悪役貴族は殺されたい。~やりたい放題してるのに、なぜかみんなが慕ってくる~
第70話 古の魔王
ただ、指を弾いただけ。
ただ———それだけのアクションで、魔剣から生み出された影が———爆散した。
「うぅ…………」
アリシアはリング外へと吹き飛ばされ、壁に背中を強くぶつけた。
全身が痛む。
呻きながらも、それでも意識を保ち、リングを見る。
「~~~~~~……♪」
鼻歌を歌いながら、シリウスは踊るような足取りで、リング状に転がっている折れた魔剣の柄を握る。
「久しぶりだの。バルムンクよ……」
優し気な声で話しかけると、呼応するように柄から影が出てくる。
それはじゃれつくように、シリウスの手にまとわりつく。
「お~、お~、寂しかったか? 久しぶりに主人に会えたことではしゃいでしまったか? じゃがはしゃぎすぎたな……危うくあやつが消えてしまうところじゃったぞ」
シリウスの手は影に侵食されて、真っ黒に染まっている。
黒い泥が右腕を肘のあたりまですっぽり覆っているような状態なのだが、シリウスは全く気に留める様子もなく、先ほどまで暴れ回っていた折れた剣先へと歩み寄っていく。
「———戻って来い」
軽く右手を振ると、剣先がまるで主人に気が付いた犬のようにピクリと跳ねあがり、折られた断面から影を発生させる。
折れた剣は影を、ジェットの様に勢いよく噴射させてシリウスの元に飛び———、
「フ~ン♪ フフフフ~ン……♪」
シリウスは鼻歌を歌いながら、柄を横薙ぎに振った。
タイミングよく———丁度、切っ先がそこへ到達する瞬間に———。
すると二つに折れた魔剣は———ぴたりとくっついた。
————え?
アリシアは目を見張った。
「~~~~~~~~♪」
魔剣が———修復されていた。
二つに折れていた刀身が一つになっている。だが、全く綺麗に修復されていると言うわけではなく、接合面にはかさぶたの様に、影があふれ出ていた。
影を操って無理やり接合させているのだとわかる。完全に修復されたわけではないその場しのぎ。
それでも———シリウスは魔剣を従えている……自らの意思で完全にコントロールしているということになる。
———どうして、そんなことができるんだ……?
そう、言葉を発したかったが、痛む体がそれを許さない。気を抜いたらすぐでも意識を手放してしまいそうだ・
ふと、会場を見渡すと意識を保っている人間はシリウス以外にはいない。ロザリオもリング外にぐったりと横たわり、観客も全員眠ったように首を垂れている。
シリウスは指を弾いただけだ———だというのに、たったそれだけ動作で、会場中の人の気を失わせていた。
動く人間はシリウス・オセロット、ただ一人。
彼は魔剣を元に戻すと、くるりと背を向け、リングの中心にまでやって来る。
「ふぅ…………人間という生き物はこういう〝創造〟という面においては素晴らしい生き物じゃな……」
うんうんと頷き感心しながらスタジアムを見渡す。
「これだけのものを作れる知恵は我々にはない……我々にできることはこの程度の些細なことじゃ———」
魔剣をまた———ブンッと振る。
すると影が会場中に飛散っていく。その影は的確に先ほどの指パッチンで破壊した場所を塞ぎ———〝同化〟していった。
黒いただの泥のような存在だった影が、石畳に色形を変質させて、破壊を修復していった。
「まぁ、それでも我のやることは変わらんがな……とりあえず今は、見逃してやろう。まだまだこの〝身体〟とは付き合っていたいのでな。カッカッカ……!」
シリウスは謎の言葉を言いながら高笑いをする。
————ッ
「カッカッカッカ……! カァ~カッカッカッカッ!」
高笑いをし続けながら、シリウスは信じられない現象を起こしていた。
魔剣が———消えていく。
どんどん縮んでいっていた。
まるで、彼の掌に吸い込まれるかのように———どんどんどんどん……シリウスに魔剣が飲み込まれて行き、やがては完全にシリウスの右手の先から消えてしまった。
「———せいぜい、今ある生を愉しめよ……人間ども。命は短いぞ」
シリウスが、こちらを———アリシアを見た。
微笑んでいる。
「———我が滅ぼすからな」
◆
アン・ビバレントはリングの上の光景を暗い場所から見つめていた。
彼女はスタジアムの観客席下、選手入場のための廊下にいた。そのため、何とか気絶を免れていた。
「なんて……力……」
分厚いスタジアムの壁がシリウスの手から発せられた衝撃波を吸収し、彼女に与えるダメージを最小限に抑えたのだ。
それでもキィーン……と頭の中では耳鳴りが響き続け、脳を揺さぶられガンガンと痛む頭を押さえる。
「……また、あんたなのね」
アンは廊下の壁に手をつきながら、リングの上を睨みつける。
高笑いをし続ける、シリウス・オセロットを———。
「古の魔王……ベルゼブブ」
その名を———呼んだ。
そして、アンは苦々し気に眉根を寄せ、
「———殺してやるわよ……〝約束〟通り———このアン・ビバレントが———いつか、必ず」
決意を胸に、拳を壁にダンと叩きつけた。
ただ———それだけのアクションで、魔剣から生み出された影が———爆散した。
「うぅ…………」
アリシアはリング外へと吹き飛ばされ、壁に背中を強くぶつけた。
全身が痛む。
呻きながらも、それでも意識を保ち、リングを見る。
「~~~~~~……♪」
鼻歌を歌いながら、シリウスは踊るような足取りで、リング状に転がっている折れた魔剣の柄を握る。
「久しぶりだの。バルムンクよ……」
優し気な声で話しかけると、呼応するように柄から影が出てくる。
それはじゃれつくように、シリウスの手にまとわりつく。
「お~、お~、寂しかったか? 久しぶりに主人に会えたことではしゃいでしまったか? じゃがはしゃぎすぎたな……危うくあやつが消えてしまうところじゃったぞ」
シリウスの手は影に侵食されて、真っ黒に染まっている。
黒い泥が右腕を肘のあたりまですっぽり覆っているような状態なのだが、シリウスは全く気に留める様子もなく、先ほどまで暴れ回っていた折れた剣先へと歩み寄っていく。
「———戻って来い」
軽く右手を振ると、剣先がまるで主人に気が付いた犬のようにピクリと跳ねあがり、折られた断面から影を発生させる。
折れた剣は影を、ジェットの様に勢いよく噴射させてシリウスの元に飛び———、
「フ~ン♪ フフフフ~ン……♪」
シリウスは鼻歌を歌いながら、柄を横薙ぎに振った。
タイミングよく———丁度、切っ先がそこへ到達する瞬間に———。
すると二つに折れた魔剣は———ぴたりとくっついた。
————え?
アリシアは目を見張った。
「~~~~~~~~♪」
魔剣が———修復されていた。
二つに折れていた刀身が一つになっている。だが、全く綺麗に修復されていると言うわけではなく、接合面にはかさぶたの様に、影があふれ出ていた。
影を操って無理やり接合させているのだとわかる。完全に修復されたわけではないその場しのぎ。
それでも———シリウスは魔剣を従えている……自らの意思で完全にコントロールしているということになる。
———どうして、そんなことができるんだ……?
そう、言葉を発したかったが、痛む体がそれを許さない。気を抜いたらすぐでも意識を手放してしまいそうだ・
ふと、会場を見渡すと意識を保っている人間はシリウス以外にはいない。ロザリオもリング外にぐったりと横たわり、観客も全員眠ったように首を垂れている。
シリウスは指を弾いただけだ———だというのに、たったそれだけ動作で、会場中の人の気を失わせていた。
動く人間はシリウス・オセロット、ただ一人。
彼は魔剣を元に戻すと、くるりと背を向け、リングの中心にまでやって来る。
「ふぅ…………人間という生き物はこういう〝創造〟という面においては素晴らしい生き物じゃな……」
うんうんと頷き感心しながらスタジアムを見渡す。
「これだけのものを作れる知恵は我々にはない……我々にできることはこの程度の些細なことじゃ———」
魔剣をまた———ブンッと振る。
すると影が会場中に飛散っていく。その影は的確に先ほどの指パッチンで破壊した場所を塞ぎ———〝同化〟していった。
黒いただの泥のような存在だった影が、石畳に色形を変質させて、破壊を修復していった。
「まぁ、それでも我のやることは変わらんがな……とりあえず今は、見逃してやろう。まだまだこの〝身体〟とは付き合っていたいのでな。カッカッカ……!」
シリウスは謎の言葉を言いながら高笑いをする。
————ッ
「カッカッカッカ……! カァ~カッカッカッカッ!」
高笑いをし続けながら、シリウスは信じられない現象を起こしていた。
魔剣が———消えていく。
どんどん縮んでいっていた。
まるで、彼の掌に吸い込まれるかのように———どんどんどんどん……シリウスに魔剣が飲み込まれて行き、やがては完全にシリウスの右手の先から消えてしまった。
「———せいぜい、今ある生を愉しめよ……人間ども。命は短いぞ」
シリウスが、こちらを———アリシアを見た。
微笑んでいる。
「———我が滅ぼすからな」
◆
アン・ビバレントはリングの上の光景を暗い場所から見つめていた。
彼女はスタジアムの観客席下、選手入場のための廊下にいた。そのため、何とか気絶を免れていた。
「なんて……力……」
分厚いスタジアムの壁がシリウスの手から発せられた衝撃波を吸収し、彼女に与えるダメージを最小限に抑えたのだ。
それでもキィーン……と頭の中では耳鳴りが響き続け、脳を揺さぶられガンガンと痛む頭を押さえる。
「……また、あんたなのね」
アンは廊下の壁に手をつきながら、リングの上を睨みつける。
高笑いをし続ける、シリウス・オセロットを———。
「古の魔王……ベルゼブブ」
その名を———呼んだ。
そして、アンは苦々し気に眉根を寄せ、
「———殺してやるわよ……〝約束〟通り———このアン・ビバレントが———いつか、必ず」
決意を胸に、拳を壁にダンと叩きつけた。
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