可能性のバイミー

360回転

キープしている自覚はあったのですね?

足元の光が消えるとバイミーさんは言った
「過去への干渉は終わりました、あなたの未来は書き換わり、最善の未来を引き寄せました」
私は微かな希望に縋るような気持ちで、バイミーさんに尋ねる
「それで…どうなったの?…」
「凄いですね…あなたの思惑通り、時也ときやさんと付き合う未来は消滅し、あなたは祐二ひろつぐさんと付き合う事になりました…」
私は自身の読みが当たった事で、僅かに残っていた、時也ときやへの想いがスッと消えていくのを感じた…
良い男だと思っていたけど、時也ときやってやっぱりそうなんだ…
「バイミーさん、私と祐二ひろつぐくんは幸せにしている?…」
私の質問に、バイミーさんは首を横に振りながら言った
「いいえ、祐二ひろつぐさんは一花いちかさんの事を蔑ろにして、他の女と遊んでいるようです…」
「え…祐二ひろつぐくんが…?あんなに純粋な男なかなか居ないと思ってたけど…」
私の台詞に、バイミーさんは説明するように言った
「そうですね…あなたの人生に出てくる彼は、私の目から見ても、とても純粋に見えます…実際、あなたと付き合うまでは、本当に女性経験がなかったみたいですから…」
「彼が女遊びを始めたのは、私と付き合う事で、女慣れしたから?…」
「それは分かりませんが、あなたと付き合う前と、付き合った後で、彼の中に何か変化があったのかもしれません…」
「キープ男の分際で…女遊びに走るとか論外…」
「キープしている自覚はあったのですね?」
「それはそうよ…ブロックする前は、この人なら純粋に私を愛してくれそう…とか思ってたから…」
「それで、どうしますか?寿命を2年使い、あなたの彼氏は変わりました…残念ながら、その彼は女遊びを覚え、あなたを大切にしないような人物だった訳ですが…」
「2年の寿命を使って、こんなに意味のない事になるなんてね…この二人に期待していた私が馬鹿だったわ…過去改変はどの辺りまで遡る事が出来るの?」
「あなたが望むなら、どこまでも遡る事は出来ます…ただ遡りすぎた場合、現在のあなたと改変後のあなたとの間に、強烈なギャップが生じます…ギャップを抱えたまま今後の人生を送らなければならないので、その覚悟だけはしていてくださいね」
バイミーさんの教訓めいた言葉を聞き、私は考えながら言葉を発する
「それじゃあ次は…20代の頃…私にアプローチをしてきたバンドマン…彼と付き合うように誘導して欲しいわ…私はその時、拓海たくみって男性と付き合ってたけど、まずは彼と別れるように誘導しましょうか…」
「なんだか逞しいですね…まるで、そのバンドマンと付き合う道筋が見えているような口ぶりですが…」
「そのバンドマンは今では売れっ子バンドのギターボーカルをやっているけど、当時は全くモテていなかったように思うし、多分私のレベルでも落とせると思う」
「彼が落ちるとしても、あなたが彼の事を好きになるかは分かりませんよ?」
「それは大丈夫だと思うわ…当時だってアプローチされた時はなんだかんだで嬉しかったし…顔も声もかっこいいから、多分、彼氏が居ない状態の私ならアプローチされたらすぐに付き合ってしまうと思うわ…」
「なるほど…勝算があるのなら、止めはしませんが…それで、どのポイントにどのような干渉を行いますか?」
バイミーさんの問いかけに、私は彼女に質問を投げた
「そうね…拓海と私が別れた原因…バイミーさんには分かる?…」
「私はあなたの人生をしっかりと確認しましたが、あなたが拓海さんと別れた原因は、私にはよく分かりませんでした……25歳から29歳まで順調に交際をしていたあなたは、ある日突然、別れを告げましたね…あれはなんだったのでしょう?…」
「あれはね、私が28歳の時に"ダイヤのように"を読ませた事が原因なのよ…」
「"ダイヤのように"…時也ときやさんにも読ませていましたよね…それが別れの原因になるんですか?…」
「ええ、なるわ…その小説には、過去の私の想いが詰まってるの…別に私は肯定されたい訳でも否定されたい訳でもない…ただ、こう言う事もあるんだよって伝えたかっただけ…自分から作って発表までしといて、何言ってるのって思われるかもしれないけど…」
私の台詞を聞いたバイミーさんは、少しだけ黙り込むと、ゆっくりとしたペースで喋り始める
「私にはあなたの気持ちが全く分かりません…発表をしたのなら、それに反応が欲しくなる…と言うか、反応が要らないと言うのなら、発表自体をしないのではないですか?…」
「そう思うのが自然ね…私でもなに言ってんだろうって感じ…実際、私が書いた他の小説に反応されるのは、とても嬉しいのよ…ただ"ダイヤのように"だけは駄目なの…上手く言語化できないけど、この小説だけは私の地雷になっているのよ…」
「よく分かりませんが、そう言う事もあるのですね…」
バイミーさんの微妙な反応を見て、私は言った
「この小説を読ませるタイミングを早めたら、私と拓海が別れるのが早くなると思うわ…25歳の私に干渉して、拓海に"ダイヤのように"を読ませるように誘導して欲しい…」
私の提案に、バイミーさんは頷きながら言った
「分かりました…それでは先程と同じように"ダイヤのように"を読ませるように過去へと干渉を行います…」
そう言うとバイミーさんは、鎌を振りながら呪文を唱え始める
「ほんにゃらほにゃほにゃほにゃにゃにゃにゃ」

ガン!

「ほんにゃらほにゃほにゃほにゃにゃにゃにゃ」

ガン!ガン!

拓海は良い男だった…今まで付き合ってきた男性の中で一番だと言って良い程に…私は光に包まれながら"ダイヤのように"なんて書かなければ良かったと、そんな事を思っていた…

コメント

コメントを書く

「現代ドラマ」の人気作品

書籍化作品