鬼畜エロゲーのクズ主人公に転生したが、エロスキル「人体支配」を〝良いこと〟に使います。

あおき りゅうま

第2話 はじめの一歩

 船が港に辿り着き俺は外にでる。

「お~これが……」

 ナグサラン王国の港町シーアだ。行商が盛んに行われている発展した港町。船着き場近くにはバザーが賑わいを見せており、地元住人達や旅人たちが行きかっている
王都に行く前に、海路であれば必ず通過しなければならない街だ。

「ヒッヒッヒ……ようやく来ましたね。アニキ……」
「ん?」

 船の上から街を眺めている俺の隣にいつの間にか猫背の骨ばった男が立っていた。
 鼻が高く両目の上にこぶが付いている醜い風貌の男だ。

「お前、誰?」
「な  お忘れですか  淫蟲いんちゅう使いのファブルを!」

 思い出した。

 『スレイブキングダム』はダークでハードな抜きゲーのため、現実ではできない色んなハードなエロシーンがある。

 その中の一つが蟲姦むしかんだ。

 虫に女の人を犯させるという、その性癖がない人にとっては理解しがたい嗜好だが、その性癖を持ってしまった者は人目をはばかり愛し続ける。抗うことのできない業を抱え、世間の目をしのびつつも蟲姦むしかんを愛する人のために、『スレイブキングダム』は応える。

 このファブルという名字すら設定されていない男は、そんな需要に応える為に生み出されたキャラである。

「ああ……いたなぁこんなキャラ……」
「きゃら?」
「いや別に」

 俺が誤魔化ごまかすとファブルはそれ以上の追及を避けて、ゴホンと咳払いをする。

「ここからアニキの復讐が始まるのですね……アニキの部下の帝国兵たちはすでに王都に潜入しています。これからナグサラン王国を転覆させ、女どもを私の蟲の苗床に……ヒッヒッヒ!」

 懐から小瓶を出すファブル。
 小瓶の内には蜂のような羽虫が飛び交っており、非常に気持ちが悪い。
 あの蜂のような虫は、名前は忘れたが魔力を吸い取る能力を持った虫だ。刺されると魔力を吸い取られ、著しく力が減退してしまう。
 そのせいで、この国最強戦力の女騎士が無力化され、国家が転覆する一因になってしまう。そういうシナリオだったはずだ。

「クライス殿!」

 考えていたら早速だ。
 ナグサラン王国最強戦力の女騎士がやってきた。

「ようこそおいでくださいました!」

 軍服を着ているが胸元と脚を露出させた金髪の女がやってくる。
 レン・ナグサラン。
 この国の第一王女であり、最強の魔法剣を扱う女騎士……というより姫騎士だ。
 光の剣を生み出せる能力があり、それを伸ばして超ロングレンジの剣にしたり、何百本も生み出し矢のように放つ、某ゲームに出てくる金髪の英雄王とそっくりの技を使う。
 と———いう情報は『スレイブキングダム』というゲームにおいてほぼ読み飛ばされている。
 設定としてあるが、そんな描写は劇中で数少なく、ゲームをプレイしているうちに忘れられる。何故なら、『スレイブキングダム』はエロシーンがメインであり、その他のバトルシーンなど邪魔でしかないからだ。『スレイブキングダム』のCGのパーセンテージはHシーン100%で埋まっている。

「あなたのような高名な医者が来てくれて光栄です!」
「こちらこそあなたに出迎でむかえていただけるなんて……初めましてレン・ナグサラン殿」

 敬礼をするレンに対して俺はお辞儀じぎで返す。

「私の名前知っていらっしゃったのですか?」
「王女でありながら最前線に立ち、戦う最強の戦姫せんきを知らない者はこの世界にいないですよ。破壊王女ブレイクプリンセスどの」

 レンは恥ずかしそうに頭を掻き、

「いやはや、その恥ずかしい二つ名まで知られているとは。私にできることは所詮は破壊だけです。あなたのように人を治すことができることができる職業の人間が羨ましい。海向こうの帝国では何人も人を救った名医だと聞きます」
「え、ええ」

 クライス・ホーニゴールドは名医であると評判が立っている。
 病気で歩けなかった老婆を歩かせ、頭を打って寝たきりの植物人間も動かして見せた。
 それらは全てスキル「人体支配」の力によるもので、医術でも何でもないのだが、そのおかげで王国に国賓こくひんとして招かれ、王城へと、王国のふところへと入っていくと言う話だ。
 クライスはその後の国家転覆も狙っているため、自分以外にも海向こうの帝国———ニア帝国の協力も取り付けて人員を送っている。
 ニア帝国は現在ナグサラン王国と友好関係にあるが、豊かな土地を持つナグサラン王国を侵略したいと考えており、そのことがクライスと利害が一致した。

「ささ、こちらへ、馬車を用意しておりますので。妹が待っています」

 背を向けてレンが歩き始める。

「ヒッヒッヒ……」 

 隙を見つけたファブルは羽虫の小瓶を開ける。
 すると蜂のような虫が何匹かレンの背中に迫る。
 思い出した。
 ここでまず、少量の魔力を吸い取られたレンは、自分の不調に気づかず道中で襲ってきた魔物に傷を負わされてしまう。腕を斬られる軽度の傷ではあるものの、それをきっかけにクライスがレンの元を通うことになり、そのたびにファブルの虫も一緒に連れ込み、彼女の魔力は次々と吸われて、無力化していく。
 レンが凌辱される道筋はそういったストーリー展開だった。

 ブブブブッ 

 羽虫が針をレンに向けて突撃していく———。

 ババババッ。

「え?」
「あ!」

 羽虫がすぐそばまで迫った瞬間、レンは目を向けずに抜刀し、高速で剣を振り回した。
 彼女の剣筋は正確で———蟲を全て斬りき、地面に落とす。

「は? え? ん?」

 一瞬のスゴ技。
 だが、そのやった本人が困惑していた。
 何が起きたかわからない、自分がなぜこのようなことをしたのか微塵みじんもわかっていないような顔だ。

「……虫?」

 足元を見てようやく自分が危険な虫を斬ったのだと理解する。
 ワッと周りの通行人が湧いた。

「見たか? レン様の高速の剣裁き!」
「迫ってた虫たちを一瞬で切り落としたぞ!」
「流石はレン様よねぇ……一瞥もせずに背後の敵を斬るなんて」

 パチパチパチと、見ていた観衆から拍手が起きる。

「あ、アハハ、いやぁどうもどうも……私にかかればこれくらいなんとでもないです……よ?」

 王女としての体裁もあるため一応はその賛辞を受け入れる。
 だが、明らかに頭に?マークが浮かんでいた。
 ファブルはそんな彼女の様子を見て「チィ……流石は破壊王女ブレイクプリンセス」一筋縄ではいかないか」と呟いていた。 

 良し。

 早速いいことができた。
 今のレンの高速の剣裁きは俺が「人体支配」のスキルを使って彼女の体にやらせていたことなのだが、当然そんなことは表立っては言わない。
 隠れて良いことをする。それが俺らしい。

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