自身の映像を見つめ続けた…
……………
「それで、結局この映像を見せた意味はなんですか?」
僕が質問をすると、彼女は答える
「この映像を見てもらった事にはしっかりとした意味があります、あなたには今から人生のターニングポイントを指定してもらいます…」
「ターニングポイント?…」
「はい、ターニングポイントです、私はあなたが指定した日付に干渉して、過去改変を行う事が出来ます…」
「過去改変…」
「はい、過去改変を行う為に、あなたは人生のおさらいをする必要があったのです…」
過去改変…アニメや漫画で見た事があるような話だ…
こんな事が本当にあるとは夢にも思っていなかった…
僕はなんとなく状況を理解し、彼女に言った
「ちょっと待ってください…そう言うのは先に言っておくべきじゃないですか?…先に言ってくれてたら映像を見ながら『ここがターニングポイントかも』とかって考える事も出来るじゃないですか?」
「それはそうです、しかし、いきなり説明から入ると聞く耳を持たない人が多いのも事実です…」
「聞く耳をもたない?」
「はい、あなたは初めて私を見た時に、どのような感情を持ちました?…おそらく怪しいだの、詐欺師っぽいだのと、疑いの気持ちを持っていたのではないですか?」
「それは…」
彼女の言う通り、僕は少しだけ胡散臭さいと感じていた…
「それが普通の反応です、いきなり過去改変の力があると言う話をしても、信じてくれる人は少ないです…しかし、映像を先に見せると結果は違います…”自身の人生”を”自身の記憶”よりも正確に映し出すモニターを見せられて、私の力に疑いの目を向ける人はあまり居ませんから…疑われていない状態で話をした方が、こちら側にはメリットがあるのです」
彼女の言いたい事は理解ができた…
しかし、やはり、事前に説明をしてくれた方がターニングポイントを選びやすいのも、また事実であろう…
僕は彼女の言葉に頷きを返しつつ、それでもと苦情を入れた
「あなたの言い分は理解しました、しかしターニングポイントを決めるのはやはり難しいですよ…僕は映像を見終わった現在、何処にターニングポイントがあったのか思いついていませんから…」
「改変ポイントが思い当たらないのは珍しい事ですよ?…ほとんどの人はやらかしたポイント…つまり、やり直したいと思うポイントを正確に把握している事が多いですから…あなたは挫折した事がないのですか?…」
「僕は…」
挫折した事ならある…最近だって付き合っていた彼女に振られて落ち込んでいたのだ…
それでも、僕は挫折を克服する事ができる…
今までだって嫌な事は沢山あったけど、僕はそれを努力で乗り越えてきた…
「挫折した事ぐらいあるよ…ただ、僕はそれをちゃんと乗り越えてきたんだ…だから僕の人生は完璧に近い…ただ、世間は違う…世間は完璧な僕を理解できない…」
僕の言葉を聞いて、彼女は首を傾げながら言う
「そうなんですか?…それでは改変する場所はないと?」
問いかけられた僕は、少しだけ考えてから言った
「対価は必要なんですか?…悪い話じゃないですし、対価次第ではやってみるのもありかもしれません…」
「対価は1回の改変につき、あなたの寿命1年分です」
「1年…それは大きな対価ですね…」
「はい、過去を捻じ曲げるのは簡単ではありませんから」
1年の寿命を使って過去を改変する…
美味しい話には見えるが、そこまでして変えたい過去なんて僕には…
……………
「さっき僕の寿命は74歳って言ってました?」
僕の質問に彼女は答える
「はい、そうです…あなたには45年の寿命が残されています」
「では、その改変を一度だけ試してみたいです」
「分かりました、改変ポイントはどうしましょう?」
彼女の怪しげな笑顔を見て、僕は言った
「待った!その前に、この改変のメリット、デメリット、細かい説明を全てお願いします!こう言う話は後からやらなければ良かったとなるパターンが多いですから…事前に契約内容を細かく書面で教えてください!」
僕の提案に彼女は少しだけキョトンとしていたが、すぐに無言で頷く
僕の目が瞬きをした一瞬、彼女は忽然と姿を消した…
「訳が分からない…」
暗い空間で独り言を呟き、僕は椅子に座り込む…
変な状況を簡単に受け入れている自身がなんだかおかしくて、自嘲の笑みがこぼれた…
「現代ドラマ」の人気作品
書籍化作品
-
パーティーを追放された俺は、隠しスキル《縁下》で世界最強のギルドを作る-
112
-
【初稿版】特オタ~特撮ヒーローズオルタネイト~-
38
-
【コミカライズ】寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~-
516
-
山育ちの冒険者 この都会(まち)が快適なので旅には出ません-
442
-
勇者パーティーを追い出された死霊魔術師はリッチになって魔王軍で大好きな研究ライフを送る-
4
-
異世界で始める人生改革 ~貴族編〜(公爵編→貴族編-
2288
-
【書籍化】婚約者に「あなたは将来浮気をしてわたしを捨てるから別れてください」と言ってみた-
-
0
-
-
嘘と微熱〜甘美な一夜から始まる溺愛御曹司の愛執〜-
93
-
【WEB版】完璧すぎて可愛げがないと婚約破棄された聖女は隣国に売られる【ノベルス4巻コミックス3巻3/25同時発売!】-
1

コメント
コメントを書く