悪役貴族は殺されたい。~やりたい放題してるのに、なぜかみんなが慕ってくる~
第10話 アリシアとの決闘
聖ブライトナイツ学園校舎のバルコニーに出る。
広いバルコニーで学園を囲んでいる都市、そして南にある魔物がうごめく『黄昏の森』が一望できる。
過去にここが普通に城だったときは敵兵がどこから攻めてくるのか確認するための展望デッキで、学園に改築してからは、生徒たちが気晴らしのために景色を見に来る場所となっている。
そこで俺とアリシアは対峙している。
「剣を抜け、シリウス!」
シャッと音を立てて、鞘から剣を抜き放ち、構えるアリシア。
「決闘のルールは三つ! 相手の武器を破壊、もしくは取り上げたら勝ち! 相手の魔力を尽きさせたら勝ち! そして、最後のルールは相手の命を奪えば———それもまた勝ち!」
決闘のルールを唱えながら、切っ先を俺に向ける。
めんどくさ……。
「アリシア王女。少し確認したいのだが、いいか?」
「何だ?」
「降参は———しても構わんのだろう?」
「な————ッ 」
こんなバカバカしい決闘なんて付き合ってられるか。
俺はすぐにでも図書室にこもって魔法のお勉強がしたいのだ。
それに下手に動いてルートが外れて、ロザリオが覚醒しないなんて事態になるのは避けたい。
「この決闘、この我。シリウス・オセロットの敗北だ。アリシア王女。あなたの勝ちだ。コングラッチュレーション」
パチパチと拍手をし、「ではな」と踵を返す。
シリウスが負けたとなり噂が広まれば、悪役貴族としての沽券にかかわるが、アリシアならそうそう言いふらすような真似はしないだろう。彼女は誇り高い王族だ。
敗者に鞭うつような真似はそうそうしないだろう。
「ギリッ———! どこまでもボクを馬鹿にしてッッッ!」
降参でも勝ちは勝ちなのだ。
背後で歯ぎしりの音が聞こえるがこれで満足、
ガキィィィィィィッッッン—————
耳元で聞こえる金属音。
「———ッ!」
視線を横にやれば、そこには剣の切っ先。
「チッ、障壁魔法か……! 隙だらけの頭を狙ったのに!」
アリシアが俺の頭部めがけて剣を横薙ぎに振り抜きやがった。
あっぶねぇ……!
「……フンッ、何のつもりですか? アリシア王女……決闘はあなたの勝ちですよ?」
いきなり奇襲に心臓がバクバクいうほど驚いている。だが、それをおくびにも出さずにアリシアに向き直り、余裕の笑みを浮かべる。冷や汗が出ないように、取り繕うのに必死だ。
「降参なんて認められるか! ボクが認めないと降参は成立しない! だから決闘の勝敗もまだついていない!」
「な———ッ!」
どこまで我がままなんだこの王女は!
「それに、読んでいたんだろう? ボクが後ろから切りかかるのを。ちゃんと障壁魔法を念入りに展開して———さ」
ニヤリと笑うアリシア。「なんだかんだ言ってボクのことを意識しているじゃないか、ちゃんと警戒しているじゃないか」とでも言いたげだ。
「いや、これは……魔力を発するだけで防御の盾になっているだけで……障壁魔法なんて高度なものじゃ……」
勝手に展開されただけのただの魔力の壁。
まだ障壁魔法なんて習得していない。それを習得するためにとっとと図書室に行きたいのに……!
「なん、だと……ッ どこまでも、どこまでも、どこまでもぉ! ボクを馬鹿にしてェェェェェェ 」
アリシアの髪の毛が逆立ち、全身から魔力が発せられる。
立ち上る青いオーラ。
某少年漫画のZ戦士を思い出させるオーラを身にまとったと思ったら、それを剣先に凝縮させる。
「あぁ……」
〝これ〟か、ここで出すのか……。
アリシアは青いオーラを纏った剣を俺に向ける。
「創王気! 選ばれた王のみが使える、特別な魔力だ。これを使うことにより肉体能力は強化され、武器に纏わせれば———ッ!」
ザンッと床に突き立てる。するとまるでケーキのようにスルスルと刃が通り、一文字の傷をつけた。
アリシアに全く力を込めた様子もない。
「どんなものでも切りさく———魔力の剣と化す」
床に着いた一文字の傷の周りには超高熱で焼かれたような———石が解けたような跡がある。
創王気———それは高熱を持った魔力のオーラ。炎が極限まで温度を高めると青くなるように、魔力の熱も極限まで高めると青くなる。
それを剣に纏う———すると、ファンタジー世界なのに、某宇宙をまたにかける戦争映画の武器、ライ〇セイバーのお出ましとなるわけだ。
「これなら! 剣を抜かざるを得ないだろう!」
ラ〇トセイバーと化した———青く光る剣を振りかざし襲い掛かるアリシア。
———剣……抜くか?
抜いてもすぐさま切り落とされて破壊されるのがオチだろう……シリウスとしてそんな情けない姿……あ、破壊されるのならそれでいいのか。それで負けたことになるのだから、何を俺は躊躇って———、
「あ———」
余計なことを考えているうちに、青い切っ先が眼前に迫っている。
突きだ。
俺の正中線上にしっかり照準を合わせた突きが放たれている。
……大丈夫か?
シリウスの膨大な魔力だから、避けなくても、
———やっぱこえぇ!
慌てて避ける。
もしかしたら防御できないかもと考えてしまい、体を横にずらす。
ビッ————
剣がわずかにかすり、俺の頬に傷がつく———。
創王気がシリウスの魔力の壁を突破していた。
「血……血だ! 傷ついたな! シリウス・オセロット!」
この世界で初めてのダメージだ。
頬に軽く切り傷を付けられて血がタラリと流れる。
「———油断しすぎたな」
流れる血をぬぐい、アリシアを見据える。
「おっ、ようやくボクを意識したな。ボクをようやく敵とみなしたか? さぁ、早く剣を抜くんだ!」
青く光る剣を振って小躍りをしそうなほど喜んでいるアリシアだが———。
「抜く必要はない」
俺は人差し指を立てた。
「指一本で充分だ」
「何ッ 」
ようやく敵とみなした———どころか指一本で倒す―――と更なる挑発をする。
「ふ、ふざけるなッッ! まだボクを馬鹿にするのか!」
案の定、アリシアは激昂し、切っ先をこちらに向けて突撃してきた。
「馬鹿になどしていない———」
今の———アリシアの放った一太刀で理解した。
「———教育をしてやろうという気になったのだ」
アリシアの更なる一撃を———俺は避けた。
「な————ッ 」
再び、突きだった。
同じ場所、同じコースで放たれたワンパターンの攻撃。
それも———、
「遅いッッッ!」
まるでスローモーションかと思うほど、アリシアの動きは鈍重だった。
俺は人差し指でアリシアの握る剣の柄を———押した。
「わッッッ 」
前進して攻撃している人間に対し、正面からそのまま力でぶつかっていくと、非常に強い抵抗を受ける。
だが逆に進行方向と同じ向きの力を加えてやると———、
「とっとっと 」
面白いようにバランスを崩す。
片足立ちで、まるで歌舞伎の六方のようにぴょんぴょん飛んで進んでいく、そのアリシアの右足を———、
「ほうらっ」
人差し指で掬い上げた。
「うわああああああああああああ!」
完全にバランスを失ったアリシアの体はその場で、くるんッと一回転し、
「———イッッダッ 」
背中から床に落ちた。
石畳が敷き詰められた床に。
「私の勝ちですね」
「……グッ、カハッ———何、何を———言って……ハッ 」
痛みで背中を抑えているアリシアの手には剣はすでに握られていない。
先の落下の衝撃ですでに、剣から手を放してしまっていた。
「相手の武器を取り上げたら勝ち……でしたかね?」
「あ———」
床に落ちている〝それ〟をまるで落とし物か何かのようにひろいあげた。そんなゆっくりとした動きでも、アリシアは俺に追い付くことができずに剣を拾えずに敗北した。
「———クッ! クソォ どうして、こんな奴に どうしてボクはこんなに弱いんだ!」
悔しそうに床にバンバンと拳を打ち付けるアリシア。
さっきの剣筋で一つ分かったことがある。
「あなたは未熟だ。だから弱い」
「…………そうだ! ボクは未熟だ!」
まだ拳を打ち付けながら俺の言葉を認めるアリシア。
驚くほど彼女は弱い。動きは遅いしワンパターン———それも、恐ろしく基本的な動作を恐ろしく綺麗な動きでこなしていた。
「だが、その罪はあなたの罪ではない。あなたにろくに剣術を教えなかった、あなたのまわりの大人の責任だ」
「……え?」
アリシアが顔を上げる。
そう———彼女の繰り出した〝突き〟の動作や剣筋自体は本当に、見惚れるほど綺麗だったのだ。
まるで教科書通りのことを何年も練習し続けていたかのように。
「あなたの動きは全く実践的ではない。一度も戦ったことがない、もしくは戦ったとしても相手が手を抜いていたのでしょう。万が一にでもあなたに怪我をさせないために。そんなことでは真の実力はつかない」
「————ッ!」
図星か。
アリシアは顔を真っ赤にしている。
そうやって恥ずかしがると言うことは、内心、周りが接待をしていたのに気が付いていたのだろう。
あ、思いついた。
この現状で、どうにかアリシアとロザリオの仲を取り持つ方法。
「平民と学びなさい。貴族ではしがらみが多すぎる。あなたが王族である限り、絶対に顔色を窺ってしまう。だが、平民は何も持っていない。愚かな平民はあなたが相手だろうと全く接待をせずにぶつかっていくでしょう。そういった、相手が誰だろうと手加減容赦のない相手と共にいて学びなさい。そうすれば———いずれこの我にも勝つことができるでしょう」
俺は踵を返し、図書室へと向かった。
「手加減容赦のない……相手……と学ぶ」
後ろでアリシアのつぶやきが聞こえる。
ここまで言えば、今までの貴族の輪の中にいようとせず、平民の輪の中に入って、剣を学ぼうとするだろう。そうしてロザリオと再会し、彼と友に切磋琢磨してもらえば、覚醒イベントにもつながる。
ティポとザップのせいで逸れたルートを何とか修正できて、内心ガッツポーズをしながら、バルコニーを後にした。
広いバルコニーで学園を囲んでいる都市、そして南にある魔物がうごめく『黄昏の森』が一望できる。
過去にここが普通に城だったときは敵兵がどこから攻めてくるのか確認するための展望デッキで、学園に改築してからは、生徒たちが気晴らしのために景色を見に来る場所となっている。
そこで俺とアリシアは対峙している。
「剣を抜け、シリウス!」
シャッと音を立てて、鞘から剣を抜き放ち、構えるアリシア。
「決闘のルールは三つ! 相手の武器を破壊、もしくは取り上げたら勝ち! 相手の魔力を尽きさせたら勝ち! そして、最後のルールは相手の命を奪えば———それもまた勝ち!」
決闘のルールを唱えながら、切っ先を俺に向ける。
めんどくさ……。
「アリシア王女。少し確認したいのだが、いいか?」
「何だ?」
「降参は———しても構わんのだろう?」
「な————ッ 」
こんなバカバカしい決闘なんて付き合ってられるか。
俺はすぐにでも図書室にこもって魔法のお勉強がしたいのだ。
それに下手に動いてルートが外れて、ロザリオが覚醒しないなんて事態になるのは避けたい。
「この決闘、この我。シリウス・オセロットの敗北だ。アリシア王女。あなたの勝ちだ。コングラッチュレーション」
パチパチと拍手をし、「ではな」と踵を返す。
シリウスが負けたとなり噂が広まれば、悪役貴族としての沽券にかかわるが、アリシアならそうそう言いふらすような真似はしないだろう。彼女は誇り高い王族だ。
敗者に鞭うつような真似はそうそうしないだろう。
「ギリッ———! どこまでもボクを馬鹿にしてッッッ!」
降参でも勝ちは勝ちなのだ。
背後で歯ぎしりの音が聞こえるがこれで満足、
ガキィィィィィィッッッン—————
耳元で聞こえる金属音。
「———ッ!」
視線を横にやれば、そこには剣の切っ先。
「チッ、障壁魔法か……! 隙だらけの頭を狙ったのに!」
アリシアが俺の頭部めがけて剣を横薙ぎに振り抜きやがった。
あっぶねぇ……!
「……フンッ、何のつもりですか? アリシア王女……決闘はあなたの勝ちですよ?」
いきなり奇襲に心臓がバクバクいうほど驚いている。だが、それをおくびにも出さずにアリシアに向き直り、余裕の笑みを浮かべる。冷や汗が出ないように、取り繕うのに必死だ。
「降参なんて認められるか! ボクが認めないと降参は成立しない! だから決闘の勝敗もまだついていない!」
「な———ッ!」
どこまで我がままなんだこの王女は!
「それに、読んでいたんだろう? ボクが後ろから切りかかるのを。ちゃんと障壁魔法を念入りに展開して———さ」
ニヤリと笑うアリシア。「なんだかんだ言ってボクのことを意識しているじゃないか、ちゃんと警戒しているじゃないか」とでも言いたげだ。
「いや、これは……魔力を発するだけで防御の盾になっているだけで……障壁魔法なんて高度なものじゃ……」
勝手に展開されただけのただの魔力の壁。
まだ障壁魔法なんて習得していない。それを習得するためにとっとと図書室に行きたいのに……!
「なん、だと……ッ どこまでも、どこまでも、どこまでもぉ! ボクを馬鹿にしてェェェェェェ 」
アリシアの髪の毛が逆立ち、全身から魔力が発せられる。
立ち上る青いオーラ。
某少年漫画のZ戦士を思い出させるオーラを身にまとったと思ったら、それを剣先に凝縮させる。
「あぁ……」
〝これ〟か、ここで出すのか……。
アリシアは青いオーラを纏った剣を俺に向ける。
「創王気! 選ばれた王のみが使える、特別な魔力だ。これを使うことにより肉体能力は強化され、武器に纏わせれば———ッ!」
ザンッと床に突き立てる。するとまるでケーキのようにスルスルと刃が通り、一文字の傷をつけた。
アリシアに全く力を込めた様子もない。
「どんなものでも切りさく———魔力の剣と化す」
床に着いた一文字の傷の周りには超高熱で焼かれたような———石が解けたような跡がある。
創王気———それは高熱を持った魔力のオーラ。炎が極限まで温度を高めると青くなるように、魔力の熱も極限まで高めると青くなる。
それを剣に纏う———すると、ファンタジー世界なのに、某宇宙をまたにかける戦争映画の武器、ライ〇セイバーのお出ましとなるわけだ。
「これなら! 剣を抜かざるを得ないだろう!」
ラ〇トセイバーと化した———青く光る剣を振りかざし襲い掛かるアリシア。
———剣……抜くか?
抜いてもすぐさま切り落とされて破壊されるのがオチだろう……シリウスとしてそんな情けない姿……あ、破壊されるのならそれでいいのか。それで負けたことになるのだから、何を俺は躊躇って———、
「あ———」
余計なことを考えているうちに、青い切っ先が眼前に迫っている。
突きだ。
俺の正中線上にしっかり照準を合わせた突きが放たれている。
……大丈夫か?
シリウスの膨大な魔力だから、避けなくても、
———やっぱこえぇ!
慌てて避ける。
もしかしたら防御できないかもと考えてしまい、体を横にずらす。
ビッ————
剣がわずかにかすり、俺の頬に傷がつく———。
創王気がシリウスの魔力の壁を突破していた。
「血……血だ! 傷ついたな! シリウス・オセロット!」
この世界で初めてのダメージだ。
頬に軽く切り傷を付けられて血がタラリと流れる。
「———油断しすぎたな」
流れる血をぬぐい、アリシアを見据える。
「おっ、ようやくボクを意識したな。ボクをようやく敵とみなしたか? さぁ、早く剣を抜くんだ!」
青く光る剣を振って小躍りをしそうなほど喜んでいるアリシアだが———。
「抜く必要はない」
俺は人差し指を立てた。
「指一本で充分だ」
「何ッ 」
ようやく敵とみなした———どころか指一本で倒す―――と更なる挑発をする。
「ふ、ふざけるなッッ! まだボクを馬鹿にするのか!」
案の定、アリシアは激昂し、切っ先をこちらに向けて突撃してきた。
「馬鹿になどしていない———」
今の———アリシアの放った一太刀で理解した。
「———教育をしてやろうという気になったのだ」
アリシアの更なる一撃を———俺は避けた。
「な————ッ 」
再び、突きだった。
同じ場所、同じコースで放たれたワンパターンの攻撃。
それも———、
「遅いッッッ!」
まるでスローモーションかと思うほど、アリシアの動きは鈍重だった。
俺は人差し指でアリシアの握る剣の柄を———押した。
「わッッッ 」
前進して攻撃している人間に対し、正面からそのまま力でぶつかっていくと、非常に強い抵抗を受ける。
だが逆に進行方向と同じ向きの力を加えてやると———、
「とっとっと 」
面白いようにバランスを崩す。
片足立ちで、まるで歌舞伎の六方のようにぴょんぴょん飛んで進んでいく、そのアリシアの右足を———、
「ほうらっ」
人差し指で掬い上げた。
「うわああああああああああああ!」
完全にバランスを失ったアリシアの体はその場で、くるんッと一回転し、
「———イッッダッ 」
背中から床に落ちた。
石畳が敷き詰められた床に。
「私の勝ちですね」
「……グッ、カハッ———何、何を———言って……ハッ 」
痛みで背中を抑えているアリシアの手には剣はすでに握られていない。
先の落下の衝撃ですでに、剣から手を放してしまっていた。
「相手の武器を取り上げたら勝ち……でしたかね?」
「あ———」
床に落ちている〝それ〟をまるで落とし物か何かのようにひろいあげた。そんなゆっくりとした動きでも、アリシアは俺に追い付くことができずに剣を拾えずに敗北した。
「———クッ! クソォ どうして、こんな奴に どうしてボクはこんなに弱いんだ!」
悔しそうに床にバンバンと拳を打ち付けるアリシア。
さっきの剣筋で一つ分かったことがある。
「あなたは未熟だ。だから弱い」
「…………そうだ! ボクは未熟だ!」
まだ拳を打ち付けながら俺の言葉を認めるアリシア。
驚くほど彼女は弱い。動きは遅いしワンパターン———それも、恐ろしく基本的な動作を恐ろしく綺麗な動きでこなしていた。
「だが、その罪はあなたの罪ではない。あなたにろくに剣術を教えなかった、あなたのまわりの大人の責任だ」
「……え?」
アリシアが顔を上げる。
そう———彼女の繰り出した〝突き〟の動作や剣筋自体は本当に、見惚れるほど綺麗だったのだ。
まるで教科書通りのことを何年も練習し続けていたかのように。
「あなたの動きは全く実践的ではない。一度も戦ったことがない、もしくは戦ったとしても相手が手を抜いていたのでしょう。万が一にでもあなたに怪我をさせないために。そんなことでは真の実力はつかない」
「————ッ!」
図星か。
アリシアは顔を真っ赤にしている。
そうやって恥ずかしがると言うことは、内心、周りが接待をしていたのに気が付いていたのだろう。
あ、思いついた。
この現状で、どうにかアリシアとロザリオの仲を取り持つ方法。
「平民と学びなさい。貴族ではしがらみが多すぎる。あなたが王族である限り、絶対に顔色を窺ってしまう。だが、平民は何も持っていない。愚かな平民はあなたが相手だろうと全く接待をせずにぶつかっていくでしょう。そういった、相手が誰だろうと手加減容赦のない相手と共にいて学びなさい。そうすれば———いずれこの我にも勝つことができるでしょう」
俺は踵を返し、図書室へと向かった。
「手加減容赦のない……相手……と学ぶ」
後ろでアリシアのつぶやきが聞こえる。
ここまで言えば、今までの貴族の輪の中にいようとせず、平民の輪の中に入って、剣を学ぼうとするだろう。そうしてロザリオと再会し、彼と友に切磋琢磨してもらえば、覚醒イベントにもつながる。
ティポとザップのせいで逸れたルートを何とか修正できて、内心ガッツポーズをしながら、バルコニーを後にした。
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