悪役貴族は殺されたい。~やりたい放題してるのに、なぜかみんなが慕ってくる~
第1話 ド外道貴族——シリウス・オセロット
目が覚めると、目の前にいたのは金髪碧眼のイケメンだった。
「誰だ……?」
超絶ブラック企業で寝る間も惜しんで働いていた俺。
一ヶ月ぶりの帰宅に胸を躍らせて夜の街を歩いていると急にフラフラと立ちくらみ、「プワーッ」とクラクション音が響いたと思ったら、意識がなくなった。
そして、次に目が覚めると見知らぬ部屋にいた。
天涯付きのベッドに金で装飾された高級そうな家具。中世ヨーロッパの貴族の部屋にそっくりだ。
「ここは……?」
声を発してみたが、自分のものとは思えない超低音のイケメンボイスが部屋に響く。
「ん?」
目の前のイケメン……それはこの部屋にいる俺以外の、もう一人ではない。
俺自身だ。
「おいおいおい……誰なんだよこいつは? この金髪の外人は誰なんだよ……もしかして……、」
ペタペタと顔を触る。
すると〝鏡〟に映ったイケメンも俺と全く同じ動きで顔を触る。
「俺か?」
ああ、これが異世界転生って奴か。
俺、死んじまったんだ。轢かれたのか過労死かはわからないけど、もう死んじまった今となってはどうでもいい。
なら次の来世を楽しむだけだ。
「と。思っては見たもの。こいつはどういう設定のキャラ、な、んだ?」
この顔と声、見覚えがある。
切れ長の目に髪型は女のような腰まであるロング。それに細く引き締まった体に真っ白な学ランのような制服。声は人気男性声優増○俊樹さんのような荒々しさと優しさを兼ね備えたような声というかそのものだ。
「こいつ、昔ちょっとだけハマったギャルゲー『紺碧のロザリオ』のシリウス・オセロットじゃねえか!」
『紺碧のロザリオ』は剣と魔法のファンタジー世界を舞台にしたゲームで騎士を目指す平民、主人公ロザリオ・ゴードンが騎士学園で貴族に虐められながらも努力し、逆境を跳ねのけて最後は国の英雄に成るという王道ストーリーだ。
舞台となる聖ブライトナイツ学園は騎士を育てるための学園であり一応、貴族も平民も平等に扱うと言う名目は立てている。が、格差は存在する。
その中で平民のロザリオに対して過酷ないじめを続ける貴族筆頭が何を隠そう、このシリウス・オセロットだ。
ド腐れ外道。
メインシナリオライターから発せられた、物語上でのシリウスのポジション。
聖ブライトナイツ学園の生徒会長でありながら、権力を乱用し暴虐の限りを尽くし、ネットのギャルゲーユーザのファン投票で『今年のクソキャラランキング』で第一位に輝いてしまったとんでもないクズキャラである。
「嘘だろ…こんな鬼畜外道に転生してしまうなんて、死ぬの確定じゃねぇか…こいつクズ過ぎて、温厚で優しい主人公が唯一殺すことになるキャラなんだぞ」
生き残るなんてもっての他。
『紺碧のロザリオ』の五人のヒロインのルートに入る前の共通ルートでシリウスは死ぬ。
必ず死ぬ。
それも、シリウスとの決闘イベントが〝主人公が真の力に目覚める覚醒イベント〟になり、それぞれのヒロインのルートのラスボスを倒すための技を習得する重要なイベントとなる。
主人公ロザリオは元々虫も殺せないほど、心の優しい人間で、他の敵貴族は殺していないのだが、シリウスは彼にに体を真っ二つにされて殺される。
だが、そのことに対して特に良心の呵責に苛まれることもなく物語は進んでいく。シリウスの命を奪ってしまった後悔とか、ロザリオは全く抱くことはなく。
後日、メインライターからは「ロザリオのキャラならシリウスを殺してしまって後悔の念を持つべきだが、カットしました。だってヒロインとのストーリーを進める上で邪魔だし、シリウスだからいいかなって。誰も悲しむやつとか復讐するやつとかいないだろうし、だってシリウスだし」とまで言われ、その収録にいたスタッフから爆笑が起きていた。
「シリウスだしいっか…じゃねぇ! なんでこんな絶対に死ぬキャラに転生しちまったんだ…転生するんならチート持っててヒロインに囲まれた超絶イージーモードで、ハーレムが約束されているような感じじゃねぇの…? どうしてこんな…絶対に死ぬキャラで、死なななきゃいけないキャラで…えぇ~…俺前世で何かしたかぁ…? 真面目に働いてたのに」
地獄の先もまた、地獄だった。
そんな昔のアニメのフレーズが思い出される。
「うっわぁ~、まだ死にたくねぇ。でも、シリウスって昔からクズで、この時点ですでに人殺して隠ぺいとかもしてるからなぁ…ヒロインの一人の親父殺してて、復讐されるって展開、あるからなぁ……」 俺は悩んだ。 どうやってシリウスで生き延びることができるのか……どうやって……そしてそれが正しいのか……?
悩みに悩んだ末に出た結論が。
「よし、諦めよう!」
来世に辿り着いたが、その人生も諦めることにした。
「俺は生きたいが、シリウス・オセロットは女は犯すし、人は殺すし、罪を人に擦り付ける最低最悪のド外道だ。これから俺の行動次第でそれが防がれるのならともかく…もうやっちゃってんだもんね」
若くして、救いようのない奴なのだ。
だから、
「また、来世に期待してとっとと殺してもらおう」
俺が死ぬことによって主人公が覚醒する。
覚醒しなければこの先のシナリオで出現するラスボスたちを倒すことができない。
ならばもう、運命を受け入れよう。
「ポジティブに考えよう。一度異世界転生できたんだから、今回死んでもまたできるさ。それを信じてとっととイベントを進めて殺してもらおう。こんなやつ生きていたって百害あって一利なしなんだし……」
頭を掻き、「ハハッ」とやけくそ気味に笑う。
そうだ。
どうせ死ぬんだから、やりたいほうだいやってヘイトを稼いで、イベントを巻きで進めてしまおう。
こんなクズが、シリウス・オセロットが、この世界にいる時間を短くしてもらい、俺はとっとと次の人生のガチャを引くことにしよう……。
一度転生できたんだから、また転生……できる……よね?
「誰だ……?」
超絶ブラック企業で寝る間も惜しんで働いていた俺。
一ヶ月ぶりの帰宅に胸を躍らせて夜の街を歩いていると急にフラフラと立ちくらみ、「プワーッ」とクラクション音が響いたと思ったら、意識がなくなった。
そして、次に目が覚めると見知らぬ部屋にいた。
天涯付きのベッドに金で装飾された高級そうな家具。中世ヨーロッパの貴族の部屋にそっくりだ。
「ここは……?」
声を発してみたが、自分のものとは思えない超低音のイケメンボイスが部屋に響く。
「ん?」
目の前のイケメン……それはこの部屋にいる俺以外の、もう一人ではない。
俺自身だ。
「おいおいおい……誰なんだよこいつは? この金髪の外人は誰なんだよ……もしかして……、」
ペタペタと顔を触る。
すると〝鏡〟に映ったイケメンも俺と全く同じ動きで顔を触る。
「俺か?」
ああ、これが異世界転生って奴か。
俺、死んじまったんだ。轢かれたのか過労死かはわからないけど、もう死んじまった今となってはどうでもいい。
なら次の来世を楽しむだけだ。
「と。思っては見たもの。こいつはどういう設定のキャラ、な、んだ?」
この顔と声、見覚えがある。
切れ長の目に髪型は女のような腰まであるロング。それに細く引き締まった体に真っ白な学ランのような制服。声は人気男性声優増○俊樹さんのような荒々しさと優しさを兼ね備えたような声というかそのものだ。
「こいつ、昔ちょっとだけハマったギャルゲー『紺碧のロザリオ』のシリウス・オセロットじゃねえか!」
『紺碧のロザリオ』は剣と魔法のファンタジー世界を舞台にしたゲームで騎士を目指す平民、主人公ロザリオ・ゴードンが騎士学園で貴族に虐められながらも努力し、逆境を跳ねのけて最後は国の英雄に成るという王道ストーリーだ。
舞台となる聖ブライトナイツ学園は騎士を育てるための学園であり一応、貴族も平民も平等に扱うと言う名目は立てている。が、格差は存在する。
その中で平民のロザリオに対して過酷ないじめを続ける貴族筆頭が何を隠そう、このシリウス・オセロットだ。
ド腐れ外道。
メインシナリオライターから発せられた、物語上でのシリウスのポジション。
聖ブライトナイツ学園の生徒会長でありながら、権力を乱用し暴虐の限りを尽くし、ネットのギャルゲーユーザのファン投票で『今年のクソキャラランキング』で第一位に輝いてしまったとんでもないクズキャラである。
「嘘だろ…こんな鬼畜外道に転生してしまうなんて、死ぬの確定じゃねぇか…こいつクズ過ぎて、温厚で優しい主人公が唯一殺すことになるキャラなんだぞ」
生き残るなんてもっての他。
『紺碧のロザリオ』の五人のヒロインのルートに入る前の共通ルートでシリウスは死ぬ。
必ず死ぬ。
それも、シリウスとの決闘イベントが〝主人公が真の力に目覚める覚醒イベント〟になり、それぞれのヒロインのルートのラスボスを倒すための技を習得する重要なイベントとなる。
主人公ロザリオは元々虫も殺せないほど、心の優しい人間で、他の敵貴族は殺していないのだが、シリウスは彼にに体を真っ二つにされて殺される。
だが、そのことに対して特に良心の呵責に苛まれることもなく物語は進んでいく。シリウスの命を奪ってしまった後悔とか、ロザリオは全く抱くことはなく。
後日、メインライターからは「ロザリオのキャラならシリウスを殺してしまって後悔の念を持つべきだが、カットしました。だってヒロインとのストーリーを進める上で邪魔だし、シリウスだからいいかなって。誰も悲しむやつとか復讐するやつとかいないだろうし、だってシリウスだし」とまで言われ、その収録にいたスタッフから爆笑が起きていた。
「シリウスだしいっか…じゃねぇ! なんでこんな絶対に死ぬキャラに転生しちまったんだ…転生するんならチート持っててヒロインに囲まれた超絶イージーモードで、ハーレムが約束されているような感じじゃねぇの…? どうしてこんな…絶対に死ぬキャラで、死なななきゃいけないキャラで…えぇ~…俺前世で何かしたかぁ…? 真面目に働いてたのに」
地獄の先もまた、地獄だった。
そんな昔のアニメのフレーズが思い出される。
「うっわぁ~、まだ死にたくねぇ。でも、シリウスって昔からクズで、この時点ですでに人殺して隠ぺいとかもしてるからなぁ…ヒロインの一人の親父殺してて、復讐されるって展開、あるからなぁ……」 俺は悩んだ。 どうやってシリウスで生き延びることができるのか……どうやって……そしてそれが正しいのか……?
悩みに悩んだ末に出た結論が。
「よし、諦めよう!」
来世に辿り着いたが、その人生も諦めることにした。
「俺は生きたいが、シリウス・オセロットは女は犯すし、人は殺すし、罪を人に擦り付ける最低最悪のド外道だ。これから俺の行動次第でそれが防がれるのならともかく…もうやっちゃってんだもんね」
若くして、救いようのない奴なのだ。
だから、
「また、来世に期待してとっとと殺してもらおう」
俺が死ぬことによって主人公が覚醒する。
覚醒しなければこの先のシナリオで出現するラスボスたちを倒すことができない。
ならばもう、運命を受け入れよう。
「ポジティブに考えよう。一度異世界転生できたんだから、今回死んでもまたできるさ。それを信じてとっととイベントを進めて殺してもらおう。こんなやつ生きていたって百害あって一利なしなんだし……」
頭を掻き、「ハハッ」とやけくそ気味に笑う。
そうだ。
どうせ死ぬんだから、やりたいほうだいやってヘイトを稼いで、イベントを巻きで進めてしまおう。
こんなクズが、シリウス・オセロットが、この世界にいる時間を短くしてもらい、俺はとっとと次の人生のガチャを引くことにしよう……。
一度転生できたんだから、また転生……できる……よね?
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