悪役貴族は殺されたい。~やりたい放題してるのに、なぜかみんなが慕ってくる~
第14話 揺らぐアン
『蠍』との交渉は成功した。
詳細な打ち合わせは後日に行う約束を取り付け、とりあえず俺は帰路につくことになった。
「「……………」」
アンと並び、『イタチの寄り合い所』の裏通路を来た通り辿って歩く。
『蠍』の事務所から帰るには、タルラント商会の秘密の通路を進んで外にでることになるので、客人一人だけで歩かせるわけにはいかない。だから、見張りとしてアンが再び隣で歩いているのだが————気まずい。
すでにここにいる用事は終わり、話題もない。
それに大物であるグレイヴと交渉をしてだいぶ俺の集中力を持っていかれた。
疲れている。
こういう時にシリウス・オセロットとしてどうロールしていいのかわからない。
俺から話題を振らなければ、アンも口を開く必要はないだろう。
そもそも復讐する者とされる者に話題もくそもない。
早く一人になりたい。
段々と出口が近づいてくる、あともう少しで、この気まずい空間から解放される……。
「どういうつもりだ?」
「……はい 」
アンの方から話題を振られた。
予想外のことで素の俺の声が出てしまった。
「生徒のためにオセロット家として『蠍』に借りを作るなんて。お前らしくない。シリウス・オセロットは外道だろう? 生徒が死のうが生きようがどうでもいい。むしろ殺して楽しむような人間だろう?」
「ああ」
「なのに、生徒たちをリスクを冒して守ろうとしている……なんでだ? お前は何を考えているの? 何もお前の得にならないのに」
あぁ……疲れているのに……どう答えよう。
シリウス・オセロットとしてどう答えればいいのか、必死に考え、言葉を紡ぐ。
「えぇ……っと。得にはなる……得にはなるのだ……将来、この我がこのテトラ領を治めることになるのだ。その時に肝心の騎士たちがぼんくらでは敵に攻められたときに困るだろう?だから鍛えておくのだ。どんな敵にも対応できるようにな」
「……やっぱり、違う。お前はあたしが知っているシリウス・オセロットじゃない」
あ。
ちょっとヤバいか?
ヘイト管理ミスったか?
俺が転生してシリウス・オセロットの使っているなんて結論には達しないだろうが……偽物がどうかとかは言いだしそうだ……それでこじれるとまたルートが変な方向に行きそうだし……なんか言っておくか。
「我はな……」
「あたしが思っているシリウス・オセロットじゃない。あたしが想像している親の仇は、そんな下の者を思いやるような人間じゃない」
「あのな……」
「なんでだ? なんでこんなことをする?」
「えぇっと……」
「何で 」
尋ねているのなら喋らせろ!
一向に俺の言葉を聞こうとせずに一方的にアンは自分のことを話し続けている。
そして、顔に掌を当てて、
「仇ならもっと仇らしくしてよ……」
くしゃっと自らの顔を握りしめた。
自分がどんな感情を顔に出しているのか———悟らせたくないようだった。
「お前がそんなんじゃ……許してしまいそうになる……もしかしたら、父さんが死ななきゃいけない事情があったんじゃないかって思いたくなる……父さんが家族に知られていないところで悪いことをしてたんじゃかって……思ってしまいそうになる……だから、お前が仕方なく殺したんじゃないかって……思いそうになる」
やっべぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ
完全にヘイト管理ミスってる!
アンの復讐心が薄れている。これはまずい。彼女にはロザリオと共に俺を殺さないといけないのに! そこでロザリオ共々新しい力に芽生え、国家転覆の野心に目覚めたグレイヴを二人の力で倒すというエンディングに向わないといけないのに!
これはマズい!
「ハッ……! 何を言うかと思えば。とんだお人好しだな貴様は。お前の父は理由もなく殺された。我が殺した。我が肉欲を満たすためにお前の母を抱きたくなり、使い捨てた。そのことをお前の父親は騒ぎ立てたのだ。我は邪魔になった者は殺す。ここに来た話とまるで違う。聖ブライトナイツ学園の生徒たちは俺にとって益になる。だからこうやって支援をしている。それだけの話だ。その上っ面だけを見て「実はいい人?」 などと考えるとは……ビバレント家のご令嬢はよほど頭がお花畑だと思える」
「……何ィ~~~~……? 何だその言い草は!」
俺の言葉にカチンときたのか、怒って歯をむき出しにするアン。
「甘えたことをいう人間に対して甘えていると言って何が悪い。勘違いをするな。我は利用できるものは何でも利用する。この我自らの得のためにな。それを優しいなどと誤解をするものではない。我は貴様の仇だろ。貴様は我を殺すことだけを考えていればいい」
「…………わかった」
彼女の顔から怒りが消えて、冷静さが戻る。
よし、ちゃんとヘイトを稼ぐことができた。
これでアンは俺を殺すために、技術を磨こうと更に暗殺の訓練に励むことだろう。あとはアンとロザリオを引き合わせなければいけないが……まぁ、それはなんとかなりそうだから後で考えよう。
出口の扉に手をかける。
ああ、長かった……ようやく終わった。
ただの商店内の通路がこんなに長く感じるとは。
「ではな。次にどんな手で俺を殺しに来るのか。楽しみにしているぞ。そうだな……パーティを組んで挑んでみたらどうだ? 我はいくらザコどもを引き連れて殺しに来たとて一向に構わんぞ?」
扉をあけ放ち外に出る。振り返って最後にアンに対して気軽な殺しの誘いをかけるが、対するアンは、
「お前さ……」
「ん?」
「あたしの母さんに今から会いに行って、面と向かって謝れよ……」
俯いていて、どういった感情を抱いているのかわからないが、ぼそりと呟くように言った。
「たわけ。勘違いするなと言っただろう、我は貴様の仇だ」
「そうだな……」
暗く、目を伏せ続けている彼女を残して、俺は出口の扉を閉めた。
よし、多分大丈夫だろう。たわけとまで言ったのだから、アンは俺に対する憎しみをさらに募らせたはずだ。
満足し、俺は夜のハルスベルクの街を歩き、オセロット家の屋敷へ向かった。
詳細な打ち合わせは後日に行う約束を取り付け、とりあえず俺は帰路につくことになった。
「「……………」」
アンと並び、『イタチの寄り合い所』の裏通路を来た通り辿って歩く。
『蠍』の事務所から帰るには、タルラント商会の秘密の通路を進んで外にでることになるので、客人一人だけで歩かせるわけにはいかない。だから、見張りとしてアンが再び隣で歩いているのだが————気まずい。
すでにここにいる用事は終わり、話題もない。
それに大物であるグレイヴと交渉をしてだいぶ俺の集中力を持っていかれた。
疲れている。
こういう時にシリウス・オセロットとしてどうロールしていいのかわからない。
俺から話題を振らなければ、アンも口を開く必要はないだろう。
そもそも復讐する者とされる者に話題もくそもない。
早く一人になりたい。
段々と出口が近づいてくる、あともう少しで、この気まずい空間から解放される……。
「どういうつもりだ?」
「……はい 」
アンの方から話題を振られた。
予想外のことで素の俺の声が出てしまった。
「生徒のためにオセロット家として『蠍』に借りを作るなんて。お前らしくない。シリウス・オセロットは外道だろう? 生徒が死のうが生きようがどうでもいい。むしろ殺して楽しむような人間だろう?」
「ああ」
「なのに、生徒たちをリスクを冒して守ろうとしている……なんでだ? お前は何を考えているの? 何もお前の得にならないのに」
あぁ……疲れているのに……どう答えよう。
シリウス・オセロットとしてどう答えればいいのか、必死に考え、言葉を紡ぐ。
「えぇ……っと。得にはなる……得にはなるのだ……将来、この我がこのテトラ領を治めることになるのだ。その時に肝心の騎士たちがぼんくらでは敵に攻められたときに困るだろう?だから鍛えておくのだ。どんな敵にも対応できるようにな」
「……やっぱり、違う。お前はあたしが知っているシリウス・オセロットじゃない」
あ。
ちょっとヤバいか?
ヘイト管理ミスったか?
俺が転生してシリウス・オセロットの使っているなんて結論には達しないだろうが……偽物がどうかとかは言いだしそうだ……それでこじれるとまたルートが変な方向に行きそうだし……なんか言っておくか。
「我はな……」
「あたしが思っているシリウス・オセロットじゃない。あたしが想像している親の仇は、そんな下の者を思いやるような人間じゃない」
「あのな……」
「なんでだ? なんでこんなことをする?」
「えぇっと……」
「何で 」
尋ねているのなら喋らせろ!
一向に俺の言葉を聞こうとせずに一方的にアンは自分のことを話し続けている。
そして、顔に掌を当てて、
「仇ならもっと仇らしくしてよ……」
くしゃっと自らの顔を握りしめた。
自分がどんな感情を顔に出しているのか———悟らせたくないようだった。
「お前がそんなんじゃ……許してしまいそうになる……もしかしたら、父さんが死ななきゃいけない事情があったんじゃないかって思いたくなる……父さんが家族に知られていないところで悪いことをしてたんじゃかって……思ってしまいそうになる……だから、お前が仕方なく殺したんじゃないかって……思いそうになる」
やっべぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ
完全にヘイト管理ミスってる!
アンの復讐心が薄れている。これはまずい。彼女にはロザリオと共に俺を殺さないといけないのに! そこでロザリオ共々新しい力に芽生え、国家転覆の野心に目覚めたグレイヴを二人の力で倒すというエンディングに向わないといけないのに!
これはマズい!
「ハッ……! 何を言うかと思えば。とんだお人好しだな貴様は。お前の父は理由もなく殺された。我が殺した。我が肉欲を満たすためにお前の母を抱きたくなり、使い捨てた。そのことをお前の父親は騒ぎ立てたのだ。我は邪魔になった者は殺す。ここに来た話とまるで違う。聖ブライトナイツ学園の生徒たちは俺にとって益になる。だからこうやって支援をしている。それだけの話だ。その上っ面だけを見て「実はいい人?」 などと考えるとは……ビバレント家のご令嬢はよほど頭がお花畑だと思える」
「……何ィ~~~~……? 何だその言い草は!」
俺の言葉にカチンときたのか、怒って歯をむき出しにするアン。
「甘えたことをいう人間に対して甘えていると言って何が悪い。勘違いをするな。我は利用できるものは何でも利用する。この我自らの得のためにな。それを優しいなどと誤解をするものではない。我は貴様の仇だろ。貴様は我を殺すことだけを考えていればいい」
「…………わかった」
彼女の顔から怒りが消えて、冷静さが戻る。
よし、ちゃんとヘイトを稼ぐことができた。
これでアンは俺を殺すために、技術を磨こうと更に暗殺の訓練に励むことだろう。あとはアンとロザリオを引き合わせなければいけないが……まぁ、それはなんとかなりそうだから後で考えよう。
出口の扉に手をかける。
ああ、長かった……ようやく終わった。
ただの商店内の通路がこんなに長く感じるとは。
「ではな。次にどんな手で俺を殺しに来るのか。楽しみにしているぞ。そうだな……パーティを組んで挑んでみたらどうだ? 我はいくらザコどもを引き連れて殺しに来たとて一向に構わんぞ?」
扉をあけ放ち外に出る。振り返って最後にアンに対して気軽な殺しの誘いをかけるが、対するアンは、
「お前さ……」
「ん?」
「あたしの母さんに今から会いに行って、面と向かって謝れよ……」
俯いていて、どういった感情を抱いているのかわからないが、ぼそりと呟くように言った。
「たわけ。勘違いするなと言っただろう、我は貴様の仇だ」
「そうだな……」
暗く、目を伏せ続けている彼女を残して、俺は出口の扉を閉めた。
よし、多分大丈夫だろう。たわけとまで言ったのだから、アンは俺に対する憎しみをさらに募らせたはずだ。
満足し、俺は夜のハルスベルクの街を歩き、オセロット家の屋敷へ向かった。
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