悪役貴族は殺されたい。~やりたい放題してるのに、なぜかみんなが慕ってくる~

あおき りゅうま

第51話 創王気を習得する。 ~チュートリアル~

 大斧を構えながらリタは、

「全力で、打ち込んで……来い……ロザリオ……創王気そうおうきという力を使って……」 

 直球でそのワードを口にしながらロザリオに伝授しようとする。
 ロザリオはアリシアと顔を見合わせて、

創王気そうおうきってアリシア王女が使える、あのオーラみたいなものですよね? それを使えって……」
「あれは王族しか使えないから……この場で使えるのはボクだけだ」
「ですよね。じゃあ、すいませんけどリタさん、普通にいきますね……!」

 鉄の剣でリタに向かって斬りかかる。

「……違う、そうじゃない……!」

 大斧の持ちて部分でロザリオの攻撃を受け止めるリタ。

創王気そうおうきを……使わないと、私は倒せない…ぞ!」
「……え、じゃあ……やっぱり……王女様に任せるしか……」
「ああ……、」

 スッとロザリオが身を引き、入れ替わるようにアリシアが剣を抜きながら前に出る。

創王気そうおうき!」

 アリシアの全身が輝き始め、青いオーラをまとい、彼女がもつ剣もオーラに包まれて熱を帯び始める。

「なんだか、よくわかないけど……創王気そうおうきじゃないとダメなんだろ?」

 リタの言葉に従い、アリシアが創王気そうおうきを纏った剣で彼女を攻撃する。
 リタも大斧に魔力のオーラを纏わせ、その攻撃を受け止めた。

「……違う、そうでもない……!」

 アリシアの攻撃を弾き、リタは大斧を構えなおし、

「ロザリオが……創王気そうおうきを纏って攻撃しないと……私は倒せない……ぞ!」

「「えぇ~……」」

 二人が顔を見合わせ——、

「やってみるか? ロザリオ」
「え、えぇ……できないと思いますけど、一応リタさんに付き合ってあげましょう」

 ロザリオは首を傾げながらも、

「フンッ……! 創王気そうおうき……!」

 腰を入れて気合をいれる———が、何も起こらない。

「ハハッ、ちょっと恥ずかしいですね……これ」
「恥ずかしいってなんだ! 王家にしか使えない特別な技だぞ! それを笑うなんて無礼だな!」
「すいません、アリシア王女」

 ロザリオは軽い感じでアリシアに謝罪した後、リタに向き直り、

「———リタさん、やっぱり俺には無理みたいですよ? 魔剣使っていいですか?」

 そう言って、黒い剣を抜こうとするロザリオ。

 馬鹿野郎  何気軽にそれを抜こうとしてるんだ! 

 俺はやぶの中から彼らを見守っているが、思わず飛び出そうと前のめりになってしまう。

 何でお前が持っているのかわからないけれども———それは、アンルートのラスボスが持つ武器だぞ 
 
 ロザリオを止めに入ろうと、立ち上がりかけるのを———ここで飛び出したらまた説明が面倒になると、ギリギリで気持ちを押しとどめる。

「ダメ……創王気そうおうきじゃないとダメみたい……それにそっちは使い時があるって教えたでしょ……?」
「は~い、ちゃんと覚えてますよ☆」

 リタに叱られ、ロザリオは魔剣から手を放す。

 そうか……『スコルポス』にいたからか……俺はアンルートのシナリオを思い出しながら、これからの展開を考える。

「あの魔剣……なんとしてでもロザリオの手から取り上げなくてはな……」
「お兄様……ロザリオ様の剣のことを知っているので……?」
「あぁ……まぁ少しな……」

 藪の中からの俺たちの会話はロザリオとアリシアには聞こえてない。

「それって魔剣って言うのか? 少し触っていいか?」
「ダメですよ。気軽に抜いちゃいけないって今叱られたばかりなんですから」

 二人は、魔剣に対する会話にしては、ものすごく呑気な会話をしている。

「イチャイチャ……するな……! 真面目に……やれ……! ロザリオ、早く創王気そうおうきを習得し……ろ!」

 不器用な言葉づかいで、ロザリオたちを叱りつける。
 いやイチャイチャはしていいんだが……俺的には……。
 だが、ロザリオとアリシアは「ちょっと真面目にやるか」と肩をすくめて互いに距離を取り、

「ロザリオ、あれだけお前の師匠が言うんだから、ちょっと真剣にやってみろ。ボクも真面目に教えてみるから」
「ええ……すいませんね。ウチのリタさんが。ちょっと付き合ってやってください」
「いいよ。別に減るもんじゃないし」
「早く……しろ……!」

 大斧を構え続けるリタの前で、アリシアの創王気そうおうき講座が始まり、

「ロザリオ、意識を集中して自分の胸の奥にある魔力の根源のような物を解き放つイメージを抱いて……集中して『創王気そうおうき』と力の名前を呼ぶんだ。やってみろ」
「……すぅ~……『創王気そうおうき』!」

 ロザリオの身体に青いオーラが宿る。

「———え? あ  ホントにできました」
「え  お、おぉ……本当にできてる……!」

 あっさりとロザリオは創王気そうおうきを習得してしまった。

「えっと……これでやればいいんですか?」
「来い……ロザリオ……実は、私は……創王気そうおうきの攻撃、一発だけで死ぬぞ……」

 大斧を自分の頭上に掲げて、ロザリオに打ち込みやすくさせる。

「いや、さっきのアリシア王女の攻撃、弾いていたじゃないですか……」

 ロザリオはツッコミを入れながら、青いオーラを纏った剣で軽く、コンッとリタの斧を叩くと、

「や~……ら~……れ~……た~……!」

 クルクルとリタは回って、わざとらしく倒れる。
「強くなったな……ロザリオ……」

「はぁ……」

 リタはサムズアップをし、「ガクッ」と言って顔を地面に伏せる。

「終わりか?」
「みたいですね……」
「凄いな、ロザリオ。君、創王気そうおうきが使えるなんて……実は王家の血がどっかで混じっているんじゃないか?」
「そうですね。帰ったら調べてみます」

 アリシアの父が、ロザリオの父を暗殺し、ロザリオを平民の身分に追いやったとも知らず、二人は「ハハハ」と笑い合う。
 そんな中、リタは向くりと立ち上がり、

「じゃ」

 と言って、ロザリオに手を振り、のそのそと草むらの中へと引っ込んでいく。その背中にロザリオは「お疲れ様です!」と深々と一礼をして、

「行きましょうか」
「ああ、結局何だかよくわからなかったな」
「ですね」 

 少し、親近感がわいて距離が縮まった様子のロザリオとアリシアは第三チェックポイントへの道を歩き始めた。

「ロザリオ様は……もしかしたら私と同じように……高貴な身分の方の隠し子なのでしょうか……?」
「ああ……かもな」

 ルーナは平民であるはずのロザリオが、どうして創王気そうおうきという力が使えることに対して、自分と同じ境遇であるのではという憶測を立てた。俺は真実を知っているが、それを伝えてしまうと非常にややこしいことになるので、あえてルーナの憶測は否定しなかった。

「やっほ……」

 リタが戻って来る。

「たわけ。余計なことをしおって」
「よかれと思ってやったのに……」

 リタはシュンと肩を落とす。

「結果には感謝をする。だが、伝え方が直接的すぎたのだ」
 俺はそれとなく教えたかったのだ。
「でも、言わないと……わからないよ……」
「むぅ……」

 それはそうだが、シリウス・オセロットとして、そこまで親切丁寧な態度は取れない。

 結果としてはリタにものすごく助けられた。

 だから、もっと全力で感謝の気持ちを伝えたいところだが、シリウスはそういうキャラじゃないのだ。許してくれ———そう、内心で彼女にわびた。

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